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クルマのステップアップ

何度かジムカーナ練習会に出てみて,どうしても愛車に物足りないところが出てきたら,ボチボチ愛車のステップアップ(改造,チューン)を考えて行きましょう。


しかしステップアップといっても,オークションか何かで安い中古パーツを仕入れてきて闇雲にそれを装着すれば速くなるというものではなく,よーく考えてクルマをいじらないと,バランスを崩して乗りにくくなってしまったり,かえって遅くなってしまったり,下手するとクルマが壊れたり,事故ってしまうことだってあり得ます。

また,もし今後ライセンスをとって公式競技にデビューするつもりがあったら,車両規定上,手を付けられない個所というのもあるので(例:PN車両,N車両,S1500車両のマフラー,エキマニなど),よく気を着けておかないと,せっかく装着したパーツをノーマルに戻さないといけない,なんてこともあり得ます。


奥さん,ダンナさん,子供さん,お孫さん(笑)がいるような大人の人がモータースポーツを楽しむ際には「予算」も非常に重要なポイントになります。

独身の若い人なら稼ぎを全部クルマにつぎ込んでも誰も文句は言いませんが,嫁さん子供さんのいるようなおとーさんがそんなことしたら,まず間違いなく帰る家がなくなります(笑)。あるいは,家に誰もいなくなります(爆)。実際,ミドル戦ぐらいまでのレベルだと,お小遣い±α程度でコツコツ活動してる人がほとんどです。


したがって,よりジムカーナを楽しむためにクルマをステップアップする際には,

@許される予算の範囲内で,

A今のクルマでどのレベルまで目指すのかを意識しながら,

Bステップアップ全体のバランスや順序に気をつけて

行っていくことが重要と考えられます。


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まず第1に「予算の範囲内」でとは言いましたが,お金の話をする前にとりあえず,ジムカーナを楽しむ上で必要/あった方がいいパーツを必要度のランク別にあげてみます。念のため2012年現在のPN車両,N車両規定に沿ったもののみあげてありますので,公式戦に出る際にも差支えがないものです。そのためマフラー・エキマニなど排気系のパーツやキノコ型のエアクリなどは除いてあります。


ランクA:ぜひともそろえておきたいパーツ

・前後ブレーキパッド/シュー
・サスペンション(車高調キット)
・バケットシート
・4点式ベルト
・スポーツタイヤ+軽量ホイール

きちんと停まるため,クルマの姿勢を制御するため,サイドターンを確実に決めるため,ジムカーナでは必ず必要になるといっていいのがブレーキパッド/シューです。前後のバランスが非常に重要ですので,前だけ・後だけということはせず,前後セットでステップアップしましょう。

またクルマの運動性能を決める最も重要なパーツがサスペンションです。それだけに決して妥協すべきではない部分なのですが,良いモノはそれなりに高価なのがネックです。ただ,良いモノはオーバーホールを重ねて何年も使うことができますし,スプリングの硬さを替えたり車高を変えたりセッティングも自由自在なので,結果的に損はしません(車両乗り換えの際にも,壊れてなければオークションに高値で出せます...)。

バケットシートと4点式ベルトは,安全のためでもありますし,クルマの挙動を正確につかむためにも必要になるものです。純正でレカロなどのバケットシートが付いている場合はとりあえずそのままでOKです。よく勘違いされますが,バケットシートは身体をがっちり支えてくれるため腰に非常に優しく,腰痛持ちにはむしろ最適です。フルバケがどうしても不便だという人はセミバケでもいいですよ。それでも純正のふにゃふにゃシートよりはよっぽどマシです。

素のフルバケのままでもたいてい(競技会の)車検は通りますが,バケットの後面に「シートバック」を装着する必要があります。一般道を走る際の後部座席の人の安全確保のため,という名目ですが...ようするに車検対策です。シートといっしょに売ってますが,結構なお値段なので,おとーさんはホームセンターで切り売りのカーペットを買ってきて両面テープで貼り付けてます。これでもOKです。

4点式ベルトは簡単にDIYで取付できるものですが,アイボルトがシートレール固定のために共用されているケースでは(競技会の)車検を通りません。フロアーに穴を開けてシートレールと別にアイボルトを固定しないといけないので,素直にショップに依頼しましょう。また最近は後が1本にまとまっているY字型の3点式ベルトは競技使用NGとなってます。安全のためにもきちんとした4点式を買いましょう。

