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2007年 > 8月5日
新型デミオの競技ベース車両としての素質を考える
オトコというのは悲しい性で,惚れちゃいけない,この娘に惚れちゃいけない,って思えば思うほど惚れてしまう,ってとこがありますな。
今このコに惚れてもどうしようもない,手の出しようもない高嶺の花,惚れても辛いだけ,って分かってるのに,走り出してしまうともう止められない,そういうオトコのバカなところが古今の文芸上の様々な悲喜劇になっているわけで。
不惑おとーさんもまたオトコ。
まぎれもなくオトコ。
惚れっぽいこと,この上ない。
...いやもちろん実際の艶っぽい話ではなく,クルマの話だけどねぇ ( ̄ー ̄)。
いや実は先日ね,仕事を早めに終えて,嫁様にはもちろん内緒で,いつものディーラーへ行って「新型デミオ」に乗ってきたんですよ。
乗ったのはスポーツモデルの1.5 SPORT。
...ダメです。完璧,惚れちゃいました。
いいです。このクルマすごくいいです (・∀・)
何でもやたらと3ナンバー化して居住性と利便性ばっかり追及する一億総ミニバン傾向のこの業界で,一番売れてる主力中の主力車種を,こんなに小さくして,軽くして,「走る」ようにして,かつ燃費も良くしたという,このMAZDAという会社には本当に拍手喝采です。
ある雑誌に載ってた,この新型デミオのチーフデザイナーのインタビューの中にあった
「ミニバンばかりがクルマじゃないんだということを,投げかけていきたい」
という言葉が実に印象的。
このデミオがどんどん売れて,願わくば他社もこれを見習って「走る」「カッコいい」コンパクトカーをどんどん出してくれないかなあ,と。
でもディーラーの馴染みのセールスさん(おとーさんと同世代)は,試乗してる時に助手席で「正直言うたら,こんなに大冒険してコケたらどうすんねん,って心配やわ」って笑うに笑えない顔してましたけどね。実際,大冒険だと思います。「不惑さん,このクルマ,売れると思う?」ってしきりと訊くから「大丈夫,絶対売れるって!」と無責任に太鼓判押してきましたけど(笑)。
で,どこがそんなに良かったかというと。ブログっぽく試乗レポートみたいな。
やはり一番印象的なのは車体の剛性感ですな。
SPORTというグレードはサスも他のグレードに比して若干硬めにチューンしてあるようですが(欧州の標準バージョンらしい),ボディのあちこちにちょっとしたブレースやバーを入れて補強をしてあって(カタログには載ってない),これが実にいい感じ。よく見るとストラット回りやリアのゲート回りもまあまあの間隔でスポット(溶接)が打ってある。
小さいクルマをやたらと硬くすると,サスが動く以前に車体が跳ねちゃう印象がありますが,このへんが軽いわりにドッシリした感じで,サスなりブッシュなりがしっかり動いてる感触。今my嫁さんが乗ってるVWゴルフなんかと比べても,妙なゴツゴツ感がなくって実にリラックスして乗ってられる。車体の剛性だけじゃなくボディの重量バランスもいいのかもしれませんね。リアから見ると末広がりですごい「安産体形」だし (*'-')
ただ,ノーマルだとホイール⇔フェンダー間が開きすぎてて,車高が低いはずなのに高く見えます。フェンダー内のクリアランスは,上下方向には十分。最低地上高もわりに高い目の数字なので,車高はかなり下げられるんじゃないかと。
ただし,ホイールの裏側のクリアランスは非常に狭く(カタログにも16インチ車はチェーン不可と書いてある),ホイールの幅を太くするのは難しそうです。このSPORTの純正のホイールは16の6.5Jなので,少しオフセットで動かすとしても7Jあたりが限界のような気が。
標準のタイヤが45扁平なので若干路面の凹凸を拾う感じはありますが,轍に神経質になるほどではなく,おとーさん的には非常に快適。走りの好きな人ならむしろ路面のインフォメーションが分かりやすくっていいでしょう。まあ,普段ボーズ状態のSタイヤで走り回ってた人ですから,どんなタイヤでも快適っつーのはありますし,そもそも競技やるなら標準のタイヤはどうしたって換えるでしょうし。
エンジンや動力性能も数値のわりに優秀に感じました。
試乗車は7速CVTだったので5速MTとはだいぶ違うと思いますが,セールスさんとおしゃべりしながら走ってるとあっという間に車速が80-90kmになってて何度も焦りましたから,日常的な加速性能は全く問題ないでしょう。
