氷解
もう2月も下旬ですが今年初めてのdiaryですね。
今更ですがみなさま,今年もよろしくお願いします。
さて,岡山国際の1コーナーにてスピンした他車の特攻を受け入院中だったデミ助が,2ヶ月半ぶりにやっとおとーさんの元に帰ってきました。
うれしいか?
もちろんそりゃうれしいっすよ。めちゃくちゃうれしい。
ただ,何か微妙な心境なんですよね...
「クルマ直ってるよ」という連絡をいただいて,以前なら無理矢理有給取ってでも翌日には引き取りに飛んで行ったはずのところ,実際に甲賀まで行ったのは1週間後の週末でした。まあ今は自営業なんで有給なんて取れないというのもあるけど。
久々の対面。
さすがファインアートさん,レース車両の扱いは絶妙。直すべき所はしっかり直し,放っておいていいところはしっかりそのまま(笑)。細かいところまでこちらが指示しなくても,かかるコストやドライバーの乗り方をよく理解してもらった上で,痒いところに手が届く対応をしてくれてる。
つまり,バンパーの細かい擦り傷なんてそのまんま(笑)。外装は部分的にタイラップ固定。エアコンはまだ着いてるけどウォッシャー液のタンクはもうない。でも傷んだ左フロントの足回りや駆動系,アライメントなんかは超バッチリ直ってる。
パッと見なかなか漢のクルマになってます。しかもサイレンサーがくたびれてきてマフラーからは爆音(汗)。
昔,ジムカーナ公式戦で走ってた頃は「男の子」という感じのデミ助でしたが,思春期になった頃からグレ始めて,今はすっかりやさぐれたオッサンの風情(笑)。
2ヶ月半ぶりの愛車。狭いバケットに身体を潜り込ませて走り出すと,さらにこいつが漢のクルマであることを実感します。
こぶし一個分もステア切り込めばスッとノーズが向きを変える足回り,少し煽ればウォン!と回転が跳ね上がるエンジン,ペダルに足を乗せればスーッと制動がかかるブレーキ,しばらくマニュアル車に乗ってなかったおとーさんには冷や汗ものの軽量フライホイールと強化クラッチの感触。全てこのクルマがガチの競技車両であることを主張してくれてます。
本当なら極めて心地よいはずのこういった感覚...しかし何故か今のおとーさんには今一つしっくり来ません。
まだ総額が決まっていない修理費のことが気になってるの?
まあ,それもあるかな。
請求書を見た瞬間にゲロ吐きそうになるか,鼻血が噴き出すか,オシッコちびるか,涙がちょちょ切れるか,いずれにせよ何らかの体液を放出することは分かってますから。
でも,それはもう覚悟はできてる。今更つべこべ言っても仕方ない。着替えはちゃんと持って行くからいいよ(そういう問題か)。
違う,違う。何かもっと違うことがおとーさんの心の中にひっかかってる。
やっと自分の手元に戻ってきた,競技車両としてほぼ完成の域にある愛車。2014シーズンはこれから。面白そうなイベントはいろいろある。まるで自分の腕の中で素晴らしい美女がうっとりした表情で目を閉じてこちらのアクションを待ってる...そんなドキドキするシチュエーションのはずなのに何か気持ちが乗らない。何かがおとーさんの心を部分的にヒンヤリさせてる。
何なんだこの微妙な気分。
デミ助に乗ってこんな気分になるのは初めて。
このクルマを持て余してる。自分がこのクルマに乗って何をしたいのかが分からない。
せっかく直って戻ってきた,ガチ競技車のこいつをどうしてやりたいのかが分からない。
走りたい? 走りたいんじゃなかったの?
そう,走りたい...たぶん走りたい。
でも,どこを走るの?
正直もうMFCTには絶対出たくない。
鈴鹿やセントラルも...今はあんまり走りたくない。
ジムカーナに戻る? 姫路戦のスケジュール出てたよな。G6もあるよな。
うん,たぶん名阪のG6には出るよ。姫路もまた走りたい。
でも何か違う。本当に走りたいのはジムカーナじゃない。
峠か? ストリートか? Fドリデビューか?
いや,もちろんそれも違う。
おとーさんはもう,ライバルと直接駆け引きしながらサーキットを駆け抜けるレースの楽しさを知ってしまった。たぶん一番走りたいのはレース。だよね?
