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2006年 > 3月14日
これでいいのだ 〜2006年ミドル開幕戦〜
2006年3月12日午前4時15分。
初めてのチュウ〜♪
耳元で鳴り響く素っ頓狂な携帯のアラーム音でおとーさん(41歳)は目覚めた。
隣で寝ている嫁さんを起こさないようにゴソゴソと布団を抜け出し,窓のところまで行って,カーテンをめくって外をうかがい,そして,思い切りため息を一つ。
「もう降っとるやんか...」
そう。
前日までの陽気がウソだろ!っていうぐらい,冷たい雨がしっとりと街を濡らしておりました。
天気予報では朝の9-10時ぐらいから降り出すことになってたのに...
もともと昔からウェットの方が順位の良かったおとーさん,ホントは雨なら喜んでもいいぐらいなんですが,雨用のタイヤのセットに不安があること,年末のクラブの練習会でウェットが全然マトモに走れなかったこと,先日の峠残業の帰り道でもウェット路面でガードレールとニャンニャン(死語)してしまったこと...これらのことからウェットについては完全に自信喪失しており,できればウェットは避けたかった。
しかし窓の外は雨。しっかり雨。
う〜ん,だいじょうぶかなぁ... f(^-^;)
どんよりした空模様に負けず重た〜い気分で家を出ます。
しかも,大阪から奈良に入りクルマを南へ走らせるほど雨は本降りに。路面には水が浮いて完全なヘビーウェットです。ひょっとして名阪SL方面ではまだ降りだしてなかったり...とかいう甘い期待は完全に打ち砕かれました。途中のコンビニで買い物する時も,クルマを降りて店まで歩くのに傘が要るぐらいの本降り。
6時直前に名阪SL到着。
やはり路面は完全なウェットで,パドックにはところどころ水溜りもできてます。時々,をいをいっていうぐらいの突風も吹きつけてくるひどい荒天。競技が始まる前からみんなびしょびしょの状態で走行準備。
おとーさんの持ってるウェット用のフロントタイヤは定番の195-55/15,TRコンパウンド。でもこのタイヤ,年末の練習会でウェットながら舞洲を数本走っており完全な新品タイヤではありません。ドライならばこのタイヤをリアに履こうと思ってので,リアには通勤で普段履いてる5部山タイヤをそのまま使うしかにゃい。こ,これでいいのか? さらに不安がつのります。
でも,まあさすがにこの路面だと,いくら溝あってもドライ用の新品タイヤよりは中古でも雨用のFタイヤの方がいいかな...リアの5部山は不安だけど,鈴鹿南のウェットでもこのタイヤでそこそこ走れたから何とかなるかなあ...
いろいろ悩みながらタイヤを履き替えてるうちに師匠やクラブのみんなも集合。あっという間にガレージがモーターホームに変身。素晴らしい!こういう天気の時は本当に助かります。
さて,発表されたコースはこんなカンジ↓
大きな島回り2つを緩急いろいろなS字で結んだようなレイアウトで,1〜2速ばっかりの低速コースながら,どこをミスっても大きくタイムに響きそうな気の抜けないコースっぽい。しかも路面はこれでもかっていうぐらいのヘビーウェット。走る前からビビリ入ります f(^-^;)
相変わらずの吹き降りの中,師匠を囲んでコース上に慣熟歩行に出ます。
師匠からはいろいろと作戦指示が。一言たりとも聞き落とさないように耳をダンボにしながら師匠の後ろをてくてく歩きます。
おとーさん,上下雨ガッパで完全武装,傘なんて要らねーよ ( ̄ー ̄)v のつもりでしたが,長靴を忘れたため耳なし芳一のごとく足だけヘビーウェット。
足元から身体の熱が逃げて寒い寒い。
中に水のたまったスニーカーからぐちょぐちょ淫靡な音を立てながら,コースを時間いっぱいまでしつこく歩きます。 何だかまだラインをつかみきれてないところや,ギアの選択に迷うところはありますが,とにかく1本走って2本目に修正する方向で。
全日本選手のデモ走行の後,競技が始まります。
しかし...最初に走るエキスパートクラスの有名選手ですら,視界の悪さでミスコースしたりハーフスピンしたり。こんな状態でおとーさんマトモに走れるのか?思い切り不安になってきますが,先日の雨の鈴鹿南を思い出し,とりあえず自分なりのセッティングで,自分なりの走りをするべく不惑インテ号に乗り込みます。
何せ昨年の実績がほとんどないないおとーさん,ゼッケンはN2クラス19台中3番手。すぐに出走順が回ってきます。もちろん速い人・実績のある人ほどゼッケンは後になるのよ。当然よね,オホホホホ。
頭の中でコースのイメトレをしながら出走の列に並び,少しずつクルマを前に進ませ,いよいよスタートライン。今回は左斜めにスタートしていくためクルマをいったん右にちょっと振ってから左にステアを切ってスタートラインに合わせます。あれ,ちょっと斜めに停めすぎたかな...まあいいか。
スターターを勤める全日本の有名選手がこちらを向いて合図し,指を折ってカウント...3...2...1...GO!
