ジコマンで行こう! 〜2012近畿地区戦第7戦〜
朝晩ちょっと涼しくなってきましたね。
今年は猛暑というよりも集中豪雨とか竜巻とか異常気象の方が印象に残る夏でしたが,どんなに異常な夏でも必ず終わりは来て,そして秋になるんですね...
さてさて,もう10日も経っちゃいましたが,先週末のレポートを書かないといけません。
前回の競技会から2ヶ月が経ち,再び近畿のジムカーナ戦士達が鈴鹿南コースに集結,地区戦&ミドル戦の合同の大会が開かれました。地区戦はこれが7戦目。シリーズは全8戦ですから,ラス2の戦いになりますね。
8月の第6戦はエントリーを見送り,お盆には長距離ドライブ旅行に出たりして,もう一度自分にとっての「走る」意味を問い直してきたオッサンも,2ヶ月ぶりにパドックにデミ助を並べることになりました。
これまで何度も書いてる通り,気合を入れてスタートした今シーズンでしたが,第3戦で2位表彰台に乗った以外は悉く下位に低迷。特に前回の第5戦の鈴鹿南なんかは,攻めた結果とはいえ2本目でPT食らって久々のビリになってしまい,さすがにもう走るのがイヤになってきてました。
しかしお盆の家族旅行で,高速を乗り継いで北関東まで走って行って,碓氷峠とか,いろは坂とか,昔から一度行ってみたいと思っていた有名な峠を走ってみて,自分の中に出てきた答えは,
「やっぱりクルマの運転は楽しい」
という当たり前のことと,
「勝てなくっても,走ってていいんだ」
ということ。
いろは坂を上がって中禅寺湖畔でぼーっとしてる時に,自分に対して「勝てないことはダメなことだ」,「勝てないヤツは根性がないんだ」,「勝てないヤツは努力が足りないんだ,ヘタレなんだ」というスポ根的な強い思い込みがあることに気がつきました。
でも実際,仕事の環境が変わり,生活の環境も変わり,少しずつ年齢も重ねて行く中で,今の自分にはかつてのような戦闘力はもうないわけで,それでも「勝たねばヘタレ」「勝たねば恥」と思っていては辛くって走れないのも当然。
もういいんだよ。勝てなくっても。
勝てないなら勝てないなりに楽しんで走ればいい,今のシリーズ戦で楽しめないなら別のシリーズを走ったらいい,別にとことんデミオにこだわらなくってもいい,自分が楽しいと思える走り方をすればいい...
そういったことがやっと自分の中で実感をもって理解できるようになりました。
またしても前戦から約2か月,タイヤは履きっぱ,ただの一度もスポーツ走行をしないまま,峠すら走ってない状態でぶっつけ本番ですが,いいんだよそれで。それが今の自分の精一杯であれば。
・・・・・・
別に今さら開き直ったというわけでもありませんが,上記のような今期これまでになかったようなスッキリした心境で当日を迎えました。
しかしお天気の方はどうもスッキリしません。頭上には青空が出ているのですが,東西の方角の空には「竜の巣」のような黒々した雲が聳え立っており,不穏な雰囲気をかもし出してます。
発表されたコースは,「広場での簡単なパイロンセクションを挟んで鈴鹿南コースを完全逆走」という,これまでに見たことのないパターン。これだけコース全体が逆走ならコース慣れはほとんどカンケーなし。みんなイーブンの条件で走れます。
しかも,いつものジムカーナ枠のスタート地点から最終コーナーに向けて走り出し,コークスクリューに逆に突っ込んで行くところ,S字の逆走,1-2コーナーの逆送など,逆向きに走ることでわくわくシビレる設定になっているところが随所にある。
※画像は部会のHPからいただきました。クリックすると大きい画像を表示します。
この主催者さんはいつも鈴鹿南で「ええ〜,こんなコースを作れるんだ!」というコース設定をして下さる。鈴鹿南を隅から隅まで知り尽くしているからできる設定でしょう。主催者さん本当にありがとう。
朝一番はウェットでしたが,慣熟歩行の頃には路面は完全なドライに。ところがブリーフィングの途中からまたぽつりぽつり振り出し,結局1本目はパラパラ小雨の中の走行。しかしまだ路面は乾いており何とかドライセッティングで走れそう。
とにかく勝ち負けカンケーなし。せっかくのシビレるコース。初めて出会った峠道をわくわく攻めてるつもりで精一杯楽しもう。さあ,スタート!
