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あの手この手


照りつける陽射しに焼かれて上昇する路面温度の如く,ガソリン代はジリジリ値上がりを続け,とうとうハイオクは200円が見えてきましたね。数年間にはとても信じられなかった値段です。

というか,去年にはまだ「本当にガソリン200円時代が来るのか!?」なんてノンキなことを言ってましたが,もういつの間にかみんな180円とか190円とかが当たり前になってしまってて,この分じゃ実際に200円を超えても誰もさほど驚かないでしょうから,人間の「慣れ」のスピードもまた大したモンです。


しかしこうなるともう「モータースポーツやろうぜ!」なんて気軽に言ってられませんな。

リッター200円近くで買った貴重なハイオクが,コースを何周か走っただけで,メーター見て分かるぐらい減っちゃう世界ですから,よっぽどの金持ちか好きモノでない限り続けられません。

デミ助はレギュラーガソリン仕様ですし,燃費もいい方ですから,まだ金銭的負担はマシですが,それでもリッター180円はもう目の前。嫁さんのガソリン代に関するチェックも厳しくなって,なかなかお山に残業になんて行ってられません。


こういった,モータースポーツにとっては大逆風が吹き荒れる状況下で,数年前からJAFの中のワーキンググループが検討していた「モータースポーツ振興策」が明らかになりました。
(→JAFモータースポーツ「JAFからのお知らせ」参照)

「はじめに」から部分的に引用させてもらうと:

わが国のモータースポーツは,日本経済の高度成長に伴う急速なモータリゼーションと相俟って発展の軌跡をたどり,今日まで半世紀以上の歴史を有する。特に世界最高峰のF1レースを長期にわたって開催するなど,このスポーツを多くの国民の間に認知させ,グローバルなスポーツ文化の向上にも一定の役割を果たしてきた。

しかし,この間,1990年代初頭におきた経済のバブル崩壊等による社会状況の大きな変化に加えて,少子高齢化による人口構造の変化や,人々の価値観・趣味の多様化等により,モータースポーツを取り巻く環境は年々厳しくなってきており,若者の間にはモータースポーツ離れが現れてきている。

具体的には,公認スピード行事競技コースや公認カートコースが全国に確保されているにもかかわらず,若年人口の減少等に伴い,四輪競技ライセンスの発給件数や競技会の開催件数,さらには地域で活動の母体となるクラブ・団体の登録数が減少傾向をたどり,モータースポーツの前途に暗い影を落としている。
(以上引用)

このへんの認識は,おとーさんが以前から何度も同じことを書いてる通りで,モータースポーツに少しでも関わる人はみな感じていることでしょう。

ところが最初に書いた通り,事態はここに書かれているよりもっともっと深刻になってきてる。昨年からのガソリン代の高騰,タイヤ代の値上げなどで,モータースポーツだけでなくクルマの維持そのものにかかる経費が大きく跳ね上がっている。

「若者の間にはモータースポーツ離れが現れてきている」とあるけども,実際には「モータースポーツ離れ」どころではなく「クルマ離れ」が深刻になっており,「若者」だけではなくもっとオッサンの間でも「もうボチボチ競技やめようか」ってな空気がそこここで漂ってる。

この「振興策」ではワーキンググループ(メンバーはモータースポーツ関連のお偉いさん8人)が考えたいろいろなアイデアが検討されており,中には非常に興味深いものもあるのですが,何だかまだノンキな雰囲気で,「そんなこと言ってるバヤイじゃないでしょ」と言いたくなる部分もあるんですが。

またメディアへの露出や参加・観戦の推進策なども,どうもサーキットレースが主体になっていて,手軽に参加でき,身近に感じやすいはずのスピード行事の扱いが小さいような印象。ジムカーナのようなナンバー付きの街乗りクルマでできる競技こそ,もっともっとメディアで大きく扱って,「オレもやってみよう」と思わせないといけないのに,お金もかかるし敷居も高いサーキットレースばかり紹介しても,誰も気軽に参加できませんがな。


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検討されてるアイデアの中で,個人的に興味があるのは,ドリフトの人達や非公認レースの扱いに関する部分。「非公認イベントとの連携」という部分で簡単に触れられているだけだけど,ここは大事なんじゃないかなと思うんですよ。

特にドリフトの人達は名阪のコースなんかでもよく見かけるし,おとーさん達JAF公認競技をやってる人間とはあちこちでお互いに接触があるにもかかわらず,どうも仲が良いとは言えない関係で,某が原なんかでも以前から様々な軋轢があったり。

これはとても悲しいことだと思う。

競技の性格やレギュレーションは全く違っても,このクソ厳しい社会状況の中で,お互いにクルマが大好きで走ることが大好きで,金なくってもカロリーメイトやカップ麺食ってがんばってるわけでしょ(そうとは限らんけど)。


ジムカ屋さんの中にはドリフトに対して「あんなことやってて楽しいの?」なんて悪口言う人もいるけどね,あれはね,間違いなく「楽しい」です(笑)。おとーさんは知ってます。

昔,SW(MR2)に乗ってる時,ドリフト練習ばっかりやってたんですよ,実は。

SWって,実際に乗ってる人は知ってると思うけど,リアが重いんで,走り込んでリアタイヤがたれてくると,実に簡単にリアが流れるようになるんですよね。もう,サイドなんか引かなくっても,ブレーキングドリフトでも慣性ドリフトでも簡単。