タイヤとホイールは真っ先に替えるべきという意見もありますが,私はまず純正のタイヤを完全に使い切って,ブレーキやサスがステップアップされてから替えるべきだと思います。サスが純正でタイヤだけハイグリップという組み合わせは操作性の面でも安全性の面でもあまりお勧めできないケースがあります(→タイヤ&ホイールだけグレードアップしたインプレ)。



クルマの動きを正確に把握するためにもバケットシートは必需品。
無印の安いバケットでも十分実用になる。


ランクB:できればそろえておきたいパーツ

・LSD(リミテッドスリップデフ,デフ,ノンスリ)
・強化クラッチ+クラッチカバー
・エンジンマウント
・ステアリング
・メンテに必要な工具類

LSDというパーツは部品代と工賃で10〜20万円ぐらいになる高価なパーツですし,ミッションケースやデフケースの中に収められていて外からは全く見えない地味なパーツです。しかしこのパーツによって走りは劇的に変わります。ぐいぐいクルマが前に出るようになります。なくてもジムカーナを走ることはできますが,タイムや順位を気にするようになったら絶対に必須のパーツです。しかし車種やミッション形式によっては発売されていないことが多いためランクBとしました。今のLSDはよくできているため,昔のLSDのようにバキバキ音が出たりアンダーが強くなるなんてことはありません。

スポーツ走行はクラッチをかなり磨耗させます。また速く走ろうとするとどうしてもクラッチを発熱させ大きな負担をかけることになります。特にハイパワーのクルマではなるべく強化クラッチを入れておくに越したことはありません。クラッチのキレや半クラの操作性も良くなります。

ノーマル車両のエンジンは,スポーツ走行中にグラグラゆさゆさ揺れることでクルマの機敏な動きをスポイルしています。エンジンやミッションとボディをつないでいるゴムのパーツ(マウント)を替えることでこのグラグラゆさゆさが抑えられ,クルマの動きがしゃきっとします。反面,エンジン音や振動はかなり大きくなります。また公式戦のPN車両ではこのエンジンマウントの交換は禁じられていますのでご注意下さい。

ノーマルのステアリングでもとりあえずジムカーナは走れますが,表面が滑りやすかったりパッと握りにくかったりしてスポーツ走行には不向きなデザインのモノもあります。大きな直径のハンドルは軽い力で操作できますが,操作量は大きくなるため,ジムカーナ走行ではバタバタしてしまうこともあります。ただし直径35cmφ未満のものはNGです。車検にもひっかかりますぞよ。

またこれぐらいのレベルになると,自分でクルマをいじるためにどうしてもいろいろな工具が必要になってきます。なくてもジムカーナは走れますが,少なくともセッティングやトラブル対応などで必要な工具は自分で揃えておくに越したことはありません。クルマの下にもぐるためにもジャッキやウマなどは必需品ですよ。



本格的なスポーツ走行では純正のクラッチは役不足になってくる。
こういった,地味だがタイムアップに必要なパーツがランクBのパーツ。


ランクC:あれば役に立つパーツ

・エアクリーナー(純正交換品)
・高性能プラグ
・ストラットタワーバー
・軽量フライホイール
・追加メーター類
・ボディ補強/軽量化
・エアロ類
・その他の吸排気系パーツ

ジムカーナでもクルマにパワーがあればあるだけ速いことは確かですが,タイムを出すためには,コーナリングスピードの速さやターンでいかにタイムロスしないかの方がよっぽど大事な問題です。また少なくとも公式競技(PNクラス,Nクラス)ではターボ車のブーストアップ,タービン交換など明らかにパワーが上がるチューンは公平性・経済性などの観点からも現在は厳しく制限されています。そのために吸排気系はほとんどいじることはできず,せいぜいプラグを替えたりエアクリを純正交換タイプの高性能品に換えるぐらいしかできません。

ただし,当分公式戦に出るつもりがないのであれば,車検対応のマフラーやエキマニ,キノコ型のエアクリなどは交換OKです。練習会や非公式の競技会であれば吸排気系チューンOKです。ジムカーナに出るためにわざわざ純正に戻す必要はありません。

ただし地域や場所によって例外があり「車検対応」マフラーでもダメな場合があります(主催者に確認要)。当然ながら「爆音マフラー」はどこに行ってもダメですよ。最近では公式戦でも初心者クラスは吸排気系チューンOKの場合が増えてます。またN車両より改造度の高いクラスでも,吸排気系チューンはOKです。自分が将来的にどのイベントに出るのかを考えながらであれば,吸排気系チューンを気にする必要はありません。