しかーし。何せただの1回も練習をしていない,峠すら走ってない,正真正銘2ヶ月ぶりのジムカーナ走行なんで,ブレーキングポイントがさっぱり分からん。ステアの切り込みポイントも,スロットルの開け具合も全てが探り探り。
それでも長年培ってきた基礎能力というか自分の底力に期待して自分なりに精一杯攻めます。
コークスクリューの逆走は「うひょ〜!」という感じで飛び込んで行きますが,ブレーキングは若干甘い目。ただ必死でクルマの向きを変えてスロットルを床まで踏み抜きます。
アドバンコーナーに逆に入るところでは一瞬リアがずりっと行きますが,ひるまずにステアで修正してコーナーに飛び込み,広場まで駆け上がります。
さあ広場でのパイロンセクション。案の定,右ターンは上り勾配でうまく回らず失敗ターンになりましたが,そのままグリップで立ち上がり,最後の右は無難に回ってさあS字へ。
S字は順走でも逆走でも大好きな部分。縁石をガッツリふんで思い切って走り抜けます。走りながら「よっしゃー!もらったー!」と思わず叫んだ会心の走り。3-4コーナを抜けてストレート。そして3速全開から2コーナーへ。
もうちょっとブレーキを残してもいけそうな感じでしたが,2コーナーから1コーナーへは一瞬のスロットルオフで抜け,スタート方向まで行って左180度ターンをしてゴール!
この時点でのトップは1分23秒台。慌てて窓を開け,アナウンスのI東さんのタイム読み上げに耳を傾けます。1分24秒? 25秒? ひょっとしてトップ?
しかしトップタイム更新のファンファーレは鳴らず,それどころかタイムは1分27秒台。
1分27秒!? 遅っそ! 思わず自分で突っ込みましたよ(笑)。
ひょっとしてどこかで黄旗を食らったのか? ペナルティ5秒加算で27秒台になったのか?
いやいや,そういうことではなく,素で1分27秒台。も全然だめ。お話になんない。
しかも深刻なのは自分で遅いという自覚がないこと。一生懸命攻めて,ターンの失敗以外は自分でほぼ理想通りの会心の走りをして,それでトップから4秒落ちってこと。要するに自分の中で速い走りのイメージを全く作れていない。自分の走りを客観的に評価することもできてない。
いかに2ヶ月ぶり,ぶっつけ本番のスポーツ走行とはいえあまりにひど過ぎ。人間っていったんダメになると本当にもうダメですね。坂道を転がり出すと止まりません。ずい分長いこと走ってきましたが,もう完全に初心者レベルまで落っこちてしまいました。
・・・・・・
その後,雨脚は強くなり路面は一気にウェットに。空は真っ暗になり,一瞬,こちらの気持ちも真っ暗になりかけましたが...
まあいいか,しょうがない。
どこからかそういう気持ちが,雲間から陽が差込んでくるように心を照らしました。
そうだった,そうだった,忘れてた。
いいんだよ,もう,勝てなくても。
走ってるだけで十分。オッサンよくがんばってるよ。
走ってて楽しかったらいいじゃん,ワクワクしたらそれでいいじゃん。
自己満足結構。自分の楽しみのために走ろうぜ。
そう考えてるうちにすーっと気持ちがラクになりました。そうだ,苦しい気持ちは,悲しい涙は,いろは坂に置いてきたはず。楽しもう。楽しもう。自己満足で行こう!ジコマン万歳!
やっと勝ち負けを離れて,遅くても純粋に楽しめるようになってきた。周りが何秒で走ろうと,自分が今の環境の中で精一杯攻めて楽しめたらそれでよし!
いつの間にか雨も止み,実際に雲間から日が差込んできました。路面もどんどん乾いて完全ドライ。さあ,2本目いこーぜ!