おとーさん,大声で「よし!」と叫んでクラッチをつなぎます。
ごごごごご...若干ジャダーは出ますが割にスムースにクルマは前に出ます。
2速に入った,その途端に1速に落としながら右に折り返し。
素早く立ち上がって,真っ直ぐ走り,オニギリ頂点に向けて左ターン。
オニギリ頂点はそのまま通過して新設コースの島を1つひっかけ,一番左奥のコーナーを折り返して,三日月からインフィールドに進入,イトウ工業コーナーの島を大きく右に回ってもう一度三日月からインフィールドに。
しかしインフィールド真ん中の島を半分回ってオニギリへ向かうところで致命的なアンダーが。完全にラインを外しヨレヨレになりながらオニギリを通過,その後のS字も今一つタイミング合わず。ぐるっと島を回る時にもリアが遠慮なくズルズル流れるが,これは何とかコントロール。
何とか気を取り直してその後は大きなミスなく,右奥のヘアピンを無難に立ち上がり,最後のパイロンに。ここはうまくリアを流しながらクリア。そしてゴール!
慌てて窓を開け,タイムに耳を澄ましますが聞き取れません。まあ,途中で大失敗してるから大したタイムでないことは確か。でも路面状態は「絶対にこれ以上は悪くならない」っていうぐらい最低のコンディションだし,失敗してるところは明らかなので2本目で別のところを失敗しない限りはタイム上がるでしょう。
ということで,早くも2本目に期待を寄せながら,大失敗したわりにスッキリした気持ちでパドックに引き上げます。師匠からは開口一番「抑え過ぎや」とのコメント。確かに,もっと踏めたし,もっと突っ込めた,それは自分でも実感。でも,自分のリカバリー能力に全然自信を持てないんだもん,どうしても抑えますよ,師匠(泣)
しばらく1本目の走りについてみんなといろいろ話をしていると,何か微妙な話の食い違いに気づく。「それでもタイムは悪くなかったよ。アレがなけりゃ,なあ...」
???...「アレ」???
おとーさん:...ア,アレって何すか?
みんな:え,気づいてなかったの? スタートのパイロンに触ったやん(笑)
ががーん!パイロンタッチのペナルティまで食らってました (;´д⊂)
しかも,スタートラインのパイロン。そんなモンにキスするヤツいるんだねぇ...やはりスタートラインについた時に斜めに停め過ぎたのが原因だな。
初めてのチュウ〜♪
今朝一番に鳴り響いた携帯の目覚まし音が思い出されます。
やっぱアレがいかんかったか...後で変えとこう f(^-^;)
峠のガードレールやらスタートパイロンやら,色んなモノにチュウ〜♪しまくってるおとーさん,それでもペナルティ5秒を引いた1本目の生タイムはN2クラス4位相当であることが判明。
ひょっとすると,これでいいのかな...
微かながら自分の走りに自信が戻ってきます。大失敗して4位相当だから,他の部分の走りは間違ってなかったんだよね? ね?
