寝ないオヤジは育つ?〜2012近畿地区戦第3戦〜
その後,連休後半は嫁さん子供の用事や書類仕事に追われ,連休明けの週は朝から深夜までアホのように働かなければならず,練習どころかほとんど準備らしい準備もできずに近畿ジムカーナ地区戦第3戦の朝を迎えました。
ちょっと前から音が大きくなってきて気になってたドラシャのチェックも結局できず,いつもイベント前に必ず行うリアドラムの掃除もできず,大会前々日の金曜深夜,家族が寝静まった後,こっそりガレージに行って汚れまくってたプラグとエアクリの交換を済ませられたのが精一杯。
連休中には同じ名阪Cコースでイベントもありましたし,数日前の水曜日にも練習会があったようです。それに今回の地区戦は前日の土曜日に前日練習会もありました。ライバルの中には入念な走り込みをしている人もいるでしょう。しかしこちらは例の「月に1回しか走りに行けない」という嫁様からの呪いのため練習会なんて参加できるわけもなし。いつもと同様,今回も当日2本のみのぶっつけ本番です。
ただ,練習に行けなくても,仕事がアホみたいに忙しくっても,熱意されあればぶっつけ本番でも何とかなる,そう信じてこれまでも何度か表彰台のてっぺんに立ってきました。とにかく今の自分にできることを精一杯やるのみです。
ライバル達がせっせとコースを走り込んでいるにもかかわらず,自分は仕事や家庭の事情で全く走れない時,いったい何が自分にできるのか...おとーさんが重視するのはイメージトレーニングです。
物理的に走れないのであれば,脳内で走るしかありません。脳内で走る分にはエントリー費もかかりませんし,タイヤも減りません。嫁さん子供に白い目で見られることもありませんし,走ろうと思えば職場で仕事しながら走ることもできます。もちろんあんまりやってたら仕事は進みませんが(笑)。
ただ,単に走ってる場面を想像してるだけじゃ「トレーニング」にはなりません。ここで必要になってくるのがロガーのデータと自分の車載動画です。
例えば特定のコーナーについて,まず自分のヌルい車載動画を何度も繰り返し再生して脳に焼き付けた上で,ロガーで修正点を確認し,脳内で修正した走りをイメージするわけです。修正イメージを何度も何度も繰り返す中で,最初はスロー再生で,徐々に通常再生にしていきます。そして最後はコースの最初から最後までをストップウォッチ片手にイメージで走ってみて,実タイムとの差を測ります。差が2〜3秒以内に収まるようになれば上出来です。
このやり方で苦手なコーナーの修正練習もできますし,得意なコーナーをさらに磨くこともできます。急にリアが出た時のイメージで危機回避の練習もできますし,クルマが思いもよらぬ動きをしたと想定することでいろいろなリカバリーの練習もできます。
...こうやって,他人が実際にCコースを走ってる間,おとーさんは睡眠時間を削ってCコースの脳内走りこみを必死でやってました。もちろんたまにデミ助に乗った時には基礎練を欠かしませんし,体力を落とさないように最低限の筋トレなども続けてます。とにかく,とにかく,今の自分にできる精一杯のことをやるのみです。
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当日朝は冷え込みが厳しく息が白くなるほどでしたが,燦々と降り注ぐ陽射しがあっという間に季節を初夏にタイムスリップさせます。
今回もロガーのデータを2本目に活かすためノートPC持ち込み。テントや机,イスなどの大所帯になりますが,パドックの居住性を高めることも走りをギリギリまで突き詰めるためには必要なこと。四の五の言わずできることはキチンとやりましょう。
発表されたコースは序盤の島めぐりと最後のパイロンセクション以外は名阪Cコースの端から端を駆け抜ける超高速コース。以前なら得意なコース設定に大喜びするところですが,開幕戦以来のトップとのタイム差にすっかり自信を失っている現在の自分にはとてもとても恐ろしいコースに見えます。
※画像はJMRCのサイトからいただきました。クリックすると大きい画像を表示します。
慣熟で歩いていても,特に高速で土手に向かって突っ込んでいくコーナが怖くって仕方ありません。こんなところを自分が2速踏み切りで駆け抜けられるのか。もし路面の凹凸でフロントが跳ねて大アンダーを出したらどうするの? エア圧パンパンのリアがぐりーんと回り出したらどうするの? 今の自分にうまくクラッシュを避けてリカバリーできる力があるの?
たとえ脳内でいろいろな走り込みをしてたとしても,そこはやはり昨年から全く結果が出ていないだけに,実際のコース上では今一つ自信を持ちきれません。
たくさんの不安と怖さを抱えたまま1本目のスタートラインにつきます。
心臓がバクバクと音を立てて胸の中で暴れ回っていますが,とりあえず自分の普段の努力と底力を信じて走り出すのみ。
スタートゲートが狭いため,スタートパイロンにリアがヒットしないよう気をつけながらおとなしい目にスタート。ずささささっ! さあ行けっ!
