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初優勝は突然に (その2)


さて,お昼になりました。

いつもなら昼メシなんて食わず真っ先に慣熟歩行に飛び出して,制限時間内ギリギリまでずっとコースを歩き回るおとーさんなんですが,昨年のミドル最終戦の時のように,慣熟歩行のやり過ぎで体力を消耗したり,2本目の出走準備が疎かになったりという失敗をこれまで何回もやっているため,この日はあえてお昼ゴハンを優先しました(笑)。

だってね,オッサンは体力がないから,本番ではちゃんと体調管理に気を配らないとダメなのよ。根性だけでは結果は出ないのよね。おとーさんもミドル参戦3年目にしてやっとこういうことに気がつくようになりました。

...ということで,主催者さんが用意してくれた結構美味しいお弁当をしっかりいただいて,水分もちゃんと補給してからコースに入ります。リラックスリラックス。


さすがにもうコースは頭に入っているので,コース全体をトレースするのは控え目にして,大事なところ,1本目でミスったところの確認作業に時間を使います。

1本目,コース前半の島回りで立ち上がりのラインを間違えて,左を通るはずのパイロンの右に行きそうになってアクセルオフしちゃった。こんなことの2度とないように,進入でアンダーになった場合,途中からはらんでしまった場合,出口でフロントが逃げてアンダーになった場合,逆に出口で回りすぎてしまった場合...いろいろな場合を想定して,ラインがどうなるか,その時に周囲のパイロン群がどういう位置関係に見えるか,目の前がどういう風景になるか,何度も確認しながら頭に叩き込みます。

まだ所々路面には濡れている部分がありますが,お日様がうっすら射してきて,どんどんドライになりつつあります。それでも競技走行中,水溜りに突っ込むと一時タイヤのグリップが下がってクルマの挙動が変わりますから,水溜りの残ってる場所もチェック。

しかし,路面がドライになることでどのくらいタイヤのグリップが変わるか。
これによって足回りのセッティングも変えた方がいいのかどうか。
このへんは,ここを走ったことのないおとーさんには分かりません。

そこで1本目トップのシビックS脇さんをつかまえてあれこれしつこく尋ねます。

彼曰く,「ここはドライでもウェットでもそれほどグリップは変わらない。ウェットなら水で,ドライになれば浮き砂利のせいでタイヤのグリップが奪われるので,どっちにせよぬるーっとした感触に違いはない」とのことなので,極端にセッティングを変える必要はない,と判断。
基本的にウェットに近いセッティングで,ショックの番手もタイヤのエア圧も少しだけドライ方向に変更するのみとします。

さあ,これで準備おっ毛ー。
後は大きなミスをしないように,最後まであきらめずに一生懸命走るだけ。

グリップは大きく変わらなくても,コースへの慣れでおそらくみんな2本目はタイムを大きく上げてくるでしょう。その中でしょうもないミスをして自分だけ沈まないように。とりあえず6位入賞キープが目標だぁ!

いつもは「何が何でも表彰台に上がるぞ!」とか「できれば表彰台のてっぺんを!」とか目標が誇大的でしたが,今日は目標設定がやけに現実的(笑)なので大して緊張もしてません。
リラックスモードのまま。

だってさ。
これまで本番でサイドターン自体ほとんど成功したことない人なんだもん ヽ(´ー`)ノ
それがこんな所で1本目6位に入っただけでも,実際,よくがんばったと思うよ。

2本目は,ここへ来るまで一生懸命練習した分,自分で納得行くような走りをできたらいい。
最後のパイロンまで力を抜かず必死で走り切るぞ!


さあ。
N1クラスから2本目の走行開始。


とりあえず急ぎトイレに行って用を足し,そのまま不惑インテ号に乗り込んで運転席でイメトレをくり返します。

特に1本目でミスった部分2ケ所については,クルマが色々な向きになった際のパイロン風景を頭の中でシミュレーション。こっちを向いたらこうやって脱出,あっちを向いちゃったらこんな風に回避...口の中でぶつぶつ言いながら,実際にハンドルに当てた手をグルグル回しながら。相変わらず危ないオッサンです。

しかしゼッケン15番なので,車内で怪しい儀式を長く執行する間もなく出走順が回ってきます。
そしてまた左回りの1番パイロンとご対面しながらスタートラインに。ちょっとドキドキしてきますが,とりあえず一生懸命走るだけ,それだけよ,と自分に言い聞かせます。


そして,前走車がコース後半に入り,スターターのお兄さんが3・2・1と指を折って,さあ,スタート! 回転は若干抑え気味でほとんどホイールスピンなしにするするっと走り出します。

最初の左回りのサイドターン,1本目と同じような感じで,パイロンから少し離れて何とかターン! そして続けて左の270度ターンはまずまずの出来。

スラロームを抜けた右の180度ターンはやはりパイロンからちょっと離れますが,立ち上がりで止らずにそのままクルマを前に出すことができました。このへんは年明けの寒い寒い練習会でtaroさんや縁石番長さんから指摘を受けて,その後徹底的に練習したところだからね。

