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さあラジアルタイヤで全日本を走ろう


さて,もうあちこちでブログのネタにもなっておりますが,先日JAFから来年度の全日本ジムカーナ選手権統一規則が公表されました。

その中で最大の目玉は

「PNクラスのラジアルタイヤ(非Sタイヤ)化」

ですよね。


因みにPN車両規定では,タイヤについて下記のような記載になっています(以下JAF国内競技車両規則第3編スピード車両規定から抜粋)

・・・当該自動車製造者発行の量産車カタログの同一車両型式に記載されるタイヤサイズを基準とし、下記事項を条件に、サイズアップは幅を最大10mm、ホイール径を最大1インチまで、サイズダウンは数値による規制なく変更することが許される。

@ タイヤは、JATMA YEAR BOOK(日本自動車タイヤ協会規格)に記載されているもの、またはこれと同等なものとする。なお、海外規格(TRA、ETRTO等)タイヤに変更する場合、下記A、BおよびCに留意し、且つそれらを証明する資料を携行すること。

A タイヤの最大負荷能力は、同一車両型式に定められているタイヤサイズの最大負荷能力と同等以上であること。

B タイヤの静的負荷半径の基準寸法が、同一車両型式に定められているタイヤサイズの静的負荷半径の許容差の範囲であること。

C タイヤは公道走行の許される一般市販タイヤとし、競技専用タイヤは使用しないこと。

D タイヤおよびホイールは、いかなる場合も他の部分と接触しないこと。(ステアリングホイールを右または左に最大に操作した場合であっても、タイヤおよびホイールは、他の部分と接触しないこと)。

E タイヤおよびホイールは、フェンダーからはみ出さないこと(第3-35図参照)。

(以下F〜Iは略)


・・・これらは実はN車両と全く同じ記載であり,この部分だけから言うとサイズその他の規定を満たしていれば「Sタイヤでも全くOK」ということになります。


何だ,サイズは純正から変えられるようになったけど,結局Sタイヤかよ...

と思った人もいるかもしれません。


しかし全日本シリーズについてはここに「全日本ジムカーナ選手権統一規則」というのが存在し,実際の大会はこれに則って行なわれます。この中の第2条「参加車両」という項目に

「全日本ジムカーナ選手権におけるPN部門およびAE部門に参加する車両は、タイヤ接地面にタイヤを1周する連続した縦溝を有するタイヤを使用しなければならない。当該縦溝はトレッドウェアインジケータ(スリップサイン)が出るまで維持されていなくてはならない。」

という一文が加わりました。

因みに現時点で国内販売されているSタイヤはほとんどがこの「タイヤを1周する縦溝」を持っておらず,この一文によって事実上「Sタイヤを使うことはできない」つまり「普通のスポーツラジアルを使いなさい」ということになるわけです。


ああ思えば1年半ほど前,全国のライセンスホルダーに意見聴取した挙句,突然新設されたPNクラスは,S1500と同じく「比較的新しい車両で改造範囲を大きく制限する」というナイスコンセプトであったにも関わらず,SタイヤOKでしかも純正からサイズ変更が一切できないというまことに奇妙な(恣意的な?)車両規則となっていたために,ドライバーを非常に困惑させた上,参加台数を制限する結果になっていました(→3月30日のdiary参照)。

今回の規定改正によって,やっとPNクラスが本来目指していた姿になった。

おとーさんはそう感じました。


実際のところ来シーズンから全日本のPNクラスの参加台数は非常に増えることが予想されています。有名ショップ,有名選手がPNクラスに移行するという噂もちょくちょく聞きます。

タイヤとは関係ありませんがロールバー(ロールケージ)が「必須」ではなく「推奨」になったことも新規の参加者には歓迎されるべきことでしょう。個人的には,現在のラジアルタイヤはSタイヤとそれほど性能差はないため,全日本のハイスピードコースを走る車両には安全のためロ−ルバーを組んでおいた方が良いとは思いますが。


・・・・・・

ところが。

この規定には落とし穴が...ないこともない。

「タイヤを1周する連続した縦溝を有するタイヤ」と聞いた時に「あれ?」と思った人はいるでしょう。そうです,これをもって使用禁止タイヤの定義とすると,まず

1.TOYOのR1Rが使えません

TOYOのR1Rというタイヤは,カテゴリーとしてはSタイヤではなくスポーツラジアルに分類されるはずですが,低温やウェットに滅法強い一方,他のラジアルよりも減りが早いため,いろいろと毀誉褒貶の絶えないタイヤです。ただ,かなり山が減ってもしっかりグリップしますし,値段も他のラジアルより安いため,決してお財布に厳しいタイヤではなく,特定メーカーの縛りのないフリーランスのラジアルドライバーにはとてもありがたいタイヤでした。

