home > diary menu > 2008年 > 8月25日

流れと腰


オリンピック,終わっちゃいましたね。

やってる間はケッコー長くやってるような気もしますが,終わってみれば2週間,何だか4年に一度の真夏の夜の夢,ってカンジですか。


みなさんはどんな競技に注目してましたか?

どんな競技にしても,勝つべき人がきっちり勝つとすごいカッコいい。
あんまり注目されてなかった人が勝つともっとカッコいい。

野球やマラソンはどうも中心選手が調整に失敗しちゃった面があるようで,今後に大きな課題を残しましたね。あ,野球はもう次がないのか...(涙)


おとーさん的には,非常に印象に残ったのがカヌーのスラローム競技

実は,恥ずかしながらおとーさん,今回オリンピックの中継でたまたま目にするまで,こういう競技があるのを知りませんでした。

人工的に作られたものすごい急流...っていうかほとんど「激流」ってカンジのコースのあちこちに,上から吊られたポールでもってゲートが作られていて,ここをカヌーで漕ぎ下りながらタイムを競う,そういう競技。スキーのスラロームにも似てるけどちょっと違う。

ゲートは,単に上流から下流に向けてくぐるだけのものもあれば,わざわざ下流側から旋回して上流側に向けて通過しないといけないものがある。これがね,見てるともうジムカーナのサイドターンそのもの(笑)。うっかり身体がポールにタッチすると2秒のペナルティっていうのも一緒(ジムカーナは5秒ペナルティですけどね)。またゲートを通過し損なうと「ミスコース」にはならないけど50秒加算されて勝敗圏外,ってのも似てる。

それ以外にもね,全体的に,激流の中で翻弄されつつも,船体(っていうのかな)を的確に方向付け,素早く船体の向きを変えて,最短コースをスムースに乗り切った人が早い,っていうのもジムカーナ的。あるゲートをくぐる時にもう次のゲートに向けた方向付けをしているというカンジ。やたらと櫂でガシガシ漕げば速いというのではないみたい。


いや,片やエンジン回してタイヤで地面を掻いて進む乗り物で,片や流れにプカプカ浮いて櫂で船体を操って進む乗り物だから,乗り物としては全然違うわけですが,流れに逆らわず,流れの力を上手く利用して,流れに「乗る」っていうカンジが,ジムカーナの上手い走りに似てるなって感じるんですよ。

全日本とかの上手いドライバーさんの走りを見てると,本当に「流れ」があります。まるでコース上に流れる急流の流れに乗っているかの如く,さーっと流れるとか思うとすっと減速してクルっと車体の向きが変わり,またさーっと流れて行く。本当はクルマ自体が動力をもって自分で動いてるわけだけど,何か見えない強い外力に乗って悠々と流されてるんじゃないかと思うぐらい,流れに逆らわない動きになってる。


実際にコース上に川が流れてるわけじゃないので(時々ホントに流れることもありますが),じゃあ,この「流れ」というのが何の流れなんだろうかと,カヌー競技の中継を観ながらつくづく考えてたんですがね。これはやはり「慣性」なのかなと思うわけです。

クルマが走る時,車体には,クルマ自体が発生している駆動力だけでなく様々な力が働いていますよね。当然ながら重力が働いてますし,いったん動き出せば常に慣性力が存在しますし,路面とタイヤとの摩擦力もあるし,空気抵抗もあるだろうし,コーナリング中なら遠心力も働いてます。これらは全て有機的に関係しながらクルマの動きを規定しているわけですが,この中で最も先ほどの「流れ」に関係するものが「慣性」ではないかと思うわけです。

慣性というのは,運動している物体が,外力が加わらない限り同じ方向に同じ速度で運動しようとする性質のことで,外力が加わるとそれに比例して加速度が生じ,運動のスピードが変わったり,向きが変わったりするわけです(あー,物理は嫌いだ)。

ハンドルを真っ直ぐに持ったままでクラッチを切れば分かるように,クルマの車体は基本的に真っ直ぐすーっと走ろうとしてます。でもジムカーナのコースは曲がりくねってるので(笑),ここに舵が当たり,タイヤの転がろうとする方向が変わって,タイヤと路面の摩擦からコーナリングフォースが発生し,最終的に車体が右か左かに曲がろうとするヨーのモーメントに至る,と。