その後スラロームを逆に抜けて,アメーバセクション。
おそらく1本目のパイロンタッチはこのセクションのどこかで取られたっぽいので,1本目より若干マージンをとってパイロンをクリア。サイドを引きたくなるところもグッとガマン。ヘタなサイドターンするよりはグリップで確実に。

そして島回り。ここも後でビデオで見ると1本目より若干パイロンと距離がありますが,まあ無難にクリア。1本目はここの脱出でミスったため,慎重に慎重に,頭の中でシミュレーションした通りに立ち上がります。

左270度ターンは1本目よりはマシですがやはりパイロンからは遠い(汗)。でも脱出でクルマは止らずちゃんと動き続けてます。

お得意高速セクションはしっかりアクセルを床まで踏み抜いて,さあコース後半に突入。


最初のシケインは無難に処理。島回りに折り返すところもサイドは引かずにグリップで確実に。このへんは1本目と同じ。

2つ目の島回りは1本目と比べるとサイドを強く引きますがあまり回転半径は小さくなりません。ただ何回かサイドをガコガコ引くうちに270度ほど旋回したところでやっと微妙にリアが出てくれて,1本目よりは小さい回転半径で脱出成功。

次の左180度は意外に回りにくいことが1本目で分かってるので,サイドが不発だった時のことも考えたラインで進入。そしたら案の定リアが流れず,グリップでハンドルぎりぎり回しながら必死で脱出。

さあ,この後の部分は最もシミュレーションを一生懸命やったところ。1本目大失敗して大きくロスった部分。コースを90%走り切った最後の最後に一番の難関を持って来るあたり,さすがに主催者さんもニクイね!

しかし,やはり,と言うべきか,予想以上にこの時点で身体に疲労が出ていて,左ターンを必死で立ち上がった時点でもう両手がヘロヘロ笑っている。身体の疲労を自覚した途端に精神的にもドッと疲労が出てきて,虚脱感というか寂寥感というか,一瞬集中力が切れてしまって,何とも言えないウツな感じに襲われる。

しかし。

ここで投げたらアカンのや!(昔そういうCMがあったな)

去年の夏から必死で走りの改造に取り組んで,恥ずかしくて誰にも言えんようなアホな練習も毎日やりながらここまで来たんやないか。嫁さんからバカにされながらも体力向上のためにスイミング行ったり,ジムに通ったり,これまた恥ずかしくて人に言えんような練習をやったりして腕力や持久力を養って来たんやなかいか。

投げたらアカンのや。最後までがんばらんかい。

ヘルメットの奥で自分自身に「がんばれ,がんばれ,がんばれ...」とつぶやきながら必死でハンドルを回します。ぐりぐりハンドル回します(サイド引けよ)。

本当に精根尽き果てたへろへろ状態でゴール!


アナウンサー:来たぞ来たぞ...33秒592,トップじゃないか! ターゲットタイム更新だ! ターゲットタイムは33秒台になったぞ...


アナウンスがかすかに聞こえます。


33秒台か...たぶんこの後ベテランの速い人達が31秒台までは行くだろうけど,まあ何とか10位以内でポイントはとれたかな...

ガッツポーズするほどのタイムではありません。
どうせこの後すぐに更新される,つかの間のトップタイムです。

それでも,とにかく自分が最後まであきらめず一生懸命走り切った,このことには地味に満足感が湧き上がってきました。泣きそうになりながら,自分に「がんばれがんばれ」つぶやきながら,必死でとにかく走り切ったからねぇ。

パドックに帰る途中,見ていたももさん,よこ@みらげさん,遠くから観戦に来てくれてた仕事関係のお友達が「1位だよ〜」って祝福してくれて,とってもうれしかった。でも1位なのは今だけだし。すぐにタイム更新されるし。

でもまあ,何とかポイントはとれたかな。とりあえず6位までには入れたかな。
良かった。何とか目標は達成できたかな。これでパイロンアレルギーもちょっと治るかな。

そんなことを思いながらパドックに戻り不惑インテ号から下ります。

よくやってくれたなあ,ありがとうよ。初めての,超苦手のフルパイロンジムカーナで入賞できたかも。お前と一緒に地味に努力してきたもんなあ...

