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クルマの準備

プロ野球選手で「一流」と言われる人に,グローブやバットの手入れをロクにせず雑に扱ってる人なんていませんよね。

テニス選手のラケット,ゴルフ選手のクラブ,スキー選手の板,マラソン選手のシューズ...道具を使うスポーツはみな,生身の手足だけではできないことを道具を使って実現しているわけですから,道具が自分の手足の延長としてきちんと機能してくれないといけません。したがって,自分に合った良い道具を,きちんとメンテナンスして良いコンディションに保つこと,これが勝つための最低条件です。


モータースポーツはクルマという道具を使ってするスポーツですから,「勝つ」ためには,どういうクルマを選び,どういう風にメンテナンスするかが非常に重要です。

実際,地区戦や全日本を走るドライバーにとっては「勝てるクルマ」を,いかに自分に合わせて「勝てる」状態にするかが,自分自身の腕の問題以上に重要になると聞きます。上級者になるほどライバルとの腕の差は小さくなっていきますから,勝敗を決する要素の中で道具の差が占める割合が大きくなるわけです。


...しかし,今,私たちはいきなりプロ級を目指してるわけではありません。

とりあえず自分が今乗っているクルマで,練習会や非公式競技会の初心者クラスなど,初級イベントに出てジムカーナを楽しんでみようという話をしてるわけです。ですから,最初からそこまでシビアに考えなくってもOKです。


テニスや野球,スキーなんかの場合,初心者にとって,道具の準備やメンテナンスが持つ意味は,いきなり「勝つ」ことではなく,まず@安全に楽しくスポーツでき,Aその中で徐々に上達の喜びを味わえること,ですよね。また,B道具そのものが壊れないことも大事ですし,道具に関してルールがある場合は,C道具をルールに合わせることも重要です。


クルマの準備やメンテに関してもこれらに沿って考えて見ましょう。


まず,@の「安全に楽しく走る」ために必要なことでもあり,Cの「ルール」にもなっている項目からです。具体的には,

・タイヤの空気圧,残り山,パンクしてないかのチェック
・タイヤのホイールナットが緩んでないかのチェック
・ブレーキの効き,パッドの残量,ブレーキフルード量のチェック
・タンク類,バッテリー端子のテーピング
・灯火ガラス類のテーピング(ジムカーナではたいてい不要)
・その他,いわゆる車検に通る状態かどうかのチェック。

などでしょうか。


タイヤがパンクしてエアが漏れてたり,ホイールナットが緩んでガタガタしてるような状態では,いくらがんばっても上手く走れないのが当然ですし,そんな状態でスポーツ走行したら極めて危険です。タイヤがあまりにも減ってる状態も,上手く走れませんし危険です。ブレーキに関しても,最低限,パッドの残量やフルード量はチェックしておきましょう。ブレーキがちゃんと効かないクルマでモータースポーツもクソもありません。


激しくスポーツ走行するとリザーバタンク類のキャップが外れて中のオイル・フルード類がこぼれてしまうことがあります。こうなると突然クルマが言うことを聞かなくなる可能性がありますし,路面も汚してしまいます。そのためにブレーキのリザーバタンクやパワステオイルのタンクなどのキャップを外れないようにビニールテープで固定します。これをテーピングといいます。


ブレーキフルードのリザーバタンクにテーピングしたとこ
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同様にバッテリーのプラス・マイナス両端子も上からビニールテープで固定します。クラッシュした際に端子の部分が外れて火花が飛び,漏れたオイルやガソリンに引火しないようにするためです。


バッテリーのプラス・マイナス両端子も上からビニールテープで固定
黒いビニテで見えにくくてゴメン
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サーキット走行会などでは,クラッシュした際にガラスが飛散しないように,ヘッドライトやフォグ,リアのコンビネーションランプなどのガラス部分にもビニールテープを貼ることがありますが,最近ジムカーナでは不要とされています(一部例外あり)。

その他,チューンした車ではサスのスプリングが上下に遊んでいないか,最低地上高が9cm以上あるかどうか,ホイールがあからさまにフェンダーからはみ出してないか,マフラーの騒音があまりにうるさくないかどうかなど,普通に車検に通る状態であることをチェックしておきます。っつーか,普段から車検に通らないようなクルマに乗ってちゃいけませんよ!