ただ,残念ながら競技レベルから言うと「吹け上がりが軽い」という印象はなかったですね。まあホンダの名機B18Cと比べる方が間違ってますが。加速がいいのは,車体が比較的軽いのと,CVTがうまくエンジンの特性をカバーしてる面があるでしょう。まあ,この辺はフライホイールを替えるとだいぶ印象が変わってきますし,MT車に乗ってみないとエンジンのホントの素性は分からないけど。
エンジン音は「すごく静か」という評判も聞いてましたが,回せばそれなりの音がしましたから,特別静かということはないでしょう。でも車内で普通の声量でしゃべることができますから,不惑インテ号のような競技車両と比べると雲泥の差ですな。
エンジンルームの中は結構スカスカで,これならタービンつくやんか,と思ったのは私だけじゃないでしょう(笑)。ラジエター裏は広く開いてて,熱の逃げは良さげ。バッテリーのサイズは結構大きめで,これは2輪用にすればある程度軽量化できそうです。
エアのインテークはフロントのグリルからで,ここはラム圧をうたうエアインテーク関連製品が必ず出るでしょう(笑)。N車では使えませんが。
ステアリングや旋回性能は,これまた非常にGOOD!です。
ステアリングは確かに軽いけど,安い小型車にありがちなオモチャのような軽さではなくて,ある程度の手応えを保ったしっかりした軽さ。高速巡航時にはセンター感もしっかりあって,フラフラした感じは皆無。このあたりの切り替わりも自然で急にステアが重く/軽くなるようなこともない。車速感知の設定もうまくできてますな。
ステアの切れ角は結構大きいです。低速だとスパッと大きく切れます。
ロールも自然で,ターンインの姿勢は安定してます。試乗ですからリアが出るほどの走りはしてませんが,この感じだとリアの出方もコントロールしやすそうな予感。ある程度パイロンを鋭角に回る設定でも,規制がなければサイドを引かずに回れる場面がありそう。
指示器のレバーや各種ボタン類は操作感がカチッとしてて実に心地よい。
このへんがぐにゃっとした感じだと途端に気持ちが萎えますが,指示器がカチッと決まるだけで,「さあ曲がるぜっっ」と気合いが入ります。
ステアからシフトまでの距離は近く,シフト操作はやりやすそう。試乗車はCVTだったのでパドルシフトでしたが。サイドの位置も左手を自然に下におろしたところにあって,サイドターン時の操作性も悪くなさそう。
ブレーキもよく利きます。一時のマツダ車によくあったようなカックンブレーキではなく,タッチは自然で,踏めば結構リニアに利くって感じです。実はリアはドラムなんですが違和感全くないですね。サーキットをがんがん周回するような走り方をしない限り問題ないでしょう。
ABSの利きもこんなモノでしょう。ABSを利かせながらサイドがちゃんと利くかどうかは未確認。試乗車でそこまでできまへん(笑)。
さて車内は...想像してたよりもずっと広いやんかぁ (*'-')ウフフ
そこそこ身長のあるオッサン2人が並んでドライブしてても全く窮屈さは感じませんでしたよ。まあ一抹の寂しさは感じましたが。いずれにせよ,これで「狭い」って言うヤツは一生バカでかいミニバンにでも乗ってなさいってこった(をいを
もちろん後席は,「広い」ってことはないですな。
でも座高の高いおとーさんが座ってても頭上には十分クリアランスがありましたし,膝がフロントシートの背面に接触するものの,身動きも出来ず圧迫感で過呼吸発作起こす,ってほどのことはない。まあ30分程度ならガマンしようかなっていう程度。小学生ぐらいの子供ならもっと長時間乗ってても問題ないでしょう。
トランクスペースも,もちろん「広い」ってことはありませんが,コンパクトカーならこんなもの,ヴィッツなどの競合車と比べても同じ程度のものでしょう。リアシート倒してタイヤ4本と工具類,ジャッキ・ウマなど積めるかどうかギリギリって感じ。家族でキャンプに行くのには,かなり荷物を選ぶ必要がありそうです。
内装の質感は,昔のホンダ車と比べりゃ上出来ですよ,奥さん(笑)。不惑インテ号の内装なんてそりゃもうひどいモンでしたから。おとーさん的には十分及第点です。
忘れてましたが,もう1つ特筆すべきは「見切り」の良さです。
フロントの視界の広さは言うまでもなく,サイドウインドーのフロント側の下端が低くなっていて,斜め前方の見切りが非常にいい。これならバケットを入れて座面をかなり下げてもサイドターン時のパイロンの見切りは良さそう。大き目のドアミラーは競技にはちょいと邪魔ですがね。
競技にはあまり関係ありませんが後方の視界も良好です。
で,リアのワイパーって軽量化のために外しても規定違反にならないよね?