だからいつも山の中の練習場でパイロンを3本置いて,その周りをわざとリアを流しながらいろいろな進入角度でターンしたりグルグル回ったりしてました。自分ではジムカーナの練習のつもりでしたが,やってることは完全にドリフトですよ。これがまあ楽しい楽しい。リアタイヤはアホほど減りますが(笑)。

もちろんジムカーナの本番で走る時にそういう走りはしませんけど,でもそういう練習してるうちに,ヘタクソなりに少しは速くなりましたし,スピンで沈没する頻度も減りました。

おとーさんなんかとは全然レベルが違いますが,ドリフトの上手い人は普通にサーキット走ってもいいタイムを出してくる,っていうのも常識。

片や純粋にタイムだけを競う競技,片や進入速度やドリフトコントロールなんかの複合採点競技。確かに競技の内容やレギュレーションは全然違うけど,たぶん最終的に求めているものはそんなに違わないような気がするんですけどね。


ところが,両者が同じ場所で練習するとなると,練習方法も内容も違うし,どうしてもコース占有時間の違いが出てくるので,お互いに損得の感情が生じてしまう。また(たぶん)競技者の平均年齢がだいぶ違うので,地元への配慮とかマナーとか安全への意識なんかもある程度違ってくるでしょう。

でもね,以前某が原に行った時に,たまたまシルビアに乗ったドリフト君と2人だけで練習することになったんだけど,彼は若くてもマナーはキチンとしてた。パイロン倒したらちゃんと直してくれたし,最後にパイロン片付けて帰る時も,雨の中をびしょびしょになって手伝ってくれた。一部マナーが悪かったり,安全意識が欠けてる連中も確かにいるけど,それは公認競技をやってる人間の中でもゼロとは言えない。

何とか両者がいがみ合わず,お互いに歩み寄って,異種格闘技統一戦じゃないけど,交流戦みたいなのができれば,結果的にモータースポーツ全体へのプラスは非常に大きいんじゃないかと思うんですけど,ダメでしょうかねえ。

ジムカーナ,ダートラ,ラリー,レース...公認競技のドライバーに思い切りドリフトかましてもらう。結構みな上手いはずですよ。ドリフトのドライバーにはガチンコでタイムを競ってもらう。これまた結構本職に負けないタイムが出たり。面白いイベントになると思うんですけどねえ。


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「モータースポーツ振興策」の話に戻りますがね。

他にも興味深い項目がある。

一つは「各種競技会場における子供向けコーナー開設やアトラクションの実施」という項目。

これは「若者のクルマ離れが進む昨今,子供の時からクルマに対し興味や憧れを抱いてもらうことが特に大切である(以上引用)」という趣旨のものらしいけど,これにはもう一つ大事な効用があって,それは「オヤヂがモータースポーツイベントに参加しやすくなる」ということ。

実際に子連れ,家族連れで競技に参加したことのある人にはよく分かってもらえると思うけど,嫁さん子供連中を会場に連れて行くと,最初のうちは「わーすごい」とか言ってても,だいたい途中から退屈してきて,暑いとか寒いとかトイレが汚いとか腹減ったとか言い出して,結局「もう帰る」ってなるのよね。こちらも競技に参加してる以上,ご機嫌とるのにも限界あるし。

で,そんなこと繰り返してるうちにだんだん嫁さんも子供も「もうおとーさんの応援なんて行かない」ってなってきて,「行くなら一人で勝手に言ってくれば(怒)」とか言われて,だんだん競技そのものに参加しにくい雰囲気になってしまうという定番コース。

スキー場みたいに「託児施設」があればなあ,と思ったことのあるおとーさんも多いはず。

まあミドル戦レベルじゃ無理でしょうけど,地区戦とか全日本ぐらいならそういうのがあってもいいんじゃないかなあ。もちろん単なる託児施設じゃ面白くないので,交通安全教室を兼ねててもいいし,カートとかポケバイとかクルマ関連のアトラクションがあれば一番でしょうけどね。


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もう一つ興味深い項目は「時代に即した競技の企画または認可」っていうやつで,具体的にはヒストリックカーや代替エネルギー車両による競技などが挙げられてます。

F1でも来年からKERS(運動エネルギー回生システム)なんかが採用されますし,これからはモータスポーツもどんどんエコを意識したものになって行くはず。というか,なって行かないといけないでしょう。モータースポーツで開発されたエコ技術が一般車に有効利用されていくのなら,モータースポーツも生き残っていくことができるってもんです。

そういう意味ではジムカーナのような草イベントでも,例えばハイブリッドカーのクラスを積極的に作っていくとか,クラスによって使用ガソリンの量や燃費をレギュレーションによって制御してみるとかはできるはず。個人的には,少なくともミドル戦のような入門イベントでは,もうSタイヤをガンガン減らして走る時代じゃなくなってると思うんですがねえ...


てなことで。

以上の意見は,所詮,素人の戯言ですが,JAFが真剣にモータースポーツの普及に取り組もうとしていることは確かです。あの手この手でテコ入れしないと,このままじゃ日本のモータースポーツは本当に終ってしまいます。せっかくのワークグループの提案が,提案のままで終らないことを願うばかりです。


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