雪の中の初トライアル 〜マツダファン・サーキットトライアル〜
その日,目覚ましが鳴ったのは朝の...というかまだ深夜の3時過ぎ。
そそくさと着替えを済まし,家族やワンコを起こさないようにそーっと1階に下りて玄関の扉を開け,一歩外に踏み出して深く吸い込んだ早朝の空気は胸が痛くなるほど凍てついてます。上半身はでかいダウンジャケットを羽織り,下半身はジーンズの下にパッチとスキー用の靴下を重ねてますが(笑),それでも寒い寒い。
ご近所迷惑にならないように気をつけながらデミ助のエンジンをかけ,まずは近所の24時間GSに向かいます。かじかむ手でサッと簡単に洗車して,あらかじめ計算した量のガスを補給。デミ助のマフラーから真っ白な息を吐き出しながら,さあ,走り出します。もちろん向かうのは岡山国際サーキット。マツダファン・サーキットトライアルの会場です。
デミ助の調子はすこぶる良く,近畿道,中国道,山陽道と乗り継ぎながら真っ暗な高速をひたすら走り,備前インターを降りて今度は真っ暗な山道を快調に飛ばしていきます。
しかし途中からチラホラ白いものが舞い始めたかと思ったらみるみる本降りになり,あろうことかサーキットの手前で道が真っ白になってしまいます。念のためにバイスソックは積んでますが,履こうかどうか迷ってるうちにサーキットに到着。
ゲートをくぐってからもどっちに向かうのか分からずウロウロ。トンネルをくぐって何とかパドックにたどり着きましたが,サーキットも薄っすら雪景色。走れるのかな,これ。
これまで鈴鹿南コースと鈴鹿ツインはずいぶん走ってますが,こういう大きいサーキットは今回が初めて。こんなにたくさんの台数で走るのも初めて。
かつてF1も停まったであろう本格的な大きいパドック。どういう風にクルマを停めるか分からずまたしばしウロウロ。とりあえず周囲の人の見よう見まねでデミ助を停め,いつもの大荷物をテキトーに降ろしていきます。スペアのシャフトなんて今日は要らんかったかな。
何をするにも勝手が分からず周囲をキョロキョロばっかりしてると,斜め前に停まってる青いデミオから織さんが出て来てくれて一安心。向こうのパドックからはHide'sさんも声をかけに来て下さいました。それに今回はギャラリーとして来られていたジムカーナ仲間の真ん中デミオさんとも遭遇。みなさんと話しながらぼちぼち準備を進められました。こういう時に知り合いがいるととっても心強いですね。
その間も雪は降ったり止んだり。気温はマイナス3℃。路面はすっかりコールドウェット。名阪Cコースならばちょいちょいこんなコンディションの経験もありますが,初めてのサーキットでこんな路面を走るんかい(´Д⊂。
・・・・・・
サーキットトライアルの朝はジムカーナ以上に進行が早く,どんどんタイムスケジュールが進んで行きます。受付で渡されたゼッケンと計測器を車両に取り付け,一息入れる間もなくブリーフィング,簡単な車検,走行開始とたたみかけて来ます。
最初に走り出した第1組はエイトが主体でそこにアクセラやロードスター,それに懐かしいランティスやAZ-1が混じってます。まだ路面は完全にウェット。自分の走行準備をしながら時々コースをのぞくと,そこここでスピンしてる車両が。こりゃ大変だぞ。
しかし幸いおとーさんがエントリーしてる第2組が走る前になって雪は止み,雲間から朝陽が差し込んできます。がんばれ太陽,どんどん路面を乾かしてくれ!
第2組はデミオ,ロードスター,アテンザ,MPV,ファミリアなどがごっちゃになって28台もエントリーしてる一番にぎやかなクラス。
最初の1周は同乗OKのパレードラン,5分のインターバルをおいてゼッケン順に本番1回目の走行がスタート,という段取りだったはずが...実際にはゼッケン順に並ぶ間もなく,ぼやぼやしてるうちに最後尾に近いところに並ぶハメに。ええ〜,ちょっと待ってよ〜
しかもパレードランはみなさんかなり本気のハイペース走行。やっとピットに帰ってきたら5分のインターバルなんてウソウソ,すぐにシグナルが変わって本番走行開始やんか! 車載カメラを起動し損ねましたよ。4点式ベルトも緩めちゃった。
さてベルトを締め直しながら走り出した本番1本目。
路面はフルウェットながらライン上のみ半ドライという感じ。ラインを外さなければそれなりにグリップします。R1Rはこういう路面は大得意。
しかしゼッケンと関係なく最後尾に近いところからのスタートになってしまったため,失礼ながら周囲のクルマとペースが合わない。しかもデミ助,コーナーは速いけどストレートはめっちゃ遅い。毎コーナーで前車に詰まるものの,ストレートで前に出ようと思ったら追い抜くどころか遠く置いて行かれるという典型的なドツボのパターン。
それでも2台抜き,3台抜きしてやっと視界が開けました。さあ,アタック開始!