最後にもう一度,おっさん2人でクルマの回りをぐるぐる回りながらデザインを褒め称えます。
カッコいいです。すげえカッコいいです。
強いて文句言うなら,フェンダーのすき間と,マフラーがしょぼいことぐらい(笑)。
フェンダーのすき間はどうせ車高下げますからいいんですが,N車はマフラー替えられないからなぁ... (;´д⊂) せめてSPORTには最初からマフラーカッターぐらいつけといて欲しかった。
ま,でもそんなことは瑣末も瑣末。
少なくとも,街乗りメインで時々ワインディングを走る程度なら,実に楽しい日々を送れそうな予感に満ちたクルマです。しかも維持費・ガソリン代が安くて経済的だし。
このクルマなら,小さくて非力でもいい! 絶対に楽しい! 惚れたぜ!
迷ってるアナタ。
買い,ですよ。
後悔はしません。おとーさん,非常にお勧めのクルマです。
・・・・・・
さあ,すっかりアクセラからデミオの方に気持ちが動きつつあるおとーさんですが。
問題は,本当にジムカーナの競技ベース車として使えるのかどうか。
もちろん,実際に勝てるかどうかはドライバーの腕次第ですが,少なくともクルマのスペック的にライバル車達と肩を並べて競えるだけの地力があるのかどうか,です。
来年からN1クラスが1500ccまでの排気量になったなら。
ライバル車として思い浮かぶのはまず新旧のヴィッツRS。旧型スイスポ(スイフト・スポーツ)とコルトの1.5C。それとフィットの1.5A・1.5S,ぐらいかな。これらのクルマ達は比較的新しく,コンセプトやスペックもデミオとそれほど変わらない狭義のライバル車達です。
ところが,もし年式や最低重量の制限がなかったらここにGA2シティや1500のCR-Xが入ってくる。このあたりの旧車が出てくると,最近のクルマと比べて車重がベラボーに軽いので,よほど腕に差がない限りデミオに勝ち目ないです (;´д⊂)。
また,駆動方式に制限がなく,ロータリー係数が1.0のままだったら,何とRX-8がN1クラスに入ってくる(正味の排気量は1308ccだからね)。車重はタイプSで1310kgとだいぶ重くなりますが,何せ出力は250psですから,フルパイロンコースならともかく,高速コース設定になるとまるで車格が違います。
これらのクルマの基本的なスペックの比較は下記の通り。
上記の通り,シティの軽さとRX-8のエンジンスペックは完全に別格・異次元で,それ以外のクルマのスペックはほぼどんぐりの背比べ。
旧型スイスポが軽さを生かしてわずかに他をリードしてる感じはありますが,使えるタイヤのサイズや最小回転半径などではデミオにも利があり,シティとRX-8が出てこなければドライバーの腕や細かいセッティングの差で面白い勝負が出来そうです。
もちろん,シティはタイヤのサイズとノーマルパーツの調達に(N車両ならば吸排気系はノーマルパーツが必要),RX-8は車重と小回り性に弱点があり,コース設定によっては十分勝負になるかもしれませんが,関西のジムカーナで主な舞台となるカートコースでは,そのままではRX-8がぶっちぎってしまう可能性が大か。もちろんパイロン主体のコースならシティが独走してこれまた糸冬了。
シティなどの旧車やRX-8の出走を制限しないのだったら,条件がイーヴンになるような何らかの工夫がないと,一方的なワンサイドゲームになってしまって,せっかくの新しいレギュレーションなのに実につまんないことになっちゃうかも。
といって,「古いクルマは出てくんな」っていうのも,すでに給料から介護保険料引かれてるおとーさんとしては抵抗感じる(ジジイってこと)。何かいいアイデアないでしょうかね。
・・・・・・
次に。
ヴィッツ,スイスポ,フィットなど狭義のライバル車の中でデミオにアドバンテージはあるのか?
上記のように数値上の動力性能からは旧型スイスポが若干リードしてる感じはありますが,「頭一つ抜けてる」ってとこまでは行ってないか。
デミオのSPORTグレードは,もともと完全新設計の高剛性ボディに,さらに補強を入れてるのが売り。実際におとーさんが試乗してみて,これまでに乗ったことのあるヴィッツやフィットと比べると,車体のしっかり感はだいぶ「違う」ように感じました。サスはどっちにせよ競技用のモノに替えますので(発売されればだけど),クルマの基本骨格がしっかりしてるかどうかが非常に重要じゃけんね。
ステアリングの操作感や,実際の小回り性能も,他車に比べると「絶対負けてない」と思いましたね。特にステアがスパッと切れる感じは快感でした。車高が低く,クルマの重心が低いことも絶対,旋回性能にいい影響を与えてると思います。
問題はやはり「重量」とシフトのつながりかなぁ...
