ショップに行こう
モータースポーツ参加において「ショップとの関わり」は非常に重要です。
「ショップ」といっても"自動後退"とか"黄色帽子"とか"J息子"とかそういう大規模なカーショップではなく,もちろんディーラーさんでもなく,個人・独立経営の小規模なカーショップのことです。チューニングショップとかGTショップとかラリーショップとかそういう「街のクルマ屋さん」っぽいところね。
いくらあなたがクルマ好きとしてかなりの経歴をお持ちだとしても,自分でミッション下ろしてファイナル換えたり,エンジンばらしてコンロッドのバランス取りしたり,ボディにスポット溶接打ちまくったり,そんなことしませんよね?
え? しますって? ま,そういうヘンタイさんは置いといて(笑)。
普通,ジムカーナのような市販車ベースのモータースポーツをする場合は,クルマをステップアップする際にそういう「ショップ」にクルマを持ち込んで,経験豊富なスタッフといろいろ相談しながら仕上げていくわけです。
もちろんディーラーや大規模カーショップでもある程度の作業は受け付けてくれるでしょうが,経験の浅い若いメカ君が裏で整備書読みながら必死で作業してたり,普段ドレスアップ系の作業しかしてないバイト君が適当なトルク管理で足回り組んでくれてるかもしれません。もちろん細かいセッティングのことを質問しても的を射た回答が返ってくるわけもなし。
病気でお医者さんにかかる時を考えて下さい。
大学病院とか大きな病院に行って,長時間待たされた挙句,研修医みたいなヒヨっ子に適当な対応されてめっちゃむかついた! とかそんな経験ありませんか?
街の普通の開業医さんで,カゼでも腹痛でも何でも診てくれるけど,実はすごい専門性を隠し持ってる,そんな先生の方がよっぽど頼りになるでしょ?
世にはそういう感じの「すご腕のショップ」が結構あるもんなんです。
また,前項の「予算別チューン計画」でも書きましたが,クルマのステップアップや良い中古競技車情報以外にも競技に関する様々な情報はまずショップに集まります。ショップは情報センターとしての役割を持っています。またショップのオヤジ(店長,社長,代表,オーナー,いろいろな呼ばれ方があるでしょうが)はあなたにとって実に頼りになるアドバイザーであり,カウンセラーであり,先輩であり,先生であり,主治医であり,誘惑者でもあります(笑)。
ジムカーナを始める時,最初は自動後退チューンでも完全DIYチューンでもディーラーチューンでもいいんですよ。でもクルマをステップアップし,自分が速くなっていくためにはどこかの時点で必ずショップと縁を持つことになってきます。
では,
どんなショップに行ったらいいの?
どうやって良いショップを見つけるの?
最初に行く時はどんな風に行ったらいいの?
ショップのオヤジとの付き合い方は?(笑)
これらについて以下に書いてみます。あくまで私見ですよ(笑)。
・・・・・・
どんなショップに行ったらいいの?
