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お買物車って走るの?

かつて私,不惑おとーさんは,ホンダのインテグラ・タイプRに乗ってジムカーナの公式戦を戦っていました。

1トンちょっとの軽量ボディに200psのVTECエンジンを積んだこのピュアスポーツ車を,さらに車高調を組んで足回りを固め,機械式LSDをイニシャルを上げて組み込み,バッテリーを2輪用に交換して軽量化し,タイヤはもちろんSタイヤ,その他いろんなところに手を入れてバリバリの,ガチの競技車(ジムカーナN2仕様)に仕上げて走ってました。



不惑インテ号の当時の勇姿

もちろんその走りには素晴らしいものがありました。ステアを切り込めば切り込んだだけ俊敏にインに食い込むフロント,ブレーキングでするするっとアウトに流れるリア,そしてスロットルを踏み込めばくぉ〜んという官能的な響きを奏でながらぐいぐい車体を引っ張るエンジン。

当時はこのクルマに惚れ込んでましたから,他のクルマに乗り換えるなんてことは全く考えていませんでした。ただ後から考えると,あまりに手間やコストがかかるためだんだん競技活動に疲れてきてたのは事実。


Sタイヤは,公道を走れる最低限の溝はありますが,スリックタイヤに近い柔らかいゴムでできており,素晴らしいグリップを持つ代わりあっという間に磨耗してしまいます。特にフロントの2本は競技本番を1〜2回走っただけで表面が減ってしまい,後は練習でしか使えなくなります。そのため1本が2〜3万円もするタイヤを当時は湯水のように消費してました。ドライブシャフトもよく折れましたし,いろいろなところにいっぱい手間と時間とお金がかかりました。

普通の勤め人であるおとーさんに大した財力はありません。世のサラリーマンの平均額に毛の生えた程度のお小遣いは全てクルマとタイヤに消え,昼メシ代や飲み代を削ったお金も,嫁さんに土下座してせしめた追加の小遣いも,競技会の賞品をオークションで売ったお金も,全てつぎ込んでもまだ足りないぐらいでした。


無理に無理を重ねだんだん疲れが溜まっていく中,ようやっとミドル戦で表彰台の真ん中に立てるぐらいの腕になりましたが,その途端,豪雨の練習走行中ハイドロを起こしコンクリ壁にクラッシュしてこのクルマは亡くなってしまいました(→その時のdiary)。


...泣きました。自分のバカさとヘタクソさを呪いました。

しかし,最愛のクルマを亡くし,シリーズポイントリーダーの座を棒に振り,競技活動休止を余儀なくされて,悲しさと寂しさでいっぱいなはずの心の奥には不思議な開放感があったんですよ。ああ,これでやっとラクになった,助かった...

もう競技活動を止めようかとも思いました。忙しい中間管理職のオッサンの趣味としては,モータースポーツはお金も時間も手間もかかり過ぎる。今回のクラッシュも,ドライバー本人に大きなケガがないだけまだ良かった。もういいよ。止めるなら今のうち,このタイミング。


...しかし2つの出会いがおとーさんをモータースポーツの世界に引き止めました。

その一つはデミオというお買物グルマ。

もう一つはSタイヤではない普通のスポーツラジアルで走るジムカーナ。


デミオに初めて乗った時はホントに衝撃を受けました(→衝撃のファーストインプレ)。

何でこんなそこらのオバちゃんが乗るお買物車のような,あるいは営業車のような,非力で安いコンパクトカーで,しかもド・ノーマルなのに,こんなに運転が楽しいのか。

このフロントの俊敏な動きは何だ? このリアの素直な動きは何? 非力だけど実直によく回るエンジン。それにこの車体の剛性感はハンパねえ。これ,オバちゃんのお買物車にしとくにはもったいなさ過ぎだろ...


そうだ,もう一度走ろう。このお買物車で走ろう。


そう決意するのにそんなに時間はかかりませんでした。

そしてちょうどその頃,日本のジムカーナ界にはSタイヤではなく普通のスポーツラジアルで走るクラスが浸透し始めていました。特に「S1500(スーパー1500)クラス」という主に1500ccのお買物車を対象にしたラジアルタイヤで走るクラスが既に人気を集めていました。これならあのSタイヤのマネージメントやタイヤ代に悩まされることはありません。元々の車両代も安いですしクルマが小さいのでパーツ代や工賃も割安です。


私,不惑おとーさんは今もこのS1500クラスを愛車デミオで走っています。

これまでインテグラだけでなくMR2でも競技をしていましたし,ハイパワー4駆を峠で振り回していた時代もありました(おバカです;)。しかしこれは間違いなく言えます。

このデミオという非力で小さなお買物車で,普通のラジアルタイヤで走っている今が,これまでで一番楽しい!

腕は...上がったのかどうか分かりませんが地区戦でも勝てるようになりましたし,スポット参戦した全日本でも勝つことができました。浮いたお金や時間を練習に回すこともできますし,タイヤ代や様々なコストに対する心理的負担がなくなったことも成績が伸びた理由だと思います。


「お買物車って走るの?」という問いに対する答えがこれです。

走ります。めっちゃよく走ります。



デミ助@全日本で爆走中


これからモータースポーツを始めようという方にも。
モータースポーツを続けてきたけどいろいろ行き詰ってちょっと疲れてるという方にも。

お買物車で,ラジアルタイヤで走るジムカーナ,マジお勧めです。




今回のまとめ

  • いわゆるスポーツカーをさらにガチの競技車に改造し,Sタイヤを履き,ギリギリの速さを追求していく。これもまた楽し。
  • しかし仕事も忙しく家庭もある普通の社会人がこれを趣味として続けていくのはお金も時間も手間もかなり厳しい。
  • 無理を続けていく中でだんだん疲れがたまってモチベーションが下がって行くこと多し。
  • それを打破してくれるのがお買物車とラジアルタイヤで走るジムカーナ。最近のコンパクトカーの実力は全く侮れない。



Updated on Jan 10, 2012.

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