デミオは「軽くなった」とは言えちょうど1トン。旧型スイスポと比べるとそのままでも70kgの差があります。もともと軽量クラスですからこの差は非常にでかいです。加減速のたびにこの差がジワジワと効いてくる可能性はあり。この点ではヴィッツの旧RSも960kgだから結構有利。
デミオのガソリンタンク容量は41リットル。これにガソリンの比重値をかけて約32kg。N車両ではだいたいこの数字まで軽量化OKということになってるので,ギリギリまで軽量化して最低重量は1000-32 = 968kg。バッテリーその他レギュレーションの許す限りこれに近づけるべく軽量化に勤しむ必要アリですな。ライバル車だってさらに軽量化してくるわけだしね。
重量を重視するのなら「SPORT」グレードではなく「15C」という1500ccのもう1つのグレードを選ぶという手もあると思います。これならエンジンは一緒だけど最初からエアロやフォグがついてないために車重が980kgと20kgほど軽い。ライバルの車重に若干近づきます。
でもSPORTにはボディの補強やサス回りの補強が入っていることを考えると,同じ補強を15Cに後からやると規定違反になる可能性あるし,ついてくる純正タイヤが14インチにまで下がってしまうし,おとーさんならSPORTを選ぶかな。
カタログから見る限りデミオの5MTシフトのつながりは今一つの感じです。
1速がややローギアードで2速以降が全部若干ハイギアード。つまり1速⇔2速というジムカーナで一番大事なところのつながりが他車と比べてやや離れ気味ってこと(泣)。
ヴィッツは旧RS(NCP13),スイスポはもち旧型,フィットは1.5Sの数字です。
上の表のように,各ギア比と純正タイヤの外径サイズ,タコメータでレッドゾーンに入る回転数などから計算すると,デミオは最も1速が吹けない上に,2速・3速(それ以上も)が高い目のギア比になってることが分かります。
1速で吹け切った状態から2速に入れた時の回転数を計算すると,ヴィッツ(NCP13)は約3850rpm,旧スイスポが4100rpmとなるのに対してフィットとデミオは約3500rpmまで回転が落ち込んでしまいます。
スイスポは最大トルク発生がちょうど4100rpmなので,2速に入った瞬間,正にばっちりのギア比になっているのに,デミオは最大トルク発生は4000rpmで,たとえ電光石火のシフトを敢行しても,2速に入った瞬間,一番おいしい回転数から500rpm離れてる。
もちろん街乗りでは,むしろこのギア比の方が,1速の発進加速が良く,その後は速度が伸びるので,使い勝手も燃費もGOOD! でもジムカーナをやる上では,おそらくファイナル変更は必須のメニューになってくるでしょうね(もっとギア比の大きなファイナルを入れて2速をローギアード化)。どこかのチューニングショップがLSDと合わせて開発してくれるといいんですが...
・・・・・・
結論です。
新型デミオはその高いボディ剛性と優れた旋回性能で,新N1クラス(1500ccクラス)の主役になり得る可能性は十分にあると思われます。ただし,ギアのつながりはイマイチのためコースによっては苦戦する場合もあるでしょう。このあたりのウィークポイントを埋めるためには駆動系のジムカーナパーツ開発が必要でしょうね(特にファイナル)。ギアのつながりさえ改善できれば現行の1500ccクラスの中では「最も速い」クルマになり得ると思います。
ただ,結局そのあたりはドライバーの腕次第ですし,このままでも「最もカッコいい」「最も楽しい」クルマには十分なってるので,おとーさん的には絶対「買い」ですがね ( ̄ー ̄)
おとーさんとしては,パーツの開発を楽しみにしながら,来年の新レギュレーション情報を集めながら,惚れたあの娘をモノにする日を待ち続けたいと思います (*'-')
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新型デミオの競技ベース車両としての素質を考える
オトコというのは悲しい性で,惚れちゃいけない,この娘に惚れちゃいけない,って思えば思うほど惚れてしまう,ってとこがありますな。
今このコに惚れてもどうしようもない,手の出しようもない高嶺の花,惚れても辛いだけ,って分かってるのに,走り出してしまうともう止められない,そういうオトコのバカなところが古今の文芸上の様々な悲喜劇になっているわけで。
不惑おとーさんもまたオトコ。
まぎれもなくオトコ。
惚れっぽいこと,この上ない。
...いやもちろん実際の艶っぽい話ではなく,クルマの話だけどねぇ ( ̄ー ̄)。