基本的に「餅は餅屋」です。
ジムカーナをやる場合はジムカーナを専門とするショップがベストです。ただ,ジムカーナ「だけ」を専門とするショップはあまり存在せず,ダートラやラリー車,レース車両も手がけているというショップが多いでしょう。また逆にラリーやダートラが本業でジムカーナ車「も」扱っているというケースもあるでしょう。確かに店長やスタッフの得意領域,不得意領域というのはあるかもしれませんが,ちゃんとした「競技車」を扱っているショップなら大きな間違いはありません。
ただ,ジムカーナ系以外のショップだと,ショップに集まってくる情報には偏りが出てくるかもしれません。ダートラやラリーなど土系競技に強いショップでは自然とそちらの情報が多くなるでしょうし,ドリフトに熱心なショップではドリフト以外の情報はあまり入ってこないでしょう。そういう意味ではやはり「ジムカーナ系」と呼べるショップがベターです。
また,あなたがだんだん速くなって,ジムカーナの世界の中でいろいろなお付き合いができてきた時に,「どこのショップに属しているか」というのは身元証明的な意味合いを持っていて,意外に重要なことなんです。だからといってわざわざ遠方の超有名なショップに乗り込んで行く必要もないですが,やはりその地域のジムカーナ界で少しでも名前を知られているショップの方が安心です。
ドレスアップやオーディオ系のショップ,ドリフト系のショップ,最高速やゼロヨンなどパワー追求系のショップ...そういうショップでも,実は店長が昔ジムカーナをバリバリにやってた,なんてこともあるかもしれませんが,まあ例外でしょう。こういうショップが「すぐ近所にあって,実は既に常連客です」とかいうのでない限り,ジムカーナをするためにわざわざ選んで行くこともないと思います。
大規模カーショップと縁を切る必要はありません。普段のメンテやちょっとしたパーツ類を購入するのはやはり近所の大規模カーショップが便利です。ポイント制や割引セールなどを上手に利用しましょう。
また,ディーラーさんとの付き合いも別に切ってしまう必要はありません。純正部品を頼んだり,DIY作業のために整備書を見せてもらったりと,結構お付き合いは途切れません。もしクルマを買い換えるとなった時も,普段からお付き合いのあるお客さんには値引きも甘くなるってモンです。程度の良い中古ベース車を探す時も手伝ってもらえます。いろいろな人との付き合いを大事にしましょう。
・・・・・・
どうやって良いショップを見つけるの?
本当は世の中に「良いショップ」とか「悪いショップ」とかいうのはありません。あるとすればあなたと「相性の良い」ショップ,「相性の良くない」ショップでしょう。あなたがショップに何を求め,ショップがそれに的確に応えてくれるかどうかです。
どんなに評判の良いショップであっても,あなたの求めているものがちっとも得られないのであれば,少なくともあなたにとっては良いショップではありませんよね。逆に,世間的には全く認知されていない街の小さな板金屋さんでも,あなたのニーズにばっちり応えてくれるならそこはあなたにとって素晴らしいショップです。
ですから「良いショップ」を探そうと思ったら,まず自分がそのショップに何を求めているのかをしっかり自覚することが重要です。タイヤ交換,オイル交換からクルマに関すること全てを任そうと思っているのか,エンジン内部やミッション周りなどの重作業のみショップにお任せしようと思っているのか,情報収集が主目的なのか...それによって良いショップの条件は大きく変わってきます。
ところが,初心者さんの場合はそもそも自分がショップに何を求めたらいいのかがよく分かりませんよね。どこまでが「日常的」なメンテで,どこからが「専門的」なの?って感じで。そういう方には,とりあえず
@ジムカーナの練習会や競技会をちょくちょく主催しているショップで,
A自宅かホームコースから1-2時間以内で行ける所にあり,
B友達や知人の行きつけのショップ
をお勧めします。この3つの条件がそろっていればベストですが,3つのうち2つをクリアしていればOKです。もちろん必ずしもこれらに当てはまらなくても「良いショップ」はありますよ。「とりあえず」ということです。
@のジムカーナの練習会や競技会を主催しているショップであればジムカーナ競技車両を少なからず扱っており,初心者から上級者までいろいろなドライバーが出入りしているはずです。ジムカーナ初心者がどのようなことをショップに求めるか熟知しており,こちらが自分のニーズをうまく自覚できてなくっても,ショップの方である程度分かって対応してくれます。
ジムカーナの練習会や競技会を主催しているショップはネットで検索できますよね。検索のキーワードは「ジムカーナ」&「ショップ」&「練習会」or「走行会」です。
Aの自宅やホームコースからの距離も重要です。一般的に,日常的なメンテを求めているのであれば,専門性にはこだわらず地理的に近いショップの方が便利でしょうし,専門的なことを求めているのであれば,地理的に遠方でも専門的な技術を持つしっかりしたショップに行くべきでしょう。
しかし当然ながらあまり遠くても不便です。ショップにクルマを持ち込む時というのはクルマの調子が良いとは限らないからです。ミッションからガラガラ音を立てながら高速を何100kmも走って遠方のショップに行けませんよね。ホームコースを走っててクラッシュ,自走不能となった時はショップから積車(積載車)で迎えに来てもらわないといけないかもしれません(←経験あり;)。
だいたい自宅から1-2時間ぐらいで行ける範囲内が現実的でしょう。ただし,ホームコースが決まっている人は自宅よりもホームコースに近い方が便利かもしれません。走りに行った帰りにちょっと寄ったりできますからね。
Bは次の「最初に行くときはどんな風に行ったらいいの」とも関連してますのでそちらで書きましょう。
・・・・・・
最初に行くときはどんな風に行ったらいいの?