お昼の慣熟歩行も,みんな早々にパドックへ引き上げる中,スニーカーをぐちょぐちょ言わせながらしつこくしつこくコースを歩いたり走ったり。特に1本目で失敗した,イトウ工業コーナーの島回りから三日月を通ってインフィールドに入り,だんだん緩くなって行くS字の連続あたり,この辺を重点的にウロウロ。
途中から寒さで手足の指が引きつって動かなくなってきましたが,寒いとか言ってる場合じゃない。かじかむ手足をギコギコいわせながら何度もS字を行ったり来たり歩くうちに,何となく走行のイメージが分かってきた。もちろんコースは全然違うけど,何となく雨中の鈴鹿南S字コーナーのイメージで走れるような気がしてきた。ラインとかリアの出し方とか。
そう思い始めると,最後の右奥のヘアピンも鈴鹿南の3-4コーナーをウェットで走るイメージで行けるような気がしてきた。奥まで突っ込んで行ってぐるっと回るあたり。
いや,もちろん無理やり鈴鹿南に結び付けて考えることなんてないんだけど...
自分の走行イメージがつかめないアイデンティティ喪失状態のおとーさんにとっては,昨年ほとんど結果を出せなかったおとーさんにとっては,この2月に行った雨の鈴鹿南コースで一生懸命走り込んだ時の走行イメージ,それぐらいしか心の拠り所に出来るもんがないんですよ...
午後の走行が始まり,またしてもすぐに走行順が回ってきます。
これでいいのだ...これでいいのだ...
まだ半信半疑ながら,かろうじて自分のモノになりかけている「何か」を握りしめながら,走行待ちの列に不惑インテ号を並ばせます。目を閉じ,1本目の走行イメージや鈴鹿南の走行イメージを頭に思い浮かべ,イメトレをくり返します。
あと4台...あと3台...いよいよN2クラスの走行が始まります。
N2クラス1台目は,おとーさんと同じショップ製のインテグラに乗るHさん。昨年のミドル戦では表彰台にも上がられている,練習会でも時々お名前を見かける猛者です。なぜこの人がファーストゼッケンなんでしょう...
案の定,素晴らしい走りで,ファーストゼッケンながら1本目のタイムから2.5秒も上げてぶっちぎりの1番時計。1分15秒台から一気に1分12秒台ですよ...信じられねぇ...
せっかく取り戻しかけた自信が再びグラグラと揺らぎますが,いやいや待て待て,雨が小降りになって路面の水が少し引き,気温も上がってきてるし,それでタイムが上がったに違いない,こちらも1本目のS字のミスがなければ間違いなく2秒は上がるはず,とりあえず大きなミスだけはしないように走ろう...何とか冷静に自分を抑えようとします。
そしておとーさんの番。今度は角度に気を付けて(汗)スタートラインに止ります。
3...2...1...GO!
「よし,行け!」とか何とか大声を出しながらクラッチミート。
ごごごごご...1本目と同じカンジで走り出します。今度はパイロン触ってないだろうな(笑)
最初の折り返し,オニギリから外周へ,島を1つひっかけて左奥のコーナーを回り,三日月からイトウ工業コーナー島回りへ...うん,1本目と同じくいいカンジで走れてます。
そして問題のS字連続。
さっきアンダーを出したところでグッと我慢,ラインを外さないようにコーナー1つずつ抜けるごとに加速して行きます。
よーし!行けた!
もっと踏めたし,突っ込める余地はありましたが,ラインは狙った通りのところを走れました。
2つ目の島回りも無難にこなし,奥のヘアピン,最後のパイロン,いずれもうまくリアを出しながらまとめることができました。
もっと攻めれたかな...と思いつつ窓を開けてタイムを聞くと...
12秒台キタ−−−−−−! しかしトップにコンマ1秒及ばず−−−−−!
とのアナウンス。
12秒台に入ったんだ...僅差の2番手なんだ...
何か状況がよく分かりません。いや,分かってるけどピンと来ないというか。そんなことより,冷え切った状態からフル活動したために左足のふくらはぎがこむら返り起こしかけてます...痛たたたたた。
そのまま自分のパドックに帰りそうになりましたが(笑),走行後,3番手以内だと再車検のため車検場に呼ばれます。これまでの競技人生で初めて再車検場にクルマを停めます(クローズド競技では再車検ないもんね)。
クルマの中でボーっと他の人のタイムに耳を傾けていると,何だか運転席の横に人がいっぱい寄ってきてる。え?何?何?俺なんかヤヴァイことした?