いや実は先日ね,仕事を早めに終えて,嫁様にはもちろん内緒で,いつものディーラーへ行って「新型デミオ」に乗ってきたんですよ。
乗ったのはスポーツモデルの1.5 SPORT。
...ダメです。完璧,惚れちゃいました。
いいです。このクルマすごくいいです (・∀・)
何でもやたらと3ナンバー化して居住性と利便性ばっかり追及する一億総ミニバン傾向のこの業界で,一番売れてる主力中の主力車種を,こんなに小さくして,軽くして,「走る」ようにして,かつ燃費も良くしたという,このMAZDAという会社には本当に拍手喝采です。
ある雑誌に載ってた,この新型デミオのチーフデザイナーのインタビューの中にあった
「ミニバンばかりがクルマじゃないんだということを,投げかけていきたい」
という言葉が実に印象的。
このデミオがどんどん売れて,願わくば他社もこれを見習って「走る」「カッコいい」コンパクトカーをどんどん出してくれないかなあ,と。
でもディーラーの馴染みのセールスさん(おとーさんと同世代)は,試乗してる時に助手席で「正直言うたら,こんなに大冒険してコケたらどうすんねん,って心配やわ」って笑うに笑えない顔してましたけどね。実際,大冒険だと思います。「不惑さん,このクルマ,売れると思う?」ってしきりと訊くから「大丈夫,絶対売れるって!」と無責任に太鼓判押してきましたけど(笑)。
で,どこがそんなに良かったかというと。ブログっぽく試乗レポートみたいな。
やはり一番印象的なのは車体の剛性感ですな。
SPORTというグレードはサスも他のグレードに比して若干硬めにチューンしてあるようですが(欧州の標準バージョンらしい),ボディのあちこちにちょっとしたブレースやバーを入れて補強をしてあって(カタログには載ってない),これが実にいい感じ。よく見るとストラット回りやリアのゲート回りもまあまあの間隔でスポット(溶接)が打ってある。
小さいクルマをやたらと硬くすると,サスが動く以前に車体が跳ねちゃう印象がありますが,このへんが軽いわりにドッシリした感じで,サスなりブッシュなりがしっかり動いてる感触。今my嫁さんが乗ってるVWゴルフなんかと比べても,妙なゴツゴツ感がなくって実にリラックスして乗ってられる。車体の剛性だけじゃなくボディの重量バランスもいいのかもしれませんね。リアから見ると末広がりですごい「安産体形」だし (*'-')
ただ,ノーマルだとホイール⇔フェンダー間が開きすぎてて,車高が低いはずなのに高く見えます。フェンダー内のクリアランスは,上下方向には十分。最低地上高もわりに高い目の数字なので,車高はかなり下げられるんじゃないかと。
ただし,ホイールの裏側のクリアランスは非常に狭く(カタログにも16インチ車はチェーン不可と書いてある),ホイールの幅を太くするのは難しそうです。このSPORTの純正のホイールは16の6.5Jなので,少しオフセットで動かすとしても7Jあたりが限界のような気が。
標準のタイヤが45扁平なので若干路面の凹凸を拾う感じはありますが,轍に神経質になるほどではなく,おとーさん的には非常に快適。走りの好きな人ならむしろ路面のインフォメーションが分かりやすくっていいでしょう。まあ,普段ボーズ状態のSタイヤで走り回ってた人ですから,どんなタイヤでも快適っつーのはありますし,そもそも競技やるなら標準のタイヤはどうしたって換えるでしょうし。
エンジンや動力性能も数値のわりに優秀に感じました。
試乗車は7速CVTだったので5速MTとはだいぶ違うと思いますが,セールスさんとおしゃべりしながら走ってるとあっという間に車速が80-90kmになってて何度も焦りましたから,日常的な加速性能は全く問題ないでしょう。
ただ,残念ながら競技レベルから言うと「吹け上がりが軽い」という印象はなかったですね。まあホンダの名機B18Cと比べる方が間違ってますが。加速がいいのは,車体が比較的軽いのと,CVTがうまくエンジンの特性をカバーしてる面があるでしょう。まあ,この辺はフライホイールを替えるとだいぶ印象が変わってきますし,MT車に乗ってみないとエンジンのホントの素性は分からないけど。
エンジン音は「すごく静か」という評判も聞いてましたが,回せばそれなりの音がしましたから,特別静かということはないでしょう。でも車内で普通の声量でしゃべることができますから,不惑インテ号のような競技車両と比べると雲泥の差ですな。
エンジンルームの中は結構スカスカで,これならタービンつくやんか,と思ったのは私だけじゃないでしょう(笑)。ラジエター裏は広く開いてて,熱の逃げは良さげ。バッテリーのサイズは結構大きめで,これは2輪用にすればある程度軽量化できそうです。
