予算別チューン計画
ジムカーナをより深く楽しむためにクルマをステップアップする際には,
@許される予算の範囲内で,
A今のクルマでどのレベルまで目指すのかを意識しながら,
Bステップアップ全体のバランスや順序に気をつけて
進めていくことが重要でしたね。
また,ジムカーナを楽しむ上で必要/あった方がいいパーツを必要度のランク別にあげると下記のようになりました。
ランクA:ぜひともそろえておきたいパーツ
・前後ブレーキパッド/シュー
・サスペンション(車高調キット)
・バケットシート
・4点式ベルト
・スポーツタイヤ+軽量ホイール
ランクB:できればそろえておきたいパーツ
・LSD(リミテッドスリップデフ,デフ,ノンスリ)
・強化クラッチ+クラッチカバー
・エンジンマウント
・ステアリング
・メンテに必要な工具類
ランクC:あれば役に立つパーツ
・エアクリーナー(純正交換タイプ)
・高性能プラグ
・ストラットタワーバー
・軽量フライホイール
・追加メーター類
・ボディ補強/軽量化
・エアロ類
・その他の吸排気系パーツ
これらを踏まえて,実際に目指すレベルと予算(月々クルマにかけられる額)別に,お勧めのステップアップ・プランをあげてみましょう。ただしこれはあくまで個人的なお勧めですので絶対的なモノではありませんし,実際にはショップや経験者と相談しながらステップアップをして行くことが重要です。
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月に1万円ぐらいしかかけられない
かなり厳しい額ですがこつこつやっていけば2-3年でかなりの戦闘力を身に付けることも可能です。ラジアルタイヤクラスの競技会なら十分入賞可能ですし,腕によってはバリバリに改造したクルマにテールを拝ませることもできるでしょう。
まずこの予算だと,何はともあれメンテにかける額をかなりセーブすることが必要です。エンジンオイルや駆動系のオイル類について,最高級品は諦めましょう。オイル類のグレードを落とす代わりに,交換のサイクルはきっちり守りましょう。きちんと一定のサイクル内で交換していれば普通のオイルで十分です。工賃を節約するためにはDIYメンテが基本です。普段きちんとメンテしてあれば,車検もユーザー車検で十分です。
こうやって維持費を節約した上で月々1万円を半年ほど貯め,まずはブレーキパッド/シューを交換しましょう。これでサイドターンが決まるようになり,ジムカーナがぐっと楽しくなります。
ここから先は,一気にローンを組んでエアロやタイヤ+ホイールにお金を使いたくなるところですが,グッとガマン。まずは足回りとバケットシートが先です。
もちろん本当は新品がいいのですが,この予算だといいモノは買えません。とりあえず12-15万円貯めたところで中古の車高調キットをオークションで探しましょう。なるべく新しいもの,走行距離が浅いものがベターですが,一番大事なのは「壊れてないか」です。できれば現物を見せてもらってオイルのにじみやロッドの明らかな曲がりがないかチェックできるものにしましょう。修理に高額を要するようでは中古で買う意味がありません。
バケットシート+シートレールはとりあえず安いものでもOK。中古のバケットはがたがたになってることがあるので新品の方がベターですが,この予算だとぜいたくは言えません。ベルトは「必ず」新品を買いましょう。中古はどんな扱いを受けてるか分かったもんじゃありませんから。
これらが揃った頃にはもう純正のタイヤがなくなってきているでしょう。ここで次にタイヤ+ホイールを「中古で」手に入れましょう。ホイールを新品で買うのはかなり高くつきます。この予算ではとても無理です。ホイール+タイヤの掘り出し物が見つかればそれがベストです。
本当はタイヤは前後とも替えた方がいいに決まってますが,FF車の場合は,リアは純正のままで,フロントだけスポーツラジアルに替えるということもアリです。これでも結構走れます。どうしても予算がない場合の禁断のワザです(笑)。
これでランクAのステップアップは完了です。練習会や初心者クラスの競技会を楽しみながらもお金を貯め,次の目標はLSDの導入ですね。これが入る頃にはきっと表彰台に上がれるぐらいの腕になってると思います。
とにかくこの予算だと最大のネックは車高調キットの入手です。ただ,これを妥協してしまったり安易にローンを組んでしまったりすると後で後悔することになるかもしれません。ジムカーナを楽しみながらもしっかり貯金に勤しみ,良いサスを手に入れるようにがんばって下さい。