窓を開けると,師匠やクラブのみんながお祝いに来てくれたのでした。
...あ,ありがとうございます (;´д⊂)
「こんなところで喜びを分かち合わないで下さい」とオフィシャルの人に怒られましたが(笑)
でもこの時点ではまだ,ヒガミ根性の強いおとーさん,雨が小降りになって路面はどんどん良くなってきてるし,どうせこの後,後半ゼッケンのベテラン勢にがんがん抜かれてギリギリまたポイントに届かないとかそういうオチになるんとちゃうんか...
なんてイジけたことを思ってましたが...
最終結果は4位。
3位とは0.09秒差。トップとも0.7秒差。
我ながら立派なモンです。
最悪の路面状況の中,ガチンコ勝負のN2クラスで公式戦初表彰ですよ。
「これでいいのだ」
やっと自信を持って言える何かをつかんだ気がします。
この1年間,そしてこのオフの間,悩みながら苦しみながらあれこれやってきたことは間違ってなかった。おとーさんとおとーさんの不惑インテ号は間違いなくミドル戦N2クラス歴戦の猛者たちと互角に渡り合える位置にある...
「うれしい」というより「ホッとした」,この方が大きいでしょう。
パドックに帰ると師匠やクラブのみんながもう一度祝福してくれました。今回おとーさんと僅差で5位に入られたシビックのSさんもパドックに来てくれました。Sさんは,去年おとーさんが公式戦に復帰して走り始めたダメダメの頃から光栄にもライバル視して下さってたんですが,今回やっと本当にライバルとして結果を競うことができました。ありがとう...次回は一緒に表彰台に上がりましょう!
↑表彰式の模様。右は同じショップのインテに乗るHさん,左がシビックのSさん。
昨年10位に入って初ポイントもらった時は泣けて泣けて仕方なかったのに,何故か今回は涙のなの字も出ないなあ...と思っていたら。
表彰式も全て終わって家に帰り,クルマを下りてガレージの中で不惑インテ号と対峙したその時,不意に鼻の奥がツーンとしてきました。お前,よくがんばってくれたなあ...あんな雨の中でこんなヘボオヤジの運転でよくちゃんと走ってくれたなあ...4位だよ...1位までたった0.7秒だよ...ありがとう...やっと自信を取り戻したよ...い,いかん!やっぱり目頭が熱くなってきた。
いや,泣かんぞ。
今度は表彰台...いや表彰台の真ん中に立つまでは泣かんぞ。
右フロントにガードレールとのキスマークがまだかすかに残る愛車に向かっておとーさんは固く誓ったのでした。
これでいいんだよね?
うん。
これでいいのだ!
PS:
見事なデビューウィン,おめでとうございます!
次回はオイラもマジで表彰台の真ん中を狙いまっせえ!>ミラポンさん
今回は残念な結果やったけど,アンタはそんなモンやない。
必ず次戦は表彰台上がるんやでえ〜>U氏
次戦,楽しみに待ってまっせぇ〜>36すぺっくさん,白兄さん
とんでもない天気の中,今回も本当にありがとうございました&ご苦労様でした!次戦もがんばりましょ!>師匠,ももさん,クラブ員のみんな
またしてもめっちゃ長文の日記を読んで下さってありがとう!>ここを読んでくれてるみなさん
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これでいいのだ 〜2006年ミドル開幕戦〜
2006年3月12日午前4時15分。
初めてのチュウ〜♪
耳元で鳴り響く素っ頓狂な携帯のアラーム音でおとーさん(41歳)は目覚めた。
隣で寝ている嫁さんを起こさないようにゴソゴソと布団を抜け出し,窓のところまで行って,カーテンをめくって外をうかがい,そして,思い切りため息を一つ。
「もう降っとるやんか...」
そう。
前日までの陽気がウソだろ!っていうぐらい,冷たい雨がしっとりと街を濡らしておりました。
天気予報では朝の9-10時ぐらいから降り出すことになってたのに...