エアのインテークはフロントのグリルからで,ここはラム圧をうたうエアインテーク関連製品が必ず出るでしょう(笑)。N車では使えませんが。
ステアリングや旋回性能は,これまた非常にGOOD!です。
ステアリングは確かに軽いけど,安い小型車にありがちなオモチャのような軽さではなくて,ある程度の手応えを保ったしっかりした軽さ。高速巡航時にはセンター感もしっかりあって,フラフラした感じは皆無。このあたりの切り替わりも自然で急にステアが重く/軽くなるようなこともない。車速感知の設定もうまくできてますな。
ステアの切れ角は結構大きいです。低速だとスパッと大きく切れます。
ロールも自然で,ターンインの姿勢は安定してます。試乗ですからリアが出るほどの走りはしてませんが,この感じだとリアの出方もコントロールしやすそうな予感。ある程度パイロンを鋭角に回る設定でも,規制がなければサイドを引かずに回れる場面がありそう。
指示器のレバーや各種ボタン類は操作感がカチッとしてて実に心地よい。
このへんがぐにゃっとした感じだと途端に気持ちが萎えますが,指示器がカチッと決まるだけで,「さあ曲がるぜっっ」と気合いが入ります。
ステアからシフトまでの距離は近く,シフト操作はやりやすそう。試乗車はCVTだったのでパドルシフトでしたが。サイドの位置も左手を自然に下におろしたところにあって,サイドターン時の操作性も悪くなさそう。
ブレーキもよく利きます。一時のマツダ車によくあったようなカックンブレーキではなく,タッチは自然で,踏めば結構リニアに利くって感じです。実はリアはドラムなんですが違和感全くないですね。サーキットをがんがん周回するような走り方をしない限り問題ないでしょう。
ABSの利きもこんなモノでしょう。ABSを利かせながらサイドがちゃんと利くかどうかは未確認。試乗車でそこまでできまへん(笑)。
さて車内は...想像してたよりもずっと広いやんかぁ (*'-')ウフフ
そこそこ身長のあるオッサン2人が並んでドライブしてても全く窮屈さは感じませんでしたよ。まあ一抹の寂しさは感じましたが。いずれにせよ,これで「狭い」って言うヤツは一生バカでかいミニバンにでも乗ってなさいってこった(をいを
もちろん後席は,「広い」ってことはないですな。
でも座高の高いおとーさんが座ってても頭上には十分クリアランスがありましたし,膝がフロントシートの背面に接触するものの,身動きも出来ず圧迫感で過呼吸発作起こす,ってほどのことはない。まあ30分程度ならガマンしようかなっていう程度。小学生ぐらいの子供ならもっと長時間乗ってても問題ないでしょう。
トランクスペースも,もちろん「広い」ってことはありませんが,コンパクトカーならこんなもの,ヴィッツなどの競合車と比べても同じ程度のものでしょう。リアシート倒してタイヤ4本と工具類,ジャッキ・ウマなど積めるかどうかギリギリって感じ。家族でキャンプに行くのには,かなり荷物を選ぶ必要がありそうです。
内装の質感は,昔のホンダ車と比べりゃ上出来ですよ,奥さん(笑)。不惑インテ号の内装なんてそりゃもうひどいモンでしたから。おとーさん的には十分及第点です。
忘れてましたが,もう1つ特筆すべきは「見切り」の良さです。
フロントの視界の広さは言うまでもなく,サイドウインドーのフロント側の下端が低くなっていて,斜め前方の見切りが非常にいい。これならバケットを入れて座面をかなり下げてもサイドターン時のパイロンの見切りは良さそう。大き目のドアミラーは競技にはちょいと邪魔ですがね。
競技にはあまり関係ありませんが後方の視界も良好です。
で,リアのワイパーって軽量化のために外しても規定違反にならないよね?
最後にもう一度,おっさん2人でクルマの回りをぐるぐる回りながらデザインを褒め称えます。
カッコいいです。すげえカッコいいです。
強いて文句言うなら,フェンダーのすき間と,マフラーがしょぼいことぐらい(笑)。
フェンダーのすき間はどうせ車高下げますからいいんですが,N車はマフラー替えられないからなぁ... (;´д⊂) せめてSPORTには最初からマフラーカッターぐらいつけといて欲しかった。
ま,でもそんなことは瑣末も瑣末。
少なくとも,街乗りメインで時々ワインディングを走る程度なら,実に楽しい日々を送れそうな予感に満ちたクルマです。しかも維持費・ガソリン代が安くて経済的だし。
このクルマなら,小さくて非力でもいい! 絶対に楽しい! 惚れたぜ!