RIGID製のリアブレーキシュー。これがあるのとないのとでは
サイドターンの成功率が全然違ってくる。
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月に2-3万円ぐらいはかけられる
普通,世のおとーさんがお小遣いで何か趣味をやるとすると,月々これぐらいの予算が現実的でしょうかね。
でもこれぐらいあればかなり選択肢も広がりますし,1万円の場合よりは早くステップアップしていくことができます。ただ,ステップアップの順番は同じです。まずブレーキ,次に車高調キットとバケット/4点式ベルト,そしてタイヤ+ホイール,です。
まず2-3か月予算を貯めて前後ブレーキパッド/シューをジムカーナ用のものに替えましょう。これだけでかなり戦闘力は上がります。
次にタイヤ+ホイールに行きたいところですがグッとガマン。とにかくサス回りとバケットシートが先です。純正のサスとタイヤで走りこみながら1年ほど予算を貯め,スーパーオーリンズのようなモータースポーツ用の車高調キットをドンと買いましょう。もちろん「新品」でね。
そしてできればこの後にバケットと4点式ベルトを入れましょう。これらもできれば中古は止めて新品にしておきましょう。最悪,バケットは中古でもOKですが,ベルトだけは必ず新品でね。
きちんとしたサスが入ったところで初めてタイヤに手を付けます。ただし「中古で」手に入れましょう。どうせタイヤは消耗品ですしホイールなんて中古でも新品でも機能には大差ありません。反面,サスは中古と新品で大差がありますから,お金を使うならサスに使いましょう。
月々2-3万円の予算とすると,ランクAのステップアップが終了するのに1年半から2年ぐらいかかるでしょうか。もちろんタイヤのサイズなどにもよりますが。この後は当然LSDの導入が目標になります。LSDが入れば,ジムカーナ車両としての戦闘力は格段に上がります。公式競技の初心者クラスでも十分表彰台を狙えるレベルに来ていると思います。
LSDの次はクラッチやエンジンマウントなどが目標になるでしょうか。ジムカーナを楽しみながらもしっかりお金を貯めて行きましょう。またこまめにメンテすることで維持費を上手に節約して行きましょうね。
みんなの憧れの逸品,AZUR製スーパーオーリンズ。
いいモノはオーバーホールしながら永く使うことができる。
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月に4-5万円ぐらいはかけられる
独身でかつ収入のいい人ならこれぐらいお金をかけられるかな? 因みに男性サラリーマンの平均お小遣い額は月48800円(2007年大手金融会社調査)とのこと。全部クルマにつぎ込むかどうかはその人次第ですが(笑),このぐらい予算があれば1年ほどで十分戦闘力を持ったクルマを作ることが可能ですね。
1月〜2月→ブレーキパッド/シュー
2月→4点式ベルト
3月→バケット
4〜8月→車高調(新品)
9月〜12月→タイヤ&ホイール(新品)
ほらできた(笑)。
いや,まあ,メンテや維持費にもお金がかかりますし,タイヤ&ホイールはサイズによって値段が全然違いますから,こんなにスムースにはいかないかもしれませんがね。17-18インチの新品ホイールなんてビックリするほど高いですから。
ただ,何度も書きますが,新品のタイヤ&ホイールにお金をいっぱいかけるよりも,それらは中古にしてでも,スーパーオーリンズのようないい車高調を新品で入れることを強く推奨します。タイヤ&ホイールはあくまで消耗品ですが,いいサスはそのクルマを手放すまでしっかり使えます。
これでもうAランクのパーツは揃いましたから,2年目からLSDなどBランクの本格的なモータースポーツパーツに手を出すことができますね。でも焦ってクルマを仕上げることばかり必死になり,気がついたら全然走ってないや,なんてことにならないように(笑)。本末転倒ですよ。せっかく他の人よりもクルマにお金を使えるのですから,練習会や走行会でしっかり走り込みましょう。
メンテも大事。愛車を酷使する以上,最高級とまでは行かなくてもある程度のグレードのオイル類を奢ってあげましょう。でもグレードよりも大事なのがメンテのサイクル。横着しないで一定の期間でちゃんとメンテしてあげましょう。
もし2年目にLSDを入れることができたならば,あなたの愛車はもうジムカーナ公式戦でも十分通用するクルマになってます。腕に自信があればぜひライセンスをとって公式戦にデビューすることをお勧めします。公式戦で戦うことで腕もさらに上がりますし,今後どのようにクルマを仕上げていくかの方向性もつかめます。