もともと昔からウェットの方が順位の良かったおとーさん,ホントは雨なら喜んでもいいぐらいなんですが,雨用のタイヤのセットに不安があること,年末のクラブの練習会でウェットが全然マトモに走れなかったこと,先日の峠残業の帰り道でもウェット路面でガードレールとニャンニャン(死語)してしまったこと...これらのことからウェットについては完全に自信喪失しており,できればウェットは避けたかった。
しかし窓の外は雨。しっかり雨。
う〜ん,だいじょうぶかなぁ... f(^-^;)
どんよりした空模様に負けず重た〜い気分で家を出ます。
しかも,大阪から奈良に入りクルマを南へ走らせるほど雨は本降りに。路面には水が浮いて完全なヘビーウェットです。ひょっとして名阪SL方面ではまだ降りだしてなかったり...とかいう甘い期待は完全に打ち砕かれました。途中のコンビニで買い物する時も,クルマを降りて店まで歩くのに傘が要るぐらいの本降り。
6時直前に名阪SL到着。
やはり路面は完全なウェットで,パドックにはところどころ水溜りもできてます。時々,をいをいっていうぐらいの突風も吹きつけてくるひどい荒天。競技が始まる前からみんなびしょびしょの状態で走行準備。
おとーさんの持ってるウェット用のフロントタイヤは定番の195-55/15,TRコンパウンド。でもこのタイヤ,年末の練習会でウェットながら舞洲を数本走っており完全な新品タイヤではありません。ドライならばこのタイヤをリアに履こうと思ってので,リアには通勤で普段履いてる5部山タイヤをそのまま使うしかにゃい。こ,これでいいのか? さらに不安がつのります。
でも,まあさすがにこの路面だと,いくら溝あってもドライ用の新品タイヤよりは中古でも雨用のFタイヤの方がいいかな...リアの5部山は不安だけど,鈴鹿南のウェットでもこのタイヤでそこそこ走れたから何とかなるかなあ...
いろいろ悩みながらタイヤを履き替えてるうちに師匠やクラブのみんなも集合。あっという間にガレージがモーターホームに変身。素晴らしい!こういう天気の時は本当に助かります。
さて,発表されたコースはこんなカンジ↓
大きな島回り2つを緩急いろいろなS字で結んだようなレイアウトで,1〜2速ばっかりの低速コースながら,どこをミスっても大きくタイムに響きそうな気の抜けないコースっぽい。しかも路面はこれでもかっていうぐらいのヘビーウェット。走る前からビビリ入ります f(^-^;)
相変わらずの吹き降りの中,師匠を囲んでコース上に慣熟歩行に出ます。
師匠からはいろいろと作戦指示が。一言たりとも聞き落とさないように耳をダンボにしながら師匠の後ろをてくてく歩きます。
おとーさん,上下雨ガッパで完全武装,傘なんて要らねーよ ( ̄ー ̄)v のつもりでしたが,長靴を忘れたため耳なし芳一のごとく足だけヘビーウェット。
足元から身体の熱が逃げて寒い寒い。
中に水のたまったスニーカーからぐちょぐちょ淫靡な音を立てながら,コースを時間いっぱいまでしつこく歩きます。 何だかまだラインをつかみきれてないところや,ギアの選択に迷うところはありますが,とにかく1本走って2本目に修正する方向で。
全日本選手のデモ走行の後,競技が始まります。
しかし...最初に走るエキスパートクラスの有名選手ですら,視界の悪さでミスコースしたりハーフスピンしたり。こんな状態でおとーさんマトモに走れるのか?思い切り不安になってきますが,先日の雨の鈴鹿南を思い出し,とりあえず自分なりのセッティングで,自分なりの走りをするべく不惑インテ号に乗り込みます。
何せ昨年の実績がほとんどないないおとーさん,ゼッケンはN2クラス19台中3番手。すぐに出走順が回ってきます。もちろん速い人・実績のある人ほどゼッケンは後になるのよ。当然よね,オホホホホ。
頭の中でコースのイメトレをしながら出走の列に並び,少しずつクルマを前に進ませ,いよいよスタートライン。今回は左斜めにスタートしていくためクルマをいったん右にちょっと振ってから左にステアを切ってスタートラインに合わせます。あれ,ちょっと斜めに停めすぎたかな...まあいいか。
スターターを勤める全日本の有名選手がこちらを向いて合図し,指を折ってカウント...3...2...1...GO!