分からない。そうかもしれない。
でも怖い。レースは怖い。
もう誰にもぶつかられたくない。もちろん自分もぶつかりたくない。
クルマは脆い。ちょっとぶつかっただけで大きく壊れてしまう。
ナンバーなしの専用車両を積車で持ち込むような体制があればまた違うかもしれない。でもこちとらサンデーレーサー。自分の普段の愛車で,自走でサーキット入りしてる。
クルマは脆い。
自分が大事にしてるものが壊れてしまう。あっけなく壊れてしまう。
自分の心も壊れる。ぶつかった相手の心も壊れる。
それはもうイヤだ。もう絶対イヤだ。
クルマはまあ,それでも大金はたけば直る。体液出しながらでも直る。
でも,壊れた心はなかなか治らない。
自分の心は,まだそれでも何とかなる。っつーか,何とかしろ。
でもぶつかって壊れた相手の心や,相手との関係は,自分ではなかなかどうにもならない。
どーすんだ。走るのか。どこを走るんだ。それともやっぱりもう止めるのか。
...デミ助が戻ってきてからも2-3日,そんな悶々とした気持ちを抱えてました。
ある夜,仕事が終わってから職場で何気なしにネットを見ていた時に,みんカラの存在を思い出しました。そういや,みんカラも2ヶ月以上全くアクセスしてないな。
それは,やっぱり,何かが怖かったから。
何が怖いのか...それはたぶん,壊れた心の領域に関するもの。
自分の壊れた心,ぶつかった相手の壊れた心。そしてひょっとしたら周囲にいた人の心も壊してしまってたかもしれない。
卑怯かもしれないけど,そういった壊れた心達に接するのが怖かった,逃げてた。壊れた心は毎日仕事でいっぱい接してる。プライベートでまで向き合いたくなかった。すんません。
ドキドキしながら2ヶ月ぶりに見るみんカラの世界。久しぶりに戻ったオンゲーの世界みたい。
しかしそこに広がっているのは2ヶ月前と何も変わらないクルマ好き達の日常。
走ってるヤツ,いじってるヤツ,働いてるヤツ,ひたすら食ってるヤツ(笑)。こちらがログインするかどうかなんてことに関係なく繰り広げられているRPGの街中の光景のよう。そのへんをウロウロしてみて,何も変わらない,その変わらなさになんだかホッとしたり,ちょっと寂しかったり。
少なくとも,恐れていた「壊れた心」はもうそこにはない。ああ,良かった。
ほーっと安堵のため息を一つついて,みん友さんの最近の投稿を下に下にスクロールしているとその時,心臓をグッと鷲づかみにされたような衝撃を受けて手が止まった,息が止まった。
油断してたよ。
そう,それは岡山国際の1コーナーでぶつかった彼のブログでした。
しかもそれはちょうど1-2日前の記事。
中を見るか見まいか...しばらく迷った後,思い切ってブログをクリック。記事を読みます。
彼もちょうど2ヶ月半ぶりのみんカラ復帰だったよう。何というタイミング!
彼にも言いたいことはいろいろあるだろう。でもそれはグッと飲み込んで,彼はもう一度おとーさんに謝ってくれていた。
そして自力で愛車を直している悪戦苦闘の様子がそこには記されていた。
ドライブシャフトがなかなか抜けない。
抜けたと思ったら中間シャフトまで抜けてしまってミッションオイルどばどば。
そしたら今度はAT用のシャフトが合わない...
...読んでるうちに,何故か腹の底から愉快な気分がこみ上げてきて,気がついたら声を上げて大笑いしてました。
彼は直してる。自分で直してる。
壊れた愛車を直し,そしておそらく壊れた心も。
やるじゃん!
もちろん彼の心の内は彼にしか分からない。
今回クラッシュした跡なんかキレイに無くなるよ...なんて勝手なことは言えない。何らかの傷,バンパーの擦り傷ぐらいは残るかもしれない。
でも,でもきっと彼はまた走り出すだろう。
壊れたクルマと壊れた心を治して。
良かった。
本当に良かった。
そしてその時,おとーさんの心のどこかで凍り付いていたモノが解け出し,体液になってヘソから...いやもう体液出さなくていいから(笑)。
二十四節気では2月20日頃を「雨水」と呼ぶらしい。空から降ってくるものが雪から雨へと変わり,凍てついた地上の雪氷も融け始める季節。
おとーさんの心の中でもやっと季節が動き出しました。
走るんだ。そうだ。本当は最初から答えは出てた。
壊れることを恐れて固まってても先へは進めない。デミ助が手元にある限り,スロットルを踏み,ギアを入れて走りだそう。また仲間達に会うために。表彰台に立つために。
セントラル・ラジアルチャレンジシリーズのストリートコンパクトクラス。
おとーさんの主戦場は今年もここです。
今年からNAロドスタとスイスポが排気量1600ccながらこのクラスに参戦可能になります。昨年以上の激戦になるのは必至。
昨年のシリーズチャンピオンが「ぶつかるの怖いから」と逃げてるわけにもいかないでしょう。
行け,走るんだ。
壊れても,壊れてもまた直すんだよ。クルマも心も!