ホイールなんて消耗品,オークションで落とした中古で十分。
前後不揃いでも気にしな〜い。むしろ「走り屋」っぽいでしょ(笑)。
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月に5万円以上かけられる
そんな人はもう好きにして下さい!(怒)
いや,怒ったってしょうがないか(笑)。うらやましい話ですが,モータースポーツ初心者でありながら月に5万円以上クルマにお金をかけられるとすると,全てのパーツを新品でそろえることが可能です。それでも1年ほどで十分な戦闘力を持ったクルマを作ることができるでしょう。
ただ,いくら資金が潤沢にあるといっても必ず限りはあるはずです。
無分別にどんどんパーツを入れていくのではなく,ランクA→B→Cの順番を守りながら賢くお金を使って行きましょう。中古品で済むもの(ホイールなど)は中古で済ましましょう。またブレーキ&サス,LSD&クラッチ&フライホイールなど同時に交換すると工賃がお得になる組合わせがあります。物欲に流されず,我慢すべき時はちゃんと我慢して,上手に工賃を浮かせましょう。
また,要らないものにお金を使ってしまわないように,自分の今後のモータースポーツ計画をしっかり立て,ショップとも関係を密にして,ちゃんと情報を仕入れておきましょう。お金がある人ほど無駄使いも多くなるものです。
これぐらい予算があればメンテナンスにもこだわることができます。オイル類にはある程度お金をかけて愛車を労わりましょう。ただ,高いオイルを入れれば長持ちするというものでもありません。オイルと使用環境によって推奨の交換時期がありますから,交換のサイクルはきちんと守りましょう。
また,せっかくの愛車に活躍の機会を与えてあげられるように,宝の持ち腐れにならないように,練習会や走行会にはマメに顔を出してしっかり腕を磨きましょう。
一般に高収入の人ほど仕事が忙しくなって自由に走れる時間は少なくなります。まあ「貧乏暇なし」とも言いますし,例外もあるでしょうけどね(笑)。いずれにせよ練習時間を有効に使って,どうしても練習不足気味になるところをうまく補って下さい。まあ,ホントにお金のある人は時間もお金で買えるかな?(笑)
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「月に1万円ぐらいしかかけられない」ケースのように予算制限が厳しい場合はDIYメンテを推奨しましたが,誰にでもDIYできるというものではありませんし,クルマを仕上げる上でどうしたってDIYではムリな項目があります。このような場合は作業をショップに依頼することになりますので工賃が発生します。
この「工賃」というのはクルマによって異なり,元々の車両価格に比例する傾向にあります。またパーツの価格設定にも同じような傾向があります。つまり元々の値段の高いクルマは大体において何をするにも高くつきます。またあなたの愛車が競技用パーツの設定がないマイナー車種の場合も,何をするにも特注パーツになってしまってすごくお金がかかってしまうことがあります(泣)。
もし今後本格的にモータースポーツに取り組む決心がついているなら,またクルマを買い換えるだけのまとまった資金があるなら,今のクルマを中途半端にいじるより,思い切ってクルマを買い換えてしまうのも案外良い選択です。
というのも,上記のようにステップアップするためにやたらとお金がかかってしまう不利な車種もありますし,「どんなクルマでもOK?」でも書いた通り,ジムカーナの公式戦で本格的に勝ちを狙うとするとやはり勝てるクルマは限られてくるからです。あなたの愛車が「勝てないクルマ」だと,いくらお金をつぎ込んでもやはり公式戦では勝てません。しかもそれに気づいた時にはもう資金の回収は困難になっています。
もちろん初級イベントでは腕次第でクルマの差を逆転することが可能です。しかし上級になるにつれて腕の差は少なくなりクルマの差が大きくなってきます。
ですから,今後長くモータースポーツを趣味としてやって行きたい,夢は全日本! とかそういう場合は「最初から,勝てるクルマに乗る」こともアリ,です。
といって初心者が十分な情報もなしに新車で「勝てるクルマ」を選ぶことは困難です。また新車から競技車を仕上げていくのは,かなりの知識とお金と時間が必要になります。もし新車を現金でポンと買えるのであれば,勉強しながらコツコツ競技車に仕上げて行くことも可能ですが,ローンを払いながらチューンして行くのでは途中で資金的に息切れしてしまう可能性大です。
