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あなたはSタイヤ組? ラジアル組?


これまでおとーさんは2回,ジムカーナ活動を引退したことがあります。

1回目は20歳台の終わり頃,現・嫁様と結婚が決まった時。
おかげで,せっかく競技車として仕上がったばかりのSWがそのまま家庭車として活躍することになりました(笑)。ええ,とんでもない家庭車でしたが。

2回目は,10年余にわたる長期の休止期間を乗り越えてDC2でカムバック,3シーズン目でやっとミドル戦で表彰台に上がれるレベルになった途端にクラッシュ...という2年前のこと。

まあ「引退」といっても結局どちらも後にカムバックしてるわけですから,あくまで「一時引退」というか「休止」というべきなんでしょうが。


この2回の引退の際,どちらの時も,競技で走れなくなるということ自体は非常に悲しい,寂しいことでしたが,引退(休止)を決意した瞬間,なぜか不思議なぐらい安堵感というか開放感があったことを覚えています。


競技を引退して開放感を得る,ということは,競技をやってる間は何かに拘束されているわけで,それが何かを思い出してみると...競技そのものの勝ち負けのストレスとか,土日のスケジュール設定の面倒とか,彼女(嫁さん)との交渉のプレッシャーとか,競技をやってる中で大変なことっていろいろあると思うんですが,おとーさんの場合最も大きかったのが「タイヤのやりくりのストレス」だったように思います。

ああ,もうあの湯水のようにかかるタイヤ代のやりくりに頭を悩ませないで済む...
ガレージの奥に山のように積んであるタイヤのマネージメントから開放される...

これが競技を引退(休止)した時の開放感の正体だったように思います。
みなさんの中にも同じような思いをした人はいませんか?


このように競技参加者に対して大きなストレスをかけている「タイヤのやりくりのストレス」なんですが,実はこれは「Sタイヤならでは」のものなんですね。

「Sタイヤ」というのはこのサイトではちょくちょく出てくる言葉ですが,要するに競技専用の特殊なセミスリックタイヤのことです。最低限の溝はありますので,一応公道を走れますし車検も通りますが,アホみたいに減りが早く,熱を入れるとすぐにゴムがダメになる,乗り心地超悪い,ロードノイズ超ひどい,燃費超悪い,値段超高い...しかし超ハイグリップ,というシロモノ。

何年か前までは初心者であってもこのSタイヤを年に何セットも消費しながらシリーズを戦うのがジムカーナ界の常識でした。おとーさんも不惑インテ号に乗ってた時はこれにならって必死でタイヤ代をやりくりし,擦り減ったタイヤを練習用や通勤用に回しながら走ってたわけです。


ところがこの2-3年でジムカーナ界でのタイヤをめぐる状況は変わってきました。
それはSタイヤを使わない「普通のラジアルタイヤ」で走るクラスの台頭です。

現に,今おとーさんはS1500クラスというSタイヤを使わないクラスで走ってますが,以前と比べタイヤのやりくりはずいぶん,ずいぶん,ずいぶんラクになりました。

まあラジアルタイヤでもスポーツタイプは乗り心地やロードノイズ,燃費はSタイヤと大きく違わないけどね(汗),でも同じサイズでもタイヤ代がかなり安いし,何よりも普通に1年ぐらいは十分使える。年間を通じていうとタイヤにかかるコストは半分以下...いやもっと安く済む。それにガレージの奥に使いかけのタイヤを何本も積んどく必要もない。

Sタイヤで競技を走るのと比べて,「普通のラジアルタイヤ」で走るクラスだと,タイヤのやりくりに関するストレスがすごく軽くて済むわけです。


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このグラフは近畿地区ミドル戦における,Sタイヤユーザーと非Sタイヤ(普通のラジアル)ユーザーのエントリー数の年度推移です。シリーズ各戦の平均エントリー数と思って下さい。もちろん縦軸がエントリー台数,横軸が年度推移ですよ。

近畿ミドルでは2005年度にRTクラスというラジアルのクラスが新設されました(橙線)。当初は全体の1割程度のエントリーでしたが,NクラスのようなSタイヤを使うクラスのエントリー(青線)がどんどん減ってくる中,じりじりとその割合を上げ,特に2008年度からGT1クラスとGT2クラスに分かれたことをきっかけに大幅にエントリーが増えました。

そして今年度,S1500クラスができたこともあって,さらにラジアルでエントリーする人が増え,とうとうSタイヤ組とラジアル組で台数が逆転する大会が出てきました。平均値で見てもほぼ伯仲してますね。


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次は関東地区ミドル戦のグラフです。近畿ミドルと同様,年度ごとの平均値を出してます。シリーズ各戦の平均エントリー数と思って下さい。