ネットで探し出したショップに初めて一人でぶらりと行ってみます。
ええ〜! 意外と小さい店だなぁ...っつーか,どこにクルマ停めるのよ...
どこが入り口か迷いながらもとりあえずこれと思しき扉を開けて狭い店の中に入ると,壁一面の棚にホイールやサスなどが雑然と並べられ,奥の方では店長らしきオヤジが若い常連客2-3人と何やら談笑中,こちらの存在に気づいてくれず,無理に声をかけることも憚られ,仕方なく引き返してピットの方に行くとこちらは若いスタッフがいかにも競技車というハデなカラーリングのクルマの下にもぐりこんで何やら黙々と作業中。こちらもとても一見さんの初心者が声をかけられる雰囲気でもなし...すごすごと愛車に戻りエンジンをかけながら「やっぱりジムカーナなんて止めとこう...」 そんな人いませんか?(笑)
専門性の高いショップというのは得てしてこんな雰囲気です。スタッフ全員が声をそろえて「いらっしゃませ〜!」なんてことはまずありません。決して悪気はないのですが,初心者にとってはどこか入りにくい,マニアックで敷居の高い雰囲気があり,ついつい入るのに気後れしてしまうものです。初心者を名乗るのがちょっと気恥ずかしい「大人の」ジムカーナ入門者であればなおさらです。
初めてだろうが何だろうが客は客。別に遠慮する必要なんかないので,どんどん店に入って行って,どんどん常連さん達の話の輪に加わって行けばいいんですけどね。そういうことが平気でできるキャラの人もいれば,そうでない人もいます。
そういう時に一番良いのは,誰か練習会友達や知人が出入りしているショップに連れて行ってもらうことです。新しいお客を紹介したということで,その人にも何らかのポイントが入ることがあるので,たいていみな喜んで紹介してくれるはずです(笑)。そのショップの評価や店長の性格とか要注意事項とかも(笑)こっそり教えてもらえますので安心して通い始めることができますよね。
紹介してくれる人がいない場合などは,あらかじめ電話やメールで店長にアポをとって行くとグッと行きやすくなりますし,あらかじめ用件がはっきりしてるので本題の話に入りやすくなります。シャイな人にはお勧めです。
・・・・・・
ショップのオヤジとの付き合い方は?
競技系ショップのオヤジ(店長,社長,代表,オーナーなど呼ばれ方はいろいろ)はたいていご自身が競技でバリバリに走ってた人達です。趣味が高じて「走り屋」が「クルマ屋」になってしまったといいますか(「豆腐屋」になる人は少ないようです)。今なお現役で走り続けてる方も多いですし,全日本チャンピオンを何回も取ってるとか,そういう「伝説の走り屋」とか「神様」みたいな人も結構います。
でも実際に話してみると,オーラがめらめら出てて熱くて近寄れないとか,後光がまぶしくて目を開けてられないとか,そういうことはなくって,ごく普通のクルマ屋のオッチャンという感じの方が多いです。本当にみなさん気さくに話してくれます。
私などはついその気さくさに甘えてしまってタメ口...とまでは行かないものの気軽に話をさせてもらってますが,時々その話の中に日本刀がギラリと光るような鋭いコメントやアドバイスが出てくると,改めて「あっ,そうだ,この人は神様だったんだ!」と居住いを正される瞬間があります。
ちょっと年齢の行った大人の初心者の方がショップのオヤジと接する時には,ヘンに肩肘を張らず「初心者です」とはっきり伝えるのが重要です。何か一つの世界を極めそれでメシを食ってる人がどんなに凄いかは,社会人であるあなたなら十分知ってますよね。素人が雑誌やネットで仕入れた中途半端な知識を振り回しても,その世界で毎日メシを食ってる職業人にとっては屁みたいなモンです。
といってヘンに卑屈になる必要もありません。お金を払ってお客としてショップに行くわけですから,こちらの予算や求めていることをキチンと伝え,それに沿ってキチンとプロのお仕事をしていただけばいいわけです。堂々としていましょう。
