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思い切り悔しがろう


もう桜も散って,新緑の季節になりましたねえ。

人が落ち込んでようが落ち込んでまいが関係なくカレンダーは進み,あの開幕戦の惨敗から1ヶ月経ってまたジムカーナウィークエンドが巡ってきました。



クルマのせいでもコースのせいでもなく「自分が遅い」という事実を突きつけられ意気消沈,弱気の虫にたかられてだいぶ凹んでたおとーさんですが,TOYOさんやspeedHeartさんのスカラーシップにも励まされ,とりあえず自分ができることを少しずつ進めて行こう,修正すべきところを修正して行こう,と考えるようになりました。

特に,あの開幕戦からおとーさんの脳裏を離れない光景があります。それは,自分よりも2秒も3秒も速いドライバーがそれでもさらにコンマ1秒を削り取るべく必死でロガーのデータにかじりつく姿でした。

実はこれと同じ光景を2009年のJAFカップでも見たことがあります。身一つでお気軽に参加している近畿のドライバーに対して,他地区のドライバーはめっちゃ重装備。ロガーにノートPCは当然のこと,タイヤもいろいろな山のものを数セット持ち込み,スプリングなんかも何本も揃えてます。

そして前日練習の段階から1本1本の走行後にきっちりビデオとロガーのデータを解析して,ギリギリまでセッティングや走り方を追い込んでいます。対するおとーさん達近畿のドライバーはあくまで感覚派。「あそこまでしなくてもねえ」なんて言ってましたが,結局,仲良く近畿のドライバーがビリから4人並ぶ結果になりました。


それでもおとーさんはその後もエンジョイ派というか,あまりシャカリキにならず,その時の自分の感覚を信じて走ってきて,それでも時々は勝てたため,今年も殊更に自分の走り方を変えるつもりはありませんでした。タイヤも普段から本番用を履きっぱ,解析は外撮りのビデオで十分。カリカリせずに楽しく気軽に走ろーよ。


しかし,アカン。もうアカン。もうそんなヌルイことは言ってられない。

たとえ会場に持ち込む荷物が多少増えようとも,1本目の自分の走りをできる限り精密に解析して2本目に全力で臨まなければもう二度と表彰台なんて上がれない。外撮りのビデオだけでなく,車載も,ロガーも,使えるものは何でも使って行く,そうやってなりふり構わず,貪欲にタイムを削って行かないと,この先はない。いつまで経っても真ん中以下をウロウロするだけになっちゃう。もっともっと必死にならないとダメじゃん。


...ということで,とうとうおとーさんも今回からノートPCと机,イス,テントを会場にきちんと持ち込むことにしました。本番用タイヤも,せめてフロントには山の高いものと低いものを2セット用意するようにしました。

また大会直前になってカゼをひき,しつこい微熱とセキに悩まされながら当日を迎えましたが,今回は珍しく前日にたまたまスケジュールが空いたため某所で若干の練習走行をさせてもらうことができました。苦手な名阪Eコースとはいえ,何とか表彰台の端っこに手が届かないかな...


・・・・・・

さて,当日のコースは名阪Eコースを端から端までフルに使い,終盤にコテコテのパイロンセクションを設けたTSCOさん(主催者)らしいコース設定。苦手な島巡りのセクションがないのが,ここを走るのが2年ぶりの人間にとってはありがたい。

16歩間隔の3本パイロンを中心にしたコテコテのパイロンセクションも,冬場にパイロンばっかり走ってたおとーさんには願ったり。RIGIDさんのリアシュー導入以来サイドはしっかり利くので,もうそんなにパイロンに苦手意識はありません。


※画像はJMRC近畿ジムカーナ部会のHPよりいただきました

ただコースがやたらと長く,病み上がり,というかまだ微熱のあるオッサンは慣熟で歩いているだけで息が上がってきます。仕方なく,他のドライバーにどんどん追い抜かされながら,ゆっくりゆっくり歩きます。


お天気が崩れる心配はまずありません。みな間違いなく2本目でタイムアップしてくるでしょう。1本目で大冒険するよりは気負わず自分の走りをして,そこで得られたデータで要所を締めて2本目に勝負をかけよう...そんな感じ。


さあ1本目のスタート。

無駄なステアを切って立ち上がりのトラクションをロスしないように,細かいターンで回転を落とし過ぎないように...開幕戦からの宿題を意識して真面目にきっちり走ります。デミ助もそれに応えてしっかり動いてくれてまずまず無難な走りです。