2本目に向けて,とりあえず目標は突っ込むところをしっかり突っ込むこと。
特にコークスクリューの逆飛び込みを,ぬるくならずしっかり飛び込むことと,S字をガンガン縁石踏んでいくことと,最後の1-2コーナー逆送をアクセルべた踏みのままで駆け抜けること。ターンの旋回半径が...とかもう言わないの。いいんだよ,気持ち良く走れりゃ。
ということですっかり元気を取り戻して2本目のスタートラインに並びます。
さあ,わくわくしてきたぞ。
面白いじゃん。
鈴鹿南を最初から最後まで逆に走るなんてもう二度とできないかもしれない。
コークスクリューの逆飛び込み,S字の逆走,1-2コーナーをしっかり加速しながら駆け抜ける。こんな面白いコース,2本だけだけどしっかり走らせてもらえて,めっちゃ面白いやん。めっちゃ楽しいやん。めっちゃ燃えるやん。
周りのクルマが何秒で走ろうと,自分が一生懸命コースを攻めて,楽しんで走れたら,今日ここへ来た意味は十分ある。
さあ,行け。走れ。自分のために。
スタートしてコースに入ったところで,つい癖で後を振り返ってますが,いいんだよ後見なくっても。これはジムカーナだから。他のクルマが後から走ってくることないから(笑)。
最終コーナには1本目よりタイトなラインで入ります。早めにスロットルを踏み抜いて立ち上がりコークスクリューへ。
コークスクリューの入りでは精一杯ブレーキを薄くして突っ込みの速度を高めます。そして左の縁石を踏んだところあたりでフルスロットル! デミ助は右の縁石でちょっとだけ跳ねながらも奥のヘアピンに向かって立ち上がっていきます。
よし,よし。今の自分にできる精一杯の突込みをできたぞ。
奥のヘアピンを回り,アドバンを駆け上がって広場のターンセクションに突入。ここも「タイムが...」とか言わず,1本目よりも細かくサイドを引いて「楽しく」走ります。やはり登り勾配の右ターンはきれいに回りませんが,まあいいじゃん。
S字の逆走はペナルティを恐れずがんがん縁石を踏んで行きます。そしてストレートで3速全開からフルブレーキング,2コーナーの途中からスロットルはべた踏みでそのまま1コーナーをクリア! よし行けた!
最後のストレート上の左ターンはサイドを引かずグリップで,立ち上がってすぐにゴール。途中でネックガードが外れて視界の隅でペラペラしてますが(汗)気にせずに走り切りました。
※途中からネックガードが外れてペラペーラ(汗)。
ぜいぜい息が切れ,ドッと汗が吹き出てきます。窓を開けてタイムを聞きますがアナウンスのテンションは低く聞き取れません。ああやっぱ全然ダメだったな...と思ったら,そのままパドックへ直行ではなくいったん車検場に呼ばれます。
ええっ! ひょっとして3位までに入った? でも全然アナウンスされなかったけど...
いえいえよく見たらN1.5クラスの全てのクルマが車検場に入っており,いったん全員が車検場に入る段取りになってただけ,ということがすぐに判明。「なんだ,やっぱりな」と苦笑い(笑)。
結局,パドックに帰ってから人に聞くと,どこでやらかしたか分からないけど脱輪でペナ5秒ついていまーす,生タイムも1本目より1秒上がったものの順位はしょぼーん,という結果だったらしい。
一瞬,また,ガッカリした感情になりかけます。
しかし。
まあ,いいや。
タイムは遅いし,走りはダメダメだけど,自分の精一杯の走りができたし何より楽しかった。自己満足だけど「やったぜ!」「これでどーだ!」っていうシビレる感覚を味わえた。
それでいいんよ。それで十分。今日ここへ来た価値はある。
満足満足,余は満足じゃ。
・・・・・・
自己満足ができるかどうかは「自分がどれくらいを求めるか」「どのくらいで『足りた』と思えるか」にかかってますよね。
これまでの自分を振り返ってみるとつくづく「求め過ぎていた」と思います。
時間やらお金やら手間やら家族の気持ちやら,いろいろなものを勝手に犠牲にして「これだけいろいろなモノを犠牲にしてるんだから」と勝手に見返りを求める...いや,そりゃ,求めて得られるものなら求める意味もあるけど,求めて得られないものを求めてもしょうがない。
そして「勝つ」という,今の自分にはどうしても得られないものを求めていろいろ無理をしていく中で,一番大事な「楽しさ」さえ犠牲にしてた。自分の中に「勝てないのはヘタレ」という思い込みがあったから。でもそれって間違ってるってことにやっと気づいた。
まだまだおとーさんは「吾唯足知」の境地には至ってませんが,ちょっとだけ自己満足が上手になったかな。
※パドック脇の木立では去りゆく夏を惜しんでツクツクホーシの大合唱。
さあ表彰式。
相変わらずおとーさんは地べたに座ってライバルに拍手を送る側でしたが,これまでのような引きつった笑いではなく満面の笑みで友人たちを祝福できました。そしてそういう自分にも拍手をしてやりたい気分になりました。やっとちょっと大人になったやん,オッサン。
今回の戦いで自分が何かの壁を越えた確かな手応えがありました。
2009年のJAFカップの時に感じた「全日本レベル」という壁ではなく,むしろその壁を諦めて撤退しようとしたら背後を阻んだ新たな壁。それでも走り続けようと思うと絶対に越えなきゃならなかった壁。
大丈夫。もう大丈夫。
まだまだ走れる。楽しめる。
順位なんてキニシナイ。今なら笑って最下位になれる(おーい)。
自己満足大いに結構。これからはジコマンで行こう!
まだまだ自分は走っていける。
遅いけどね(笑)。