しかしシャカリキに攻めるうち,グリップするのはライン上だけということを忘れてついついおかしなところを走り,アンダーが出たりリアが出たりしてタイムロスしまくり。
縁石も初めて体験する凸凹の大きな縁石で,上を走るとものすごいバイブレーションで手が痒くなりそう。鈴鹿南や名阪のように自由に乗ったり下りたりできません。しかも縁石上はまだフルウェットのため乗ると途端にツルンと滑る個所がいくつか。おかげでハーフスピンしたりグリーンに突っ込んだり散々。
それでもラップを重ねやっと走り慣れてきたと思ったらまた前方が大渋滞。どうにもこうにも抜きあぐねているうちにチェッカーが振られ,結局1本目はほとんど思ったような走りができないうちに終了。
うーん...難しい。
多くのサーキット初心者と同様,「クリアラップをとることの難しさ」にいきなり直面することに。ジムカーナは1台ずつ走りますし,サーキットでもこれまで走ってきた鈴鹿南や鈴鹿ツインではこんなにたくさんの台数がいっぺんに走ることはなかったので,間合いの取り方がさっぱり分からない。
しかしHide'sさんからいただいた「そういう時はもっとペースを落として前車との間隔を十分開けてからアタックするんだよ」というアドバイスで目が覚めました。そうか,前ばかり見てガツガツ抜こうとするからかえってクリアがとれないんだ。基本中の基本かもしれませんが,実際に走ってみて,言われてみて,初めて理解できました。
・・・・・・
その後もう一度ブリーフィングがあり,それが終わったらすぐに第1組の2本目が始まります。とにかくイベントの進行が早い! ロガーとノートPCも持って行ってたんですが解析なんてしてるヒマもない。
ただ,1本目のベストは2分12秒ちょっとで28台中8位,デミオ勢10台の中でも3位のタイムだったことが判明。トップとは2秒開いてますが,まあ全く初めてのコース,あの路面でこれなら上出来でしょう。ちょっと気がラクになりました。
その後また雪が本降りになり,せっかく乾いた路面を冷たいシャーベット状の水が覆っていきます。これじゃ2本目でタイムを上げるのは無理かな。まあ,今日は勝ち負けよりも楽しみに来たんだし,1本でもクリアで走れたら満足だけどね。
2本目は車列に並びそびれることのないようだいぶ前からデミ助に乗ってステンバってましたが,今度はオフィシャルの方がちゃんと1本目のタイム順に並ばせてくれました。そうか,1本目は予選みたいなモンなんですね。
シグナルが変わって先頭のクルマから順にコースイン。今度は前後のクルマとタイムが近いのでヘンに前に詰まったり後ろから煽られたりすることもなくスムースに滑り出して行きます。
雪は完全に止み,再びお陽さまが顔を出してきました。走るうちにどんどん路面は乾いていきます。こりゃ後になればなるほど路面コンディションは回復するな。あまり焦らずアタック後半でベストを狙うつもりで徐々にペースを上げて行こう。
ウォーミングラップを走るうちにも路面はどんどん乾いて行ってます。コースにもだいぶ慣れてきました。前後のクルマもかなり離れてます。さあアタックに入ろう。行け!デミ助!
1本目よりもブレーキング時にタイヤが路面をがっちりとらえてます。立ち上がりもしっかりトラクションがかかってます。前後のクルマも離れているため周囲を気にせず自分の走りができます。アタック1本目で2分10秒,2本目で2分9秒,3本目で2分7秒まで上がりました。しかしここでオイルが120℃を超えR-VITからワーニング音が出ます。いったん減速してクーリング。
1周ゆっくり走って2台ほどやり過ごします。ダクト付ボンネットの効果でしょうか,気温が低いからでしょうか,油温はすぐに100℃以下に下がります。
まだまだ前後は開いてます。よし! さあ戦闘再開!