フェンダーのあたりをちょっとなでてやったら,不惑インテ号も「エヘっ」と笑ったような気がしました(妄想)。


一応暫定1位のため再車検の呼び出しがあるかなと思ってクルマのところでしばらくボーっと待ってたんですが,待てど暮らせど誰も来ない。こりゃもうあっさり4位以下に落ちたんだな,しかし短い天下だったな〜と苦笑しながら,他の人の走りを見るためにコースの方に戻ります。


・・・・・・


N2クラスの最後の数台が華麗にコースを舞っています。

上手いなあ...いつかあんな風に走りたいな。
シビックのS脇さんはどうだったのかな。ひょっとして1分30秒切ってたりして。

しかしここで,ももさんと,よこ@みらげさんから超意外な事実を知らされます。

「まだ誰も不惑さんのタイム更新してないよ。」
「結構チギってるしまだまだ1位だよ。」



...へえぇ。


すいません。正直そう思いました。

だってあり得ないでしょ。

これまでただの1回も本番でちゃんとサイドターン回れたことがない人なのに。
いつもサイドターンをミスって表彰台をふいにしてきた人なのに。
だから参戦3年目にして今日初めて本格的なフルパイロンのコース走る人なのに。
1本目で6位に入ったので大健闘だったんだよ。

ほら,見ててみ。今,目の前でタイム更新されるから。

今走ってるこの人,すごい速いやん。昨年もシリーズ上位の大ベテランだよ...
1分39秒。

次の人はすごい走りがきれい。ああ,あの美人ドライバーさんか,絶対速いよ...
1分35秒。

ほら,次のこの人もすごく上手いよ。きれいにターン決めてるやん...
1分47秒。

次のクルマはシルビア...あれ? ということはN2クラスはもう終わり?

え?どういうこと? おとーさんが1番速かったの? そんなのあり得ないでしょ。
誰が1位だったの? 教えてよ,おとーさんはいったい何位だったの?


・・・・・・


すいません。

思いっきりネタ引っ張りやがってイヤミなヤツ,とか思わんとってね。
でも,本当にこんな感じだったんです。

「狐につままれた」っていうんでしょうか。

これが名阪Cの高速コースで,とか,鈴鹿南で,っていうならおとーさんも最初から心のどこかで「優勝したいなあ」と思ってるから,「優勝キタ−−−−−−−!」ってなるんでしょうけど,ここ姫路で初優勝になるとは夢にも思ってなかったし。

クラブのみんなや,今回3位に入ったシビックS脇さん,見学に来てくれた友人達に祝福されても,実際に表彰台のてっぺんに立っても,今一つ実感のわかないおとーさんなのでした。


そのわりにうれしそうな顔はしてます。ヤなヤツです。あと,足短いですね。

(撮影:ももさん,よこ@みらげさん,180さん thanks!)


後で何回もビデオで自分の走りを見直しましたが,やはり優勝した人の走りとはとても思えないカッコ悪い走りです。


※実際の走行ビデオ 撮影:よこ@みらげさん thanks!


たぶん良かったのは,サイドがヘタなので,きれいにサイドを決めることにこだわらずグリップで確実に走ったことと,とにかく最後まで一生懸命走り切ったこと,ぐらいでしょうかね。

欲がなかったというか,勝てるなんて最初から全く思ってなかったので,何のプレッシャーもなくリラックスして走れたのも良かったんでしょうね。ポイントとれたらOKと思ってたわけですし。


・・・・・・


帰りの渋滞の中でもまだ腑に落ちないおとーさん。

マグレだよね,うん。マグレ。何かちょっと手違いが起こったのよね。
ひょっとしたら光電管が壊れてたのかもしれないし。
タイヤのカスか何かが飛んで誤作動したのかもしれないし。

運転しながら必死でそう思おうとしてます(笑)。


でもね。

ハンドル握ってウーロン茶を飲んでる時に,不意に思い出したんですよ(プルーストか)。
ジムカーナを始めてからはずーっと忘れてたこと。ある事実を。


それは,

...実際のジムカーナを初めてこの目で見て大感動して,競技活動を始めるキッカケになったのはこの姫路セントラルパークの駐車場だったということ。

あの日,あの時,あの場所で。

色とりどりの競技車。
林立するパイロン群。
キラキラ光るフロントガラス,ハデなスキール音,信じられないクルマの動き。
夜の峠道とは全然違うホンモノの世界があった。
カッコ良かった。自分もやりたくなった。

本当に不思議なくらいこれまで思い出さなかった事実が,唐突に脳裏に蘇ってきたんですよ。

今日もたまたま通りかかった家族連れや若いカップル達が駐車場の横で熱心に観戦してくれてました。あの中からジムカーナを本当に「やってみよう」って思う子が出るのかな。
おとーさんの走りを「カッコいい」って思ってくれた人がいるのかな。

ジムカーナっていいな...競技に戻って本当に良かった...
あの日見たCR-Xやシビックみたいにカッコ良くは走れないけど,いつの日かあんな風に走りたいな...がんばろう...もっともっとがんばって速くなろう。カッコ良くなろう。


ジムカーナに担当の神様がいるなら(なぜか女神様のイメージ),15年ぶりに自分の出発点に戻って来た,その頃とくらべてめっきり老けたこのオッサンを,「よく帰って来たね」って歓迎してくれたのかもしれない。年甲斐もなくヘロヘロになってジムカーナにのめり込むこのオッサンの努力に同情してちょっとばかり幸運を恵んでくれたのかもしれない...


でもね,女神様。

今度はお情け無用です。
次回は自分の力で勝ちます。
もうジムカーナから逃げません。
見てて下さい。

がんばって,がんばって,もっと速くなります。絶対です。


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