ストラットタワーバーなどのボディ補強パーツは,クルマの操作フィーリングには影響しますが,案外大きなタイムアップには結びつかないものです(参照:ストラットタワーバー考)。また効果の大きいロアアームバーなどは公式戦では装着NGの場合があります。基本的に,OKなのはストラットタワーバーだけ,と考えておいた方がいいでしょう。ただし公式戦のPN車両ではストラットタワーバーすらもNGなので要注意です(2012年現在)。

フライホイールというのはエンジンの回転出力をクラッチに伝えるための金属製の円盤で,エンジンが動いている限り常時回転しているものです。低回転でもエンジンが止まらないための「はずみ車」としてある程度の重量を持たせてありますが,純正の重たいフライホイールだとどうしてもエンジンのレスポンスをスポイルします。そのためこれを軽量品に替えることでエンジンのレスポンスが驚くほど良くなります。反面,確実にエンストしやすくなりますし,アクセルから足を離すとすぐに回転が落ちますから,ヒール&トゥが難しくなります(すぐ慣れますけど)。操作フィーリングは非常に良くなりますが,タイムにはそれほど大きな影響は出ません。また公式戦のPN車両やS1500車両ではこのフライホイールの交換はNGです。

追加メーター類も,なくても大きな支障はありませんが,ノーマルのメーターやインジケーターはほとんどアテになりません。夏場に連続走行する時など水温や油温を気にしないといけない状況では,クルマのコンディションを正確にモニターできる方がベターです。特に水温計は簡単に装着できるものもありますから付けておいても損はありません。ただ,DIYで作業するとセンサー回りのトラブルがよく出るので注意が必要です。

スポット溶接増しやパネルボンドなどを使ってクルマのボディを補強することは,クルマの動きをしゃきっとさせ,サスにきちんと仕事をさせるという意味で非常に大きなメリットがあります。ただ,工賃が非常に高く,素人にとっては対費用効果という面では微妙です。またメルシートを剥がしたりアンダーコートを剥がしたりしてボディを本格的に軽量化することも,クルマの運動性能を高める面では大きなメリットがありますが,工賃が高い以外にも騒音や保温性の低下など無視できないデメリットがあり,初心者には不要と思われます。

リアスポなどのエアロ類もジムカーナの速度域ではあまり速さには関係しません。ただ自分で愛車をカッコ良いと思えるスタイリングにしていくことは重要で,自分のクルマに惚れ込めるようでないと速くなることも難しいものです。リアスポもサイドステップもフロントアンダースポイラーなんかも装着可能ですが,車幅からはみ出さないこと,クルマの全長や全高,最低地上高が変わらないこと,鋭利な部分がないこと,というのが条件です。またバンパーそのものを交換してしまうタイプのエアロは残念ながらNGです。



BLITZのR-VIT i-Color FLASHは水温やバッテリー電圧など標準的な
項目だけでなく,オプションで油温・油圧まで表示できて便利。


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それでは次に実際に目指すレベルと予算(月々クルマにかけられる額)別に,お勧めのステップアップ・プランをあげてみましょう。ただしこれはあくまで個人的なお勧めですので絶対的なモノではありませんし,実際にはショップや経験者と相談しながらステップアップをして行くことが重要です。
→「予算別チューン計画」へ




今回のまとめ

・クルマをステップアップする際には,「予算の範囲内で」「今のクルマでどのレベルまで目指すのかを意識しながら」「全体のバランスや順序に気をつけて」進めていくことが重要。
・まず最初にそろえたいランクAのパーツは,「前後ブレーキパッド/シュー」「サスペンション(車高調キット)」「バケットシート」「4点式ベルト」「スポーツタイヤ+軽量ホイール」。車高調キットは高いけど,妥協せずに良いものを選ぶこと。ちゃんと元はとれる。
・できれば次にそろえたいランクBのパーツは,「LSD」「強化クラッチ+カバー」「エンジンマウント」「ステアリング」「メンテに必要な工具類」。タイムや順位を気にするようになったら,LSDが必須アイテムになる。
・その他,なくてもそれほど困らないがあれば便利というランクCのパーツは,「エアクリーナー(純正交換タイプ)「高性能プラグ」「ストラットタワーバー」「軽量フライホイール」「追加メーター類」など。
・吸排気系パーツは,公式戦の車両規定ではNGのパーツが多いから要注意。エアロも,バンパーをそっくり交換するタイプはダメ。ボディ補強パーツも,タワーバーですら公式競技ではNGのことがあるので要注意。



Updated on Jan 8, 2012.

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