このように,思い切ってクルマを買い換えてしまおうかな,という場合お勧めのコースが2つあります。
そのうちの一つは,競技車を中古で買うコースです。
競技車の中古なんてあちこちガタガタですぐ壊れるんじゃないか,と思うかもしれません。でもよく考えて下さい。競技屋さんというのは勝つためにクルマに乗ります。当然メンテもしっかりしますし,よく壊れるところはちょくちょくO/Hしたり新品に交換します。ですから何万kmも走ったクルマでも意外とコンディションは悪くないのです。そこいらのオバチャンやオッチャンがオイルすら替えずに何万kmもチンタラ転がしてたクルマとは全く別物です。
また競技用の車高調などがそのまま装着されている場合が多く,パーツ代も大幅に節約できます(サスやミッション・LSDは購入後O/Hした方がベターですが)。
既に競技車として使われていたわけですから即・実戦に使える「勝てるクルマ」であるわけですし,「○○シリーズのチャンピオン車」とか「全日本の○○選手が乗ってた車両」とかそういう実績のあるクルマが非常にお得なお値段で売りに出されてたりします。
かつてのおとーさんの愛車"不惑インテ号"も中古の競技車でした。
もちろんこういうクルマは一般の中古車屋さんにはまず出ません。モータースポーツショップや個人売買でこっそり売られているケースがほとんどです。
普通の中古車屋さんに出ている「競技車っぽい」クルマはいわゆる峠車やドリフト車,ストリートチューンがほとんどですので,程度はピンキリです。コンディションの良いクルマもありますが,チューンに必死でロクにメンテされてなかったような可哀想なクルマも多いですし,人気車種なら,ひどい事故車や転倒車でも直して売ってます。素人が程度の良し悪しを見極めるのは難しいのでお勧めはできません。買うならマジメな競技屋さんが(笑)乗ってた中古車ですよ。
こういうクルマをゲットするには,実際にショップに出入りするか,ショップのサイトやBBSをマメにチェックして,常にアンテナを張り巡らせておくことです。中古車情報だけでなく,モータースポーツに関する様々な情報はショップに集まります。ショップのオヤジは競技屋さんにとって良きアドバイザーでありカウンセラーであり「情報メディア」でもあります。時にメフィストの如き誘惑者にもなりますが(笑)。
どんなショップがいいのか分からない,初めて行く時どんな風に行ったらいいのか分からない,そんな人は次の「ショップに行こう」をよく読んで下さいね。
思い切ってクルマを買い換えるコースのもう一つの選択枝は,安いコンパクトカーの中古車を買うことです。
最近はPN1クラスやS1500クラスのようなコンパクトカー向けのクラスがにぎわっています。主力車種はデミオやフィット,ヴィッツといったお買物クルマですので,中古車価格も安いですし,大排気量のクルマと比べてパーツ価格や工賃も比較的割安です。コンパクトカーの中古車を上手に競技車両へ仕上げていくことで,クルマにかかるコストを全体で大きく抑えることができます。このコースもお勧めです。
え〜,お買物クルマで走ってて楽しいのかよぉ,とか言う人はぜひこちらをご覧になって下さい。きっと目からウロコですよ(→お買物車でモータースポーツ!)。
今回のまとめ
・予算があってもなくてもクルマのステップアップの内容と順序は変わらない。予算で変わってくるのは仕上げるのにどのくらい時間がかかるかだけ。
・低予算だからといって安物を買うのはダメ。役に立たなかったり,後で買い換えなきゃならなくなったりして結局無駄になる。
・低予算の場合は,維持費を節約し,オークションに出てる中古品をうまく利用しよう。ただメンテのサイクルは絶対に節約しないように。時間がかかっても挫けずに少しずつ進めよう。
・ある程度予算があっても,無駄な出費を極力抑え,上手に中古品を利用しよう。特にホイールは新品で買うと高いので中古で十分。
・愛車のステップアップに必死になって自分の腕を磨くことを忘れないように。初級イベントで勝敗を決めるのはクルマではなく腕。
・今の愛車をステップアップする以外に,競技車を中古で購入するのもお勧め。
・良い競技中古車情報など情報はショップに集まる。とにかくショップと縁を持とう。
・コンパクトカーを中古で購入して競技車に仕上げていくのもコストがかからずお勧め。
Updated on Jan 8, 2012.