関東ミドルでは2004年にNTクラスというラジアルのクラスができています。こちらは初年度から2割ほどの台数を集める人気クラスで,2006年度には駆動方式によってNTFとNTRクラスに分かれ,Sタイヤを使うクラスのエントリーが徐々に減る中,順調に台数を伸ばしています。

そしてこちらも2009年度になって,NクラスやBクラスをラジアル組に引き入れてNTNクラスやNTBクラスができたこともあり,ラジアルのエントリーが大きく伸びてSタイヤ組を逆転するようになりました。


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もう一つ,中部地区のミドル戦にあたる中部東海シリーズのグラフです。こちらも近畿ミドルと同様,シリーズ各戦ごとの平均エントリー数を表しています。

中部東海シリーズでは2005年から非SタイヤのクラスとしてRAクラスができ,2006年からこれにS1500クラスが加わっています。中部東海では他の地区と違ってSタイヤを使うクラスのエントリーがまだ十分あり,ラジアル組との逆転は起こっていませんが,それでもSタイヤ組の台数は減少傾向にあり,一方でラジアル組は着実に増えていっています。この分だと来年度以降には他の地区と同じくSタイヤ組とラジアル組の逆転が起こると予想されます。


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ここにグラフを上げたのは各地区のミドル戦です。

全日本戦では,今年新設されたPNクラスも結局Sタイヤを使うクラスでしたので,今のところスポーツラジアルで勝負できるクラスはありません。各地区のトップである地区戦は全日本予備軍の性格を持っていますので,結局全日本にならってSタイヤがメインになっています。

しかし地区戦でも中部にはS1500クラスがあり,常に一定の数のエントラントでにぎわっています。関東地区戦もNTクラスがあり毎戦ハイレベルの戦いが繰り広げられています。
そして近畿でも,事情があって詳細は書けませんが,来年以降地区戦でもラジアルタイヤで走るクラスができそうです。


Sタイヤとスポーツラジアル。

タイヤとしての絶対的な性能は,Sタイヤの方が数段上です。

同じクルマに同じサイズのSタイヤとラジアルを履いてタイムを比べたら,コースにもよるでしょうが,たいてい3秒以上は差がつくでしょう。見た目は同じようなタイヤでも,全くの別物です。

おとさーんも以前,自分がSタイヤで競技をしてる時は何となく,Sタイヤで走って地区戦や全日本を目指すのがジムカーナの「王道」で,ラジアルでジムカーナをするというのは邪道...とまでは言わないものの,何となく「お遊び」的に感じてました。スイマセン(汗)。

例えれば,「Sタイヤ=硬式野球,ラジアル=軟式野球」みたいな感じ。


しかし実際にラジアルで競技をやってみて,その考えは完全に吹き飛びました。

それまで何となくSタイヤの方がレベルが上,Sタイヤの方が操作が難しい,と思ってたわけですが,何の何の,むしろラジアルの方がずっと難しい。タイヤを気遣って走らないとタイムが出ないため,タイヤの縦横のグリップを考えて走るようになりました。Sタイヤで走ってた時は,本当に雑な運転をしていて,それでも何となくタイムが出ていた...いかにタイヤの性能に助けられていたかってことですよね。

その上,圧倒的にタイヤが長持ちするし,山が減ってもグリップするため1シーズン1セットのタイヤで十分,タイヤ本体も安い。グリップレベルが低いためクルマにも優しく,ドラシャが折れにくい(それでも折れる時は折れるけど)。もう良いことづくめ。というか,もうSタイヤで競技をしようとは思えなくなりました。もうSタイヤには戻れません。


おとーさんは不惑インテ号をクラッシュで失いデミ助に乗り換えたため,偶然ラジアルで走るようになったわけですが,Sタイヤで競技をすることに疲れてしまって,ラジアルで競技を楽しむようになっている人が増えているんだと思います。だからこそ全国でこれだけラジアルのクラスが発展してきているんだと思います。

だとすると,どんどん競技者が減って行ってるこの日本のモータースポーツの危機を救う鍵は「ラジアル組」の隆盛にあるんではないかと思ったりするわけです。


Sタイヤでとことん速さを追求すること。これはもちろん格好良いことです。また全日本にラジアルのクラスがない以上,全日本を目指すドライバーはSタイヤ以外の選択はありません。

でも,もしあなたがSタイヤユーザーで,最近タイヤのやりくりに疲れ「引退」の二文字に魅力を感じるようになってきていたら...本当に引退してしまう前に,ぜひ一度普通のラジアルで非Sタイヤクラスに出場してみて下さい。

きっと,初めてジムカーナを走ったあの日の感動が蘇ってくるはずです。そしてお財布にも圧倒的に優しいラジアルクラスのジムカーナは,疲れたあなたの心を癒し,再び「走ろう」という気にさせてくれるはずです。


Sタイヤ結構。

でもラジアルも本当に良い!

あなたもラジアル組にいらっしゃい〜(笑)


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