ストレートを突っ切ってパイロンシケインをすり抜け,奥のヘアピンを回って外側のコンクリートエリアをガガガと立ち上がってきてさあターンセクション。

しかしターンセクションへ入ってくる部分は明らかに失敗。2速で入ってきましたが進入の角度が悪くスロットルを踏み足せないままだらーっと最初のパイロンに向かいます。

しまった!と思いながら1速に落として最初の右180度に入りますが,焦って進入を急ぎ,立ち上がりでややもたつき気味。

気を取り直して三連パイロンの真ん中に入って左270度→右180度。やはり冬場の練習の時とは違って路面温度も高く,コースを目一杯走って来てからのターンなのでリアが温まっており,Dコースの練習会の時のようにクルクルは回りません。ややパイロンから離れてリアを引きずり気味に旋回。

さあ,真ん中のパイロンをスラロームして最後のパイロンを360度(+30度?)ターン。少しパイロンから離れ気味に入って弧を締め上げる形で加速しながら旋回...ここは何とかうまく回りました。後でビデオを見たらアナウンスのI東さんがすごく褒めてくれてて恐縮モノ(汗)。

関東や中部のドライバーさんからは失笑を買いそうな出来ですが,それでも自分としては精一杯の旋回で乗り切りました。最後に8の字のパイロンを無難に処理して1分37秒でゴール。

パドックに戻ってクルマを下りたところでバッチリ左足がコムラ返りを起こします。きゃー!いててててて,痛いよぉ! っつーかオッサンどんだけ体力弱ってるねん。



・・・・・・


後半ゼッケンの上位ドライバーがPTで沈んだためこのイマイチのタイムが1本目の暫定1位となります。1位なんて暫定でも2年ぶりかな...暫定でも悪い気はしません。

しかし上位の生タイムはここからちょうど1秒速い1分36秒。このコースだと決勝タイムはさらに1秒ほど上がって1分35秒台の戦いになるでしょう。とにかく2本目では1.5秒〜2秒縮めない限り1位を保てないし,このままだと表彰台も危ない(汗)。


さあとにかく今自分にできることをしよう。他のクラスを走るクラブ員の応援もそこそこに,痛む足をひきずって自分のパドックに戻ります。

まずはクラブ員の白兄が撮ってくれた(いつも本当にありがとうございます)外撮りのビデオをさっと流して見ます。ターンセクションのださい走りはともかく前半部分の細かいコーナーも何ヶ所かひっかかります。もっと旋回速度高めで行けるんじゃないか。


次にいよいよノートPCを立ち上げロガーのデータを詳細に検討します。やはり前半の低速コーナーで3ヶ所ほど想定速度を下回ってる。あと3〜5km/hは高い速度で回れるはずです。

パイロンセクションへの入りの空走区間もロガーで見るとハッキリしてます。2速のままでいいからラインを変えてもう一踏みすべきだな。

そしてパイロンセクション。ここはやはり突っ込みどころが満載。1本目で立ち上がりがもたつき,スラロームは大回りし過ぎ,270度や360度は旋回速度が遅い...ここだけで間違いなく1.5〜2秒,あるいはもっと落としてる。

前半のぬるいコーナーとパイロンセクションの入りを詰めて0.7秒〜1秒。パイロンセクションをきっちりこなせば合計で2秒アップは可能...のはずですが,ラバーがべったり乗り,路面温度の上がる2本目でターンが1本目よりうまく決まる保障は全くありません。


2本目に向けて,ターンの旋回速度を上げるべくリアのエアをもっと大幅に上げるかどうかかなり迷いました。しかしオフシーズンの練習で旋回速度が速過ぎるとかえって立ち上がりに失速するパターンがよく見られましたし,開幕戦のフリーターンでも旋回速度が速過ぎて立ち上がりのタイミングが合わず若干失速気味でした。かなり悩んだ末,確実性を求めて1本目と同じエアで臨みましたが...しかし結局ここで今日の勝負が決まりました。


・・・・・・

相変わらず身体はだるだる,コムラ返りの後遺症で左足は筋肉痛,お昼の慣熟歩行も超スローペースでゆっくりゆっくり歩きます。コース全体をトレースするのは諦め,2本目に修正をかける部分だけを重点的に歩き,早めにパドックに引き上げます。食欲はありませんがオニギリを2つ無理矢理詰め込み,コムラ返り予防の漢方薬と鎮痛剤を服用。ああ,ジジイだなあ。

2本目に備え,ロガーで確認した修正点を,今度は1本目の車載ビデオを見ながらイメトレします。タイトなコーナーの入り,旋回,立ち上がりを徹底的に頭の中で繰り返します。よし! もうこれ以上できることはない。とりあえず今の自分にできることは精一杯やった。後は実際にコースに出てしまえば自分の頭と手足が勝手に動いて何とかしてくれるだろう,そんな心境でスタートラインに着きます。


