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明けない梅雨はない


今朝,今年初めての蝉の声を聞きました。

毎日天気図を見ていると,さしもの梅雨前線も夏の高気圧に押されてジリジリと北上し,梅雨明けがもう間近いことが分かります。まだ日本の各地で強い雨が降っていますが,ここ近畿では昨日今日と30度を超える炎天になっており,もう既に梅雨が明けたかのような観もあります。

今週末はもう近畿地区戦第5戦@鈴鹿南。つい1-2日前,全日本の熱い戦いが繰り広げられたコースに,今度は近畿のジムカーナドライバーが集結して,近畿では初めてとなる地区戦&ミドル戦同時開催の一大イベントが行われます。


前戦の惨敗で,意地もプライドも知識も経験も全てを木端微塵に打ち砕かれたおとーさん,梅雨のようなうっとおしい気分でこの1か月を過ごしておりました。


「勝つことだけにこだわって走るのは止めよう」

そう決意はしましたが,「じゃあ何のために走るの?」という疑問が常に頭から離れません。


もちろん走ることそのものは楽しいことですが,今は別のことをいろいろ犠牲にしないと走れない生活です。

「愉しみ」を単純に両天秤で量ることはできませんが,それでも,毎日帰りが深夜になる中で仕事をいろいろ調整して,嫁さん子供にもいろいろゴマを擦りまくって,高いエントリー費を払って,タイヤやオイル代も工面して,汗を流してクルマをメンテして...それでいて毎月走りに行ってガックリするばかりでは,いかに打たれ強いおとーさんでも気持ちがもちません。「2本だけでも思いっきり走れたから良かったじゃない」と言われても「良くねーよ!」と言いたくなります。

走り続けることそのものが大変になる中で,それでも必死に走らないとエサにはありつけず...おとーさんの脳裏には老いさらばえた競走馬がそれでも草競馬で走り続ける姿が目に浮かびます。これまで何度かチャンスはありましたが,流れに乗りきれずとうとうメジャーにはなれませんでした。そしてもう何年も美味しいエサにはありつけてません。おそらくこのまま地方の草競馬で一生を終えることになるでしょう。それでも何かに鞭打たれ走る。いや,今でも走ることは嫌いじゃない。エサなんてもらえなくっても走る。でもやっぱり,ちょっとしんどい...


鈴鹿南は大好きなコースです。かつてはホームコースと言っていいぐらい走りまくってました。ただ,2年前の5月の地区戦以来,一度も走っていません。本当は復帰戦になるはずだった昨年9月の地区戦は台風で流れちゃいましたしね(→その時のdiary)。

今回の大会も前日練習会があります。そして今回の主催者さんは「順走コース1周に広場でちょっとパイロンを絡める」というコースを頑固に貫いていることで有名なクラブさんです(頑固者好きですけど)。今回はミドル戦が併催のため,そんなに複雑なパイロンセクションは作らないでしょう。したがって,直前に順走コースをどれだけ走り込んでいるかでほぼ勝負が決まると言ってもいいでしょう。

そしておとーさんは今回も,前日の土曜日は朝から晩までがっつりお仕事。というか月に1回しか走れない時点でもう勝負は決まったようなもの。申し込みの現金書留を送る時も心の中は疑問符でいっぱいでした。いったい自分は何をやってるんだろう。何でこんな安くないお金を払ってわざわざ苦労と苦痛を買い込んでるんだろう...???


・・・・・・

それでも走る以上は今,自分にできることを精一杯やろう。
心の梅雨空に傘を差しつつ,とぼとぼと足を前に進めよう。


これまでにも気がついてましたが,前戦の車載を見るとおとーさんはサイドを引く時に身体ごと大きく伸び上がるようにして引いてます。これは癖というよりも,サイドを引く時にどうしても左の二の腕がシートのショルダーサポートに当ってしまうのでそうなってしまうんですね。

ちょっとでも改善できるところは改善して行こうということで,これまで長く愛用してきたSP-Gタイプの無印シート(笑)を外し,定番のBRIDE ARTISVを導入しました。まだウレタンが身体に馴染んでませんが腰や背中のホールド感は格段に良くなりましたし,何より左腕の可動域が広がって,サイドを余裕で引けるようになりました。これでわずかでもサイドの成功率が上がれば儲けモンです。



もう一つ,前戦ではリアのエア圧を大きく上げ下げしないといけない場面がありましたが,安物のエアコンプレッサーが壊れていて手動で何キロものエアを押し込まねばならず,それですっかり消耗してしまいました。今回の鈴鹿南も天候の急変によってリアのエア圧を大きく変えないといけない可能性があります。

短時間でしっかり大量のエアを入れられること,耐久性があること,振動が少なく音が静かなことなどから,デミオ無頼さんに貸してもらったのと同じ製品を買うことにしました。少々お値段は張りますが,良いものは長く使えるので結果的に損はしませんしね。



・・・・・・


「ライバルは自分自身ですから」というAZUR星人さんのお言葉を何度も反芻しています。

最初は言葉の意味以上のものが実感できず,今一つピンときませんでした。しかし毎日その意味を考えるうち,ちょっとだけ「自分自身をライバルにして走る」具体的なイメージが見えてきたように思います。


せめて脳内で練習走行をするため,鈴鹿南を走る自分自身の車載動画を自宅PC,職場PC,スマホなどいろんなところに仕込んでおいて暇さえあったら眺めます。

ほぼこれまでのベストのタイムで走っているラップでも,何度も繰り返して見ていると,ステアの切り込みのタイミングや量,ブレーキングの残し方,フルスロットルに移るタイミングなど,まだまだ改善の余地があります。それに...全然攻めてない。まだまだ操作の時間分解能が荒過ぎるし,気持ちが攻めてない。


そして件のお宝,佐川選手の名阪Cコースの走行動画も同じようにして毎日何度も眺めます。

当然ながらこちらは全く隙がありません。どこをとってもギリギリいっぱい攻めてます。自動車という動力付きの鉄の塊がタイヤというゴムの塊を介して物理法則の限界まで縦に横に上下に動いてます。全日本のトップドライバーですから他の選手もみな限界領域で走ってます。その中でもどこか他の選手とは違う空気が流れています。激く,熱く,そして美しい走りです。

でも因みに(失礼ながら)佐川選手はこの時,優勝はされていません。優勝は地元の西川選手。この佐川選手の一枚上を行く凄まじい走りだったわけです。


今の自分の低レベルな走りで人に勝ったの負けたの言っててもしょうがない,そんな気持ちになってきました。もっと操作の精度を上げることもできるはずだし,もっと攻めることもできるはず。一歩先を行く自分の可能性に追いつき,追い越して行くこと,それこそが目先の勝ち負けよりも大事なこと。そしていつの日か走りで人を感動させられるようなカッコいいおやじドライバーになること...

「勝つこと」以外に自分が目標とすべきものが少しだけ見えてきたような気がします。

走り続けよう。その勇気がちょっとだけ戻ってきた気がします。


明けない夜はない。
降り止まない雨はない。

誰の言葉だったか忘れましたが,おとーさんの大好きな言葉です。自分のクリニックの公式サイトのトップページにもこの言葉を掲げているぐらい。


おとーさんの心の梅雨もいつかは明けるでしょう。

今週末,どうかカラっと乾いた心で走れますように。



※カナダはプリンスエドワード島にて。雨上がりの青空。



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