最初は島の間を縫って行くような不規則なスラローム状のルート。1速か2速かを迷いながらとりあえずコースをトレースしていきます。しかしいったん外周に出てすぐ折り返すところで思ったよりもアンダーが出てコースアウトしそうになり一瞬スロットルオフ。若干のタイムロス。
イトウ工業コーナーをぐるりと回ってオニギリ方面に向かいます。オニギリの頂点から右の底角を回る部分,いつもは1速に落とすのですが,ヒール・トゥが下手でかなりロスをしてることが分かってきたので,今回は2速のままで回ってみます...ただ,実際にはちょっと旋回速度を落とし過ぎでぬるいコーナリングになってしまいました。
もう一度イトウ工業コーナーをぐるりと回って,今度は中のストレートを真っ直ぐS字まで突っ込み,土手の手前を高速コーナリングして奥のヘアピンまで突っ走ります。
慣熟では怖くって仕方なかった部分ですが...走ってみたら意外に平気(笑)。2速が吹け切った状態からフルブレーキングして,いつものように内側の縁石をたっぷり使ってインを浮かせ,車体をばっこんばっこん言わせながら走り抜けます。
奥のヘアピンは途中で小さい島の中に入って元来た外周に折り返し,外周からホームストレートに入ります。そしてそのままホームストレートを走るかと思いきや,ショートカットをオニギリ方面に真っ直ぐ抜けて,そのまま外周をオニギリ→直角コーナー→イトウ工業コーナーと超高速外周の旅。ここで再び2速が吹け切り,3速に入れようかちょっと悩みましたが悩んでるうちに直角コーナーが近づいてきたため,2速のままで曲がります。
最後に三度イトウ工業コーナーを回って,先ほどと同様真っ直ぐS字まで突っ込み今度はホームストレートのゴール付近に置いてある3本パイロンで,右180度→スラローム→右180度→1本飛ばしてスラローム→ゴールというパイロンセクション。まずまず無難にターンが決まりました。
さあ,ミスは数ヶ所ありましたがとりあえず今の自分にできる精一杯の走りはできたぞ!
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1本目が終了したところで暫定の順位は2位。トップとは0.4秒差。
Wエントリーのスイスポ,みっちゃんとやまもっちゃんが車両不調のため下位に沈んでますが,今期初めてトップとの生タイム差が0.5秒以内にまで縮まりました。
区間タイムでは,後半こそトップタイムで走り切っているものの,前半はトップから1秒ほど離されています。まだまだ細かいところを詰めないと表彰台は見えて来ません。
ロガーのデータを詳細に検討,車載動画を見ながら2本目に向けてミスった部分の修正をしたイメトレを繰り返します。タイヤのエアも微調整。とにかく今の自分にできることは全てやり切ろう。
お昼の慣熟歩行も,特に前半のミスった部分を重点的に歩きます。オニギリの底角を折り返す部分も,2速で行く以上はもっとラインを工夫して通過速度を高めないといけません。ロガーでトレースしたイメージを実際のコースを歩いて徹底確認します。
さあ2本目のスタートライン。
かなり路面温度も上がってます。今回はリアのエア圧は最初から高め。それでも路面温度の上昇に合わせて微調整をしました。さあ,もう本当に今の自分にできることは尽くした。後は思いっきり走るだけ。
スタートラインに並ぶと,1本目と同じく心臓が高鳴ります。しかし1本目のような不安と恐怖に駆られた鼓動ではなく,「さあ行くぞ」というワクワク感で胸がいっぱいになっていることに気が着きます。本当に久々の気持ちです。前戦のような「面白くねーよ!」という気持ちはいつの間にかどこか行ってしまった。
さあ,スタート!
前半は1本目のミスを修正できて0.5秒上がりましたが,後半は攻めすぎてインリフトの嵐(笑)。これはさすがにやり過ぎでタイムダウン。全体では0.1秒のタイムアップに留まり,9台中2位のままで終了。
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2位。表彰台。
本当に久々...1年の活動休止期間をまたいで約2年ぶりの表彰台。
ああ,やっとここに帰ってきたんだと胸にこみあげてくるものがあります。
開幕戦,第2戦と,自分なりにがんばったのに沈没が続き,完全に失くしてしまっていた自分の走りへの自信というか「こういう風に走ればいいんだ」という感覚がちょっと蘇って来ました。
しかもこれは,ただ以前の調子を思い出したというわけではなく,以前よりも格段にレベルアップしたライバル達の中でも自分が徐々に互角に戦えるようになってきたということ。
つまり,こんな50歳前のオヤジでも,少しずつ「成長してる」ってことなのかな。
「寝る子は育つ」といいますが,実際に走れない分,睡眠時間を削ってイメトレに打ち込む「寝ないオヤジ」も育つのかな。
しかしその答えはまだまだ分かりません。次戦フルパイロンの奥伊吹や,その次の鈴鹿南で,さらに表彰台に立てるのかどうか...
まだまだ嬉し涙は早い。
泣かんぞ。まだ泣かんぞ。
表彰台のてっぺんに立つまでは。
いつか絶対に表彰台のてっぺんに返り咲くその日まで,おっさんは泣きません。