ずささささっ! 若干ホイールスピンしながらスタート。

コース前半の1速コーナー数ヶ所は,ブレーキを踏み過ぎないよう,回転を落とし過ぎないよう,それでいてラインは外さないよう細心の注意を払って走り,1本目に比べて0.7秒ほど拾い上げました。

しかし他の場所,特にストレートエンドのパイロンシケイン部分で目測を誤って減速し過ぎ,この部分だけで0.5秒ほど吐き出した上に,奥のヘアピンを回って戻ってきたおとーさんの目の前に黄色い旗が...焦ってわずかにリアタイヤがパイロンの角を踏んでしまったらしい。

ええ〜黄旗ぁ? さっきのパイロン踏んだのぉ?

ああ,ダメか...今回も表彰台は無理か..._| ̄|○ ガックリ


しかしガックリきているヒマはない。もう目の前にパイロンセクションが来ている。とりあえず一生懸命走ろう。最後まで力を抜かずに走りきろう。今後のデータのためにも。

ところが2本目になってパイロンの周囲にはべったりとラバーが乗り,しかも1本目より路面温度の上がったコースをたっぷり走ってきてホカホカのリアタイヤは路面に貼りついたようになって,力一杯サイドを引かないと路面から剥がれてくれません。無理矢理リアを引きずって回りますが,結局全てのターンで旋回速度が落ち,1本目よりタイムを縮めるどころかここだけで1秒近くタイムを吐き出す始末。

結局合計で1本目より0.5秒落ち+PT5秒のゴールタイム。



走り終えた時点ではそれでも2位で車検場に入りますが(ちょー久々です),案の定,後半ゼッケンの上位3台に抜かれて車検場からも押し出され,表彰台からも押し出され,最終的には8台中4位の結果でした。そしてやっぱり1位からは2秒のタイム差...


・・・・・・

悔しい...悔しい...目じりから涙がにじむぐらい,噛みしめた奥歯がぎしぎし軋んで砕けるかと思うぐらい,それぐらい悔しい。楽しくなんてない。とっても辛い。苦しい。こんだけ必死にやって,必死にタイムを削ろうとして,それでもトップには遠く2秒も及ばない。

もう止めようよ,必死になるのは。楽しくラクーに行こうよ。せっかくお金払って走ってるのに苦しんでちゃバカみたいだよ...心のどこかでささやく声が聞こえます。


よっぽど浮かない顔をしてたんでしょうね。クラブのももさんに「不惑さん,楽しい?」って訊かれました。

楽しくなんかねーよ!

とは言わず,「ビミョー...」と答えましたが(笑),その時おとーさんの頭の中で何かのスイッチがパチンと切り替わりました。このももさんこそジムカーナの女神の化身かと思うぐらいこの人の言葉はいつも絶妙のタイミングで天から降ってきます。


そうだ,別に無理に楽しまなくってもいいんだ。必死にやって,負けて,楽しいはずはない。「楽しもう」なんて思わず,必死で努力して,思い切り悔しがって,それでいいじゃない。

トップアスリートが「楽しく」走ってるか。トップスイマーが「楽しく」泳いでるか。トップレーサーが「楽しく」ドライブしてるか。

みんな必死で歯を食いしばってやってるはず。そりゃ中には楽しくラクーに勝つ人もいるかもしれないが,トップレベルの人ほど血のにじむような努力をして,悔しさに悔しさを積み重ねて這い上がって来てるはず。


もちろんジムカーナを楽しくお気軽に走るのもあり。それはその人次第。ただおとーさんは走る以上トップになりたいし,自分が楽しくラクに走っててはトップにはなれないことは明白。じゃあ,必死でやるしかない。必死になればなるほど負けた時のダメージは大きくなるけど,それは覚悟の上でやるしかない。


もう一度表彰台のてっぺんに立つこと。
より高い表彰台のてっぺんに立つこと。

間違いない。おとーさんが求めてるのはこれだ。

楽しくクルマをドライブして,楽しく週末を過ごすこと。これも大事なことだけど,おとーさんの中ではこれと「表彰台のてっぺんに立つこと」と両立はできない。

自分の負けず嫌いから逃げず,無理に楽しもうなんて思わず,最後に表彰台のてっぺんで思いっきり笑うために今は苦しんで行こう。苦しさや悔しさを誤魔化さず,逃げず,愚直に積み重ねて行こう。

これがおとーさんの新しい決心です。



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