Bの道具(クルマ)を壊さないように行う項目としては,前述のタイヤ・ブレーキ類のチェックに加えて,

・エンジンオイルの量,汚れをチェック
・クーラント(冷却水)の量をチェック

これぐらいはやっときましょう。

たとえ初心者であっても,いや,初心者だからこそ,スポーツ走行ではエンジンに結構負担がかかります。気がつかないうちにオーバーヒート気味で走ってたり,頻繁にオーバーレブさせてしまったり。最近のクルマのエンジンはこれぐらいでは壊れませんが,エンジンに不可逆なダメージを蓄積させてしまわないように,エンジンオイルやクーラントの管理は大事です。


レベルゲージを引っこ抜いてエンジンオイルの量と汚れをチェック
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もし前回のオイル交換から3000km以上か半年以上走ってたら,あるいは3年以上クーラントを換えてないようだったら,スポーツ走行する前にディーラーかショップで新しいものに交換しておきましょう。そんなに高いオイルでなくても結構ですが,もしできたらこれまでより一つグレードを上げたオイルにしてみましょう。オイルの硬さについて分からなければ,カーショップの店員さんに「ジムカーナやるんですが」と相談してみましょう。クーラントは純正でもOKです。


また,これは自分ではチェックできませんが,もしミッションオイルやデフオイルもそろそろ交換時期...っていう場合は迷わず交換しておきましょう。スポーツ走行ではこれらのパーツにも非常に大きなストレスを与えることになります。確かに最近のクルマのミッションなんてちょっとやそっとじゃぶっ壊れませんが,ダメージが蓄積するうち突如ブローして走れなくなるなんてこともあり得ます。どうせそのうち換えるんですから早めに替えておきましょう。


・・・・・・

これらのチェックをイベントの前日までに済ませ,タンク類やバッテリーのテーピングもできれば前日までにしておきましょう。イベント会場についてからテーピングしても構わないのですが,最初は何かとドタバタして時間が足りなくなるものです。

タイヤ回りや,ブレーキ関係,エンジンオイルのチェックなどは,本当はスポーツ走行の有無に関係なく「運行前点検」として普段からちょくちょくやっておくべきことですよね(GSでもやってくれますけどね)。

クルマのコンディションが良好であれば,クルマはドライバーが操作した通り素直に動いてくれます。変な癖のあるクルマでは上達は遅くなります。変な癖のあるラケットでテニスは上達しませんし,壊れかけたドライバーで飛距離が出るわけもありませんよね。クルマのコンディションを良好に保っておくことこそ上達の近道,Aの「上達の喜び」につながることなんです。


・・・・・・

さて,こういったクルマの準備をしようと思うと,とりあえず下記のようなモノが必要になってくるでしょう。

・エアゲージ:タイヤのエア圧をチェック
・空気入れ:とりあえず自転車用のものでもOK
・クロスレンチ:タイヤの脱着,ホイールナットのチェックのため
・ジャッキ:最初は車載のものでもOK
・ビニールテープとハサミ
・ガムテープ
・ビニールシート
・軍手
・ブレーキクリーナーとウェス


とりあえず必要なモノ
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特別なものはありません。だいたいみなホームセンターかコンビニでも売ってそうなものばかりですね。本格的に競技を続けるとなると,どうしてもそれなりの工具類が必要になってきますが,最初はこんなもんで十分です。

ただ,この中でエアゲージだけはカーショップでちゃんとしたもの(1500円以上)を買うことをお勧めします。安いものは数字を読みにくいだけでなく,とんでもなく誤差がある製品もあります。写真のようにエア抜きバルブがついたモノだと空気圧の調整がやりやすく,先々永く使って行けます。


お勧めはASTRO PRODUCTS製の文字盤が夜光性の製品(峠でも重宝します f(^-^;) )
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ジャッキも最初は車載のパンタジャッキでいいでしょう。

ただ,だんだんジムカーナにはまって(笑)しょっちゅうタイヤ交換するようになると,車載のジャッキでは作業効率が悪くってお話になりません。カーショップやホームセンターで3000-4000円の小型ガレージジャッキも売ってますが,ガラがデカイわりに最大揚高が低くて案外使えないので,どうせならもう少しお金を出して写真のような油圧式のパンタジャッキ(8000-12000円程度)を買うことをお勧めします。持ち運びにも便利ですし,上手に上げればウマもちゃんとかけられます。


マサダの油圧式パンタジャッキ(使い込んでますなぁ)
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これらの必須アイテムは,練習会や競技会の会場にも忘れず持って行きます。というか普段のメンテに必要なモノばかりですから,いつもクルマのトランクに入れておいてもいいでしょうね。おとーさんはいつでもどこでもメンテできるようにこれらの道具はトランクにずっと入れっ放しにしてます。




今回のまとめ

・壊れた道具や傷んだ道具でスポーツをしても,ちっとも上達しないし楽しくない。それに何より危ない! 道具であるクルマのコンディションはきちんと整えておこう。
・といっても特別な整備は不要。テーピング以外は,タイヤ回り,ブレーキ回り,それとエンジンオイル・冷却水のチェックだけしておこう。要は日常のメンテをちゃんとやるだけ。
・特別な工具も不要。最初は日常のメンテに必要なものだけでOK。
・ただし,せっかくエアゲージやジャッキなどを買うのであれば,ケチらずきちんと永く使える製品を購入しよう。大人は賢くお買い物。



Updated on Jan 7, 2012.

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