迷ってるアナタ。
買い,ですよ。
後悔はしません。おとーさん,非常にお勧めのクルマです。
・・・・・・
さあ,すっかりアクセラからデミオの方に気持ちが動きつつあるおとーさんですが。
問題は,本当にジムカーナの競技ベース車として使えるのかどうか。
もちろん,実際に勝てるかどうかはドライバーの腕次第ですが,少なくともクルマのスペック的にライバル車達と肩を並べて競えるだけの地力があるのかどうか,です。
来年からN1クラスが1500ccまでの排気量になったなら。
ライバル車として思い浮かぶのはまず新旧のヴィッツRS。旧型スイスポ(スイフト・スポーツ)とコルトの1.5C。それとフィットの1.5A・1.5S,ぐらいかな。これらのクルマ達は比較的新しく,コンセプトやスペックもデミオとそれほど変わらない狭義のライバル車達です。
ところが,もし年式や最低重量の制限がなかったらここにGA2シティや1500のCR-Xが入ってくる。このあたりの旧車が出てくると,最近のクルマと比べて車重がベラボーに軽いので,よほど腕に差がない限りデミオに勝ち目ないです (;´д⊂)。
また,駆動方式に制限がなく,ロータリー係数が1.0のままだったら,何とRX-8がN1クラスに入ってくる(正味の排気量は1308ccだからね)。車重はタイプSで1310kgとだいぶ重くなりますが,何せ出力は250psですから,フルパイロンコースならともかく,高速コース設定になるとまるで車格が違います。
これらのクルマの基本的なスペックの比較は下記の通り。
車名 | グレード | 型式 | 車重 | 出力 | トルク | PWR | TWR | 最小回転半径 | 純正タイヤ |
デミオ | SPORT | DE5FS | 1000 | 113 | 14.3 | 8.85 | 69.93 | 4.9 | 195/45-16 |
ヴィッツ | RS | NCP13 | 960 | 109 | 14.4 | 8.81 | 66.67 | 5.3 | 185/55-15 |
ヴィッツ | RS | NCP91 | 1030 | 110 | 14.4 | 9.36 | 71.53 | 5.5 | 195/50-16 |
スイフト | 1.5スポーツ | HT81S | 930 | 115 | 14.6 | 8.09 | 63.70 | 5.3 | 185/55-15 |
コルト | 1.5C | Z23A | 990 | 105 | 14.4 | 9.43 | 68.75 | 4.7 | 175/65-14 |
フィット | 1.5A | GD3 | 990 | 110 | 14.6 | 9.18 | 69.18 | 4.7 | 175/65-14 |
シティ | 1.3 CZ-i | GA2 | 760 | 100 | 11.6 | 7.60 | 65.52 | 4.6 | 175/60-13 |
RX-8 | Type S | SE3P | 1310 | 250 | 22.0 | 5.24 | 59.55 | 5.3 | 225/45-18 |
上記の通り,シティの軽さとRX-8のエンジンスペックは完全に別格・異次元で,それ以外のクルマのスペックはほぼどんぐりの背比べ。
旧型スイスポが軽さを生かしてわずかに他をリードしてる感じはありますが,使えるタイヤのサイズや最小回転半径などではデミオにも利があり,シティとRX-8が出てこなければドライバーの腕や細かいセッティングの差で面白い勝負が出来そうです。
もちろん,シティはタイヤのサイズとノーマルパーツの調達に(N車両ならば吸排気系はノーマルパーツが必要),RX-8は車重と小回り性に弱点があり,コース設定によっては十分勝負になるかもしれませんが,関西のジムカーナで主な舞台となるカートコースでは,そのままではRX-8がぶっちぎってしまう可能性が大か。もちろんパイロン主体のコースならシティが独走してこれまた糸冬了。
シティなどの旧車やRX-8の出走を制限しないのだったら,条件がイーヴンになるような何らかの工夫がないと,一方的なワンサイドゲームになってしまって,せっかくの新しいレギュレーションなのに実につまんないことになっちゃうかも。
といって,「古いクルマは出てくんな」っていうのも,すでに給料から介護保険料引かれてるおとーさんとしては抵抗感じる(ジジイってこと)。何かいいアイデアないでしょうかね。
・・・・・・
次に。
ヴィッツ,スイスポ,フィットなど狭義のライバル車の中でデミオにアドバンテージはあるのか?
上記のように数値上の動力性能からは旧型スイスポが若干リードしてる感じはありますが,「頭一つ抜けてる」ってとこまでは行ってないか。
デミオのSPORTグレードは,もともと完全新設計の高剛性ボディに,さらに補強を入れてるのが売り。実際におとーさんが試乗してみて,これまでに乗ったことのあるヴィッツやフィットと比べると,車体のしっかり感はだいぶ「違う」ように感じました。サスはどっちにせよ競技用のモノに替えますので(発売されればだけど),クルマの基本骨格がしっかりしてるかどうかが非常に重要じゃけんね。
ステアリングの操作感や,実際の小回り性能も,他車に比べると「絶対負けてない」と思いましたね。特にステアがスパッと切れる感じは快感でした。車高が低く,クルマの重心が低いことも絶対,旋回性能にいい影響を与えてると思います。
問題はやはり「重量」とシフトのつながりかなぁ...