ところが先にも書いた通り,初心者の人が最初にショップに行く時には自分が何を求めているのかが明確になっていないことが多いと思います。だからこそちゃんと「初心者です」と伝えておく必要があるわけです。するとオヤジの方からいくつか質問をしてくれて(予算は? 出る予定のイベントは? 今の愛車でどこまでやるつもり? などなど),あなたの回答に基づいて選択肢をいくつか提示してくれると思います。そうやって徐々にクルマ作りの話が進んで行くわけです。
いくらショップのオヤジが「神様だ」と言っても,実際は生身の人間(のはず)ですから,全知全能ではありません。時には間違うこともあるでしょうし,機嫌の悪いこともあるでしょう。こちらが求めている反応が返ってこない時には,すぐに「あのショップはダメだ」とか言うのではなく,まず自分が,求めていることをショップにキチンと伝えているかを振り返ってみましょう。こちらが何を求めているかが分からなければ,いくらプロでも対応のしようがありませんよね。
こちらの求めていることを何度伝えても反応があさっての方向を向いてるとか,貧乏人軽視・初心者軽視の態度が明らかだとか,最初からやたら高いパーツをローンを組んでまで強引に買わせようとするとか,伝えた予算を守ってくれないとか,会計がいい加減で,時によって同じ作業でも工賃がえらく違うとか,作業の仕上がりが汚く,いつもエンジンルーム内がオイルでベタベタになってるとか,お店にたむろってる常連がどう見ても「ヤンキー」ばかりとか...(笑),今時そんなところは少ないとは思いますが,そういうショップやオヤジは敬遠してもOKです。
いったんあるショップに縁ができると,競技を続けている限り長いお付き合いになります。私が今通っているショップも,もう20年近くの関係になります。別にショップを変わってはいけないということもないのですが,上級者が自分の意思でショップを変わるのはともかく,初心者があちこちショップを変わったり,複数のショップに並行して出入りするのは考えものです。
あ,もちろん,最初に「ここ」というショップが決まるまでは構いませんよ。いくつかのショップに実際に行ってみないと分からないということもありますから。
上にも書いた通り,競技を続けて行く中で,ショップのオヤジはあなたにとって実に頼りになるアドバイザーであり,カウンセラーであり,先輩であり,先生であり,主治医であり,誘惑者でもあります。ショップとの付き合い方があなたの競技人生のあり方を決めると言っても過言でありません。
どうぞ良いショップとオヤジに出会って下さい。
今回のまとめ
・モータースポーツ参加にあたってショップとの関係は非常に重要になってくる。
・初心者が初めて行くならば,なるべくジムカーナ系の専門ショップがベター。「ジムカーナの練習会や走行会を主催しているショップ」をネットで検索しよう。
・自宅かホームコースから1-2時間以内で行けるショップが現実的。あまり遠いとクルマの調子が悪い時にたどり着けないし,何かと不便。
・最初はなかなかショップの中に入りにくいもの。シャイな人は友達や知人の行きつけショップを紹介してもらうのがスマート。
・ショップとの付合いで大事なことは「自分の求めていることをキチンと伝える」こと。こちらのニーズがはっきりしなければ,いくらプロでも対応のしようがない。
・初心者の場合は「初心者です」とはっきり伝えよう。こちらのニーズをうまく明確化して対応してくれる。
・ショップのオヤジは実際に輝かしい競技歴を持つ人が多い。先輩として,先生として,カウンセラーやアドバイザーとして,とっても頼りになる存在。
・競技に関する様々な情報がショップには集まってくる。ちょくちょくショップに顔を出して常連さんといろいろ話をしてみよう。
Updated on Jan 8, 2012.