つまり,真っ直ぐに進もうとしている力がいつの間にか曲がる力に化けている。
でも普通はここで多くの運動エネルギーが熱や音のエネルギーとして放出されロスになる。

上手い人はここの切り替えがスムースでかつ効率がいいんでしょうね。いかに「慣性」をうまく「曲がる」方向に持ち込めるか,っていうところ。「流れ」に逆らわず,うまく流れそのものを曲げるというか。慣性に負けてたら結果的に曲がれないわけだけど,うまく慣性とケンカしないで「まぁまぁ,固いこと言わずここは穏便に...( ̄ー ̄)」とか言いながら慣性さんを自分のペースに乗せていく。つまり「コーナリング上手は世渡り上手」っつーことですか(笑)。


水の流れというのは,今なお,流体力学でも統計力学でも完全には説明のつかない超複雑な現象なのだそうな。古今の文豪が流れに身を任せるか流れに竿して逆らうか悩んだぐらいだから,凡人のおとーさんにはどーにもできないわけですが,それでも「流れるような走り」というのは一つの理想形ではあります。

・・・・・・


カヌー競技を観ててもう一つ思ったことは,「腰」の重要さ。


カヌーは下半身が船の中に入ってて,上半身が櫂を漕いだりバランスをとったりしますよね。その時に全ての軸になってるのが「腰」で,腰を支点にして下半身と上半身がうまくお互いの動きを調節してる。結果的にカヌー全体が,乗ってる人の腰の部分を旋回軸にしてひらりひらりと流れの上を舞うように動く(ロールやピッチングの軸はもっと上にあるようですけどね)。まさに人馬一体の極致。あ,いや,人馬じゃなくって人挺一体ですか。


クルマの場合,旋回軸はドライバーの腰にあるわけじゃありません。ターンの半径ややり方によっても旋回軸は大きく変わってきます。でも車体そのもののヨーの中心軸は比較的ドライバーの身体に近いところにあります。

また,4点式のベルトでバケットシートにくくられてる状態っていうのは,若干,カヌーに乗ってる時の体勢と似てるように思うんですよね。両手・両足・首から上はフリーに動きますし,ベルトをがちがちに締める人以外は上半身も少し動きます。結局,一番がっちり車体に固定されてるのはお尻〜腰周りってことになります。ドライバーの体重を支えるのもお尻〜腰周りです。つまりクルマを運転するという動作も,結局は身体の中で腰が支点になっているわけです。

おとーさんは幸い腰(だけ)は健康で,これまでぎっくり腰というのを知りません。でも腰痛がひどい時は運転の方も全然調子が出せないっていう声は周囲でよく聞きますよね。

調子がいい,クルマの動きがよく分かる,今日は乗れてる,っていう時が,おとーさんのようなド素人ドライバーでもごくたまにあって,そんな時には何故か,自分の手足が腰を中心に自然によく動いて,そしてクルマの車体とも自分の腰を通じてつながっていて,自分がお尻を動かすようにクルマが動いてくれてる,そんな風なカンジになります。
ま,そんなの年に何回か,ホンの一瞬ですけどね(笑)。

それに対して,調子が悪い〜,クルマの動きが全然分からん〜,今日は特に乗れてねぇ〜,っていう時には(まあ1年中ほとんどこっちの状態なわけですが),自分の身体の動きの支点もずれていて,妙に上半身だけ,腕だけバタバタしてたり,やたらと首を傾げてたり,下半身が全く動いてなかったりするような気がします。ちゃんと腰が支点になった動きができてないってことなんでしょうね。


カヌー選手の,腰を支点にして下半身と船体が一体になったあの動き。
奔流にもまれながらもヒラリヒラリと旋回し,ポールの周りをクルっと回るあの舞うような動き。

色んな乗り物の中でも最もシンプルなモノだけに,その動きには奥深いものがあります。

ジムカーナでクルマをドライブする時も,腰を支点にして,自分のお尻を動かすようにクイックイッと車体を旋回できるのが人車一体の境地なんでしょうね。


...なんてオリンピックの中継を観ながら,生意気なことを考えたりするオッサンなのでした。


前のDiaryへ前のDiary | PAGE TOPへPAGE TOP | 次のDiaryへ次のDiary