デミオは「軽くなった」とは言えちょうど1トン。旧型スイスポと比べるとそのままでも70kgの差があります。もともと軽量クラスですからこの差は非常にでかいです。加減速のたびにこの差がジワジワと効いてくる可能性はあり。この点ではヴィッツの旧RSも960kgだから結構有利。
デミオのガソリンタンク容量は41リットル。これにガソリンの比重値をかけて約32kg。N車両ではだいたいこの数字まで軽量化OKということになってるので,ギリギリまで軽量化して最低重量は1000-32 = 968kg。バッテリーその他レギュレーションの許す限りこれに近づけるべく軽量化に勤しむ必要アリですな。ライバル車だってさらに軽量化してくるわけだしね。
重量を重視するのなら「SPORT」グレードではなく「15C」という1500ccのもう1つのグレードを選ぶという手もあると思います。これならエンジンは一緒だけど最初からエアロやフォグがついてないために車重が980kgと20kgほど軽い。ライバルの車重に若干近づきます。
でもSPORTにはボディの補強やサス回りの補強が入っていることを考えると,同じ補強を15Cに後からやると規定違反になる可能性あるし,ついてくる純正タイヤが14インチにまで下がってしまうし,おとーさんならSPORTを選ぶかな。
カタログから見る限りデミオの5MTシフトのつながりは今一つの感じです。
1速がややローギアードで2速以降が全部若干ハイギアード。つまり1速⇔2速というジムカーナで一番大事なところのつながりが他車と比べてやや離れ気味ってこと(泣)。
車名 | 1st | 2nd | 3rd | 4th | 5th | Final | Red回転数 | タイヤ外径 | 1速最高速 | 2速最高速 | 3速最高速 |
デミオ | 3.416 | 1.842 | 1.290 | 0.972 | 0.775 | 4.105 | 6500 | 586 | 51.2 | 95.0 | 135.6 |
ヴィッツ | 3.166 | 1.904 | 1.392 | 1.031 | 0.815 | 4.312 | 6400 | 602 | 53.2 | 88.5 | 121.0 |
スイスポ | 3.250 | 1.904 | 1.407 | 1.064 | 0.885 | 4.388 | 7000 | 602 | 55.7 | 95.1 | 128.7 |
フィット | 3.142 | 1.750 | 1.241 | 0.969 | 0.756 | 4.111 | 6300 | 585 | 53.8 | 96.6 | 136.2 |
ヴィッツは旧RS(NCP13),スイスポはもち旧型,フィットは1.5Sの数字です。
上の表のように,各ギア比と純正タイヤの外径サイズ,タコメータでレッドゾーンに入る回転数などから計算すると,デミオは最も1速が吹けない上に,2速・3速(それ以上も)が高い目のギア比になってることが分かります。
1速で吹け切った状態から2速に入れた時の回転数を計算すると,ヴィッツ(NCP13)は約3850rpm,旧スイスポが4100rpmとなるのに対してフィットとデミオは約3500rpmまで回転が落ち込んでしまいます。
スイスポは最大トルク発生がちょうど4100rpmなので,2速に入った瞬間,正にばっちりのギア比になっているのに,デミオは最大トルク発生は4000rpmで,たとえ電光石火のシフトを敢行しても,2速に入った瞬間,一番おいしい回転数から500rpm離れてる。
もちろん街乗りでは,むしろこのギア比の方が,1速の発進加速が良く,その後は速度が伸びるので,使い勝手も燃費もGOOD! でもジムカーナをやる上では,おそらくファイナル変更は必須のメニューになってくるでしょうね(もっとギア比の大きなファイナルを入れて2速をローギアード化)。どこかのチューニングショップがLSDと合わせて開発してくれるといいんですが...
・・・・・・
結論です。
新型デミオはその高いボディ剛性と優れた旋回性能で,新N1クラス(1500ccクラス)の主役になり得る可能性は十分にあると思われます。ただし,ギアのつながりはイマイチのためコースによっては苦戦する場合もあるでしょう。このあたりのウィークポイントを埋めるためには駆動系のジムカーナパーツ開発が必要でしょうね(特にファイナル)。ギアのつながりさえ改善できれば現行の1500ccクラスの中では「最も速い」クルマになり得ると思います。
ただ,結局そのあたりはドライバーの腕次第ですし,このままでも「最もカッコいい」「最も楽しい」クルマには十分なってるので,おとーさん的には絶対「買い」ですがね ( ̄ー ̄)
おとーさんとしては,パーツの開発を楽しみにしながら,来年の新レギュレーション情報を集めながら,惚れたあの娘をモノにする日を待ち続けたいと思います (*'-')
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