独特のフィーリングが「嫌い」という人もいますが,おとーさん個人は大好きなタイヤでした。4月の全日本S1500クラスで優勝させてもらったのもこのタイヤです。ただ,このタイヤは「連続した縦溝を1本も持たない」という変わったトレッドパターンのタイヤであるため,全日本のPNクラスでは使えないことになりました。


2.DUNLOPのD02GやD93Jが使えてしまう

一方でDUNLOPの旧型SタイヤであるD02Gとウェット専用のSタイヤD93Jは,明らかなSタイヤですが,タイヤの外周を1周する縦溝をしっかり持っています。

DUNLOPのタイヤカタログ参照

どちらも既にあまりおおっぴらに流通しているモデルではありませんがカタログにはちゃんと載っています。D93Jは195/55-15のサイズがカタログ記載されており,D02Gは新品では13インチしか販売されていませんが,まだオークションなどの中古市場では15〜17インチのサイズも入手できないことはなさそうです。たいていは山のあまりない中古品で使い物にならないと思いまし,ロードインデックスの関係で使えるクルマは限られると思いますが,腐ってもSタイヤ,新品のラジアルよりタイムが出る可能性もあります。

しかしD93J...懐かしいタイヤですなあ。かつておとーさんがSWに乗ってAVクラスを走っていた頃(1993年),このタイヤの山をわざと減らしてぺったんこにしてドライで乗っておりました。本当に息の長い製品ですね。このタイヤも個人的には大好きでした。


3.ADVANのA021Rが使えてしまう

これも非常に古くから存在するレイン用のSタイヤですが,今でもカタログには掲載されており,かつタイヤの外周を1周する縦溝をしっかり持っています。

YOKOHAMAのタイヤカタログ参照

あまり見かけないタイヤですが,13インチのモデルだけではなく195/60-14というわりと現実的なサイズがカタログに掲載されています。どのくらい流通しているのかは分かりませんが,カタログに掲載されている以上は新品で入手できる可能性もあるでしょう。これもロードインデックスの関係で使える車両は限られると思いますが,もし使えるということになれば非Sタイヤとはかなりの差が生じます。


4.海外製のSタイヤが使えてしまう?

これは噂でしか聞いていませんが,海外製のSタイヤには縦溝のあるものが存在するとかしないとか...現時点で存在しなくても今後出てくる可能性はあるでしょう。というかそもそも「Sタイヤ vs 非Sタイヤ」なんていう区別は日本独自のものですから,何をもってSタイヤとするか決めようとすると難しい議論になると思われます。現時点でもよく探せば,縦溝を持っていてSタイヤ並みのグリップ,磨耗性を持った公道走行可能タイヤは見つかるんじゃないでしょうか。


・・・・・・

「勝ちゃあいいんだよ!!どんな手を使ってでもなァ!!」

かつて某マンガに出てくるEG6乗りがそう申しておりましたが(笑),規定に「Sタイヤの使用を禁じる」とは書いてない以上,ラジアルでも使えなくなるタイヤがある一方,使えてしまうSタイヤが出てくるのはやむを得ないことでしょう。たとえショルダーにばっちり「Sタイヤ」と書いてあっても,1周連続した縦溝があれば,使っても全然OKなんです。

しかしここで中古のD02GとかD93JとかA021Rとか,海外製の得体の知れないSタイヤとか履いてPNクラスに出てくる選手がいたら...


...少なくともおとーさん個人からは「KY」の認定を授けましょう(既に死語?)。


それでも一人そういう人が出てきたら,他の選手もそれを真似せざるを得なくなるんでしょうね。少しでもフレッシュな中古品をオークションで落とした人の勝ち,とか,そんな不毛な戦いにならないよう心から祈っております。

せっかく盛り上がりつつあるPNクラスに水を差さないよう,タイヤの選択で「周囲を出し抜いてやろう」などと考えず,普通のスポーツラジアルで正々堂々と全日本PNクラスを走って欲しいですね。おとーさんも,何年か後には必ずみなさんの後を追いますよ。


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