路面はさらに乾いてきてます。タイヤもかなり温まってきて内圧も上がり,ちょうど良い感じ。
ストレートから右に120度ほど回り込む1コーナーはボトムの速度を落とし過ぎないよう,立ち上がりであまりアウトにはらみ過ぎないよう気を付けて。
立ち上がってから右に寄って,非常に大事&難しい2コーナー(ウィリアムズコーナー)にアプローチ。ここのボトムスピードがラップタイムに大きく影響するらしい。若干下りでしかもブラインド,でもこういう峠っぽいコーナーは大好き。いちびって左足をブレーキペダルに乗せ,スロットルは極力緩めずに。
S字を気持ち良く駆け抜け,鈴鹿南3-4コーナーの逆走にアップダウンを付けたようなアトウッド・カーブに突っ込みます。ここはラインの自由度が高くいろいろな走り方ができるコーナーらしい。立ち上がりが結構な上り勾配になっているため,小さめに入ってなるべく立ち上がりのステア舵角をなくすように走ってみました。
ストレートは4速踏みっ切りで速度は150km/h超。ジムカーナでは決してないシチュエーション。これだけでもここへ来た甲斐がある(笑)。そしてフルブレーキングしながらフォンフォン気持ち良いエグゾースト音を響かせて2速にシフトダウン,ぐりぐりヘアピンを回ります。
立ち上がってすぐに左90度のリボルバーコーナー。このへんは短いコーナーが連続するジムカーナっぽい区間。おらおらモードでアウトいっぱいにクルマを振り出し,3速に入れながらすぐに左のパイパーコーナーをクリア。縁石の乗り降りで多少姿勢が乱れますがこんなのはジムカーナ屋さんは全然気にしない。
短いストレートからダブルヘアピンに2速でアプローチ。アウトいっぱいに立ち上がって3速に入れながら角度の浅いマイクナイトコーナーに。ここは踏みっ切りでも行けそうなのですが,今回は無理せずアクセルオフで入りました。
さあ最終コーナーを立ち上がって...タイムは2分5秒台。よっしゃあ!
もう1ラップそのままアタックするつもりでしたが,またしてもR-VITがピーピー鳴って,オイルが120度のワーニング温度に達してることを報せます。どうしよう...一瞬迷いましたが,まだ走行時間は若干残ってますし,路面はどんどん良くなってきてるので無理せずにクーリングに入りました。
※車載カメラの角度が悪く外の景色が白飛びしてしまってます。スイマセン。
しかし結果的にはこのクーリングが大失敗。
このラップでかなりの台数が先行し,しかも次のラップでアタックを再開した時,これらの先行したクルマがクーリングに入ったところにぶつかってしまいました。さらに,何とかこれらのクルマをパスしてもう一度アタックしたところに最終コーナー付近で黄旗が出てしまい万事休す。ロガーで見ると途中までかなりタイムアップしてたんですが...
結局路面の良くなった終盤にクリアがとれず,6ラップ目の2分5秒6がそのままベストとなってしまいました。一台ずつ走るジムカーナとは全く違った難しさを痛感させられました。
また終盤には焦って黄旗が出てるのに気がつかず減速中のクルマを強引にパスしてしまうという絶対にやってはいけないミスもしてしまいました。今後はこういうことをしないように反省反省。無理な追い越しをかけてしまったドライバーの方,本当にすいませんでした。
しかし最終的にこの2分5秒台のタイムは第2組28台中の7位,デミオの中で3位,改造制限のきついデミオLIGHTクラスの中では2位入賞という立派なタイムだったらしい。大型サーキットデビューにしては上出来過ぎる結果です。
5月のジムカーナ地区戦以来,半年ぶりの表彰台。しかも今回はステージでサーキットクイーン付きの表彰ですよ。もう,ステージから眺め下ろす景色はサイコー!
今回は「マツダ・ファンフェスタ」というイベントの中でのサーキットトライアルでしたので,競技が終わった後の昼休みには歴史的な名車のデモランがたくさん組まれており,あこがれの787Bの走る姿も堪能できました。
その後はさらにマツダ車による2時間耐久レースなども行われ,以前ジムカーナオフ2009に参加していただいた^o^nchannさんも出場されていたのですが,あまりの寒さと,とっとと大阪に帰って仕事の続きをしなければならないという事情のため途中で会場を後にさせていただきました。
帰りの高速ではずーっと半笑いの状態(笑)。
心の底からニヤケ笑いがこみ上げてきます。
楽しかった,楽しかった,楽しかった,ホント楽しかった。
アカン,完全にハマってもーた。
ジムカーナを止めるつもりはなかったはずですが...やばい,こっちの方がずっと楽しいかも(笑)。ということで今後もまたあちこちのサーキットのサーキットトライアルに出没したいと思います。サーキット組のみなさま,どうぞよろしくお願いします。
※ガラス製のキレイな盾とお馴染みJAFメダル(また銀色か),オリジナルウィナーキャップをいただきました。