おとーさん,大声で「よし!」と叫んでクラッチをつなぎます。
ごごごごご...若干ジャダーは出ますが割にスムースにクルマは前に出ます。
2速に入った,その途端に1速に落としながら右に折り返し。
素早く立ち上がって,真っ直ぐ走り,オニギリ頂点に向けて左ターン。
オニギリ頂点はそのまま通過して新設コースの島を1つひっかけ,一番左奥のコーナーを折り返して,三日月からインフィールドに進入,イトウ工業コーナーの島を大きく右に回ってもう一度三日月からインフィールドに。
しかしインフィールド真ん中の島を半分回ってオニギリへ向かうところで致命的なアンダーが。完全にラインを外しヨレヨレになりながらオニギリを通過,その後のS字も今一つタイミング合わず。ぐるっと島を回る時にもリアが遠慮なくズルズル流れるが,これは何とかコントロール。
何とか気を取り直してその後は大きなミスなく,右奥のヘアピンを無難に立ち上がり,最後のパイロンに。ここはうまくリアを流しながらクリア。そしてゴール!
慌てて窓を開け,タイムに耳を澄ましますが聞き取れません。まあ,途中で大失敗してるから大したタイムでないことは確か。でも路面状態は「絶対にこれ以上は悪くならない」っていうぐらい最低のコンディションだし,失敗してるところは明らかなので2本目で別のところを失敗しない限りはタイム上がるでしょう。
ということで,早くも2本目に期待を寄せながら,大失敗したわりにスッキリした気持ちでパドックに引き上げます。師匠からは開口一番「抑え過ぎや」とのコメント。確かに,もっと踏めたし,もっと突っ込めた,それは自分でも実感。でも,自分のリカバリー能力に全然自信を持てないんだもん,どうしても抑えますよ,師匠(泣)
しばらく1本目の走りについてみんなといろいろ話をしていると,何か微妙な話の食い違いに気づく。「それでもタイムは悪くなかったよ。アレがなけりゃ,なあ...」
???...「アレ」???
おとーさん:...ア,アレって何すか?
みんな:え,気づいてなかったの? スタートのパイロンに触ったやん(笑)
ががーん!パイロンタッチのペナルティまで食らってました (;´д⊂)
しかも,スタートラインのパイロン。そんなモンにキスするヤツいるんだねぇ...やはりスタートラインについた時に斜めに停め過ぎたのが原因だな。
初めてのチュウ〜♪
今朝一番に鳴り響いた携帯の目覚まし音が思い出されます。
やっぱアレがいかんかったか...後で変えとこう f(^-^;)
峠のガードレールやらスタートパイロンやら,色んなモノにチュウ〜♪しまくってるおとーさん,それでもペナルティ5秒を引いた1本目の生タイムはN2クラス4位相当であることが判明。
ひょっとすると,これでいいのかな...
微かながら自分の走りに自信が戻ってきます。大失敗して4位相当だから,他の部分の走りは間違ってなかったんだよね? ね?
お昼の慣熟歩行も,みんな早々にパドックへ引き上げる中,スニーカーをぐちょぐちょ言わせながらしつこくしつこくコースを歩いたり走ったり。特に1本目で失敗した,イトウ工業コーナーの島回りから三日月を通ってインフィールドに入り,だんだん緩くなって行くS字の連続あたり,この辺を重点的にウロウロ。
途中から寒さで手足の指が引きつって動かなくなってきましたが,寒いとか言ってる場合じゃない。かじかむ手足をギコギコいわせながら何度もS字を行ったり来たり歩くうちに,何となく走行のイメージが分かってきた。もちろんコースは全然違うけど,何となく雨中の鈴鹿南S字コーナーのイメージで走れるような気がしてきた。ラインとかリアの出し方とか。
そう思い始めると,最後の右奥のヘアピンも鈴鹿南の3-4コーナーをウェットで走るイメージで行けるような気がしてきた。奥まで突っ込んで行ってぐるっと回るあたり。
いや,もちろん無理やり鈴鹿南に結び付けて考えることなんてないんだけど...
自分の走行イメージがつかめないアイデンティティ喪失状態のおとーさんにとっては,昨年ほとんど結果を出せなかったおとーさんにとっては,この2月に行った雨の鈴鹿南コースで一生懸命走り込んだ時の走行イメージ,それぐらいしか心の拠り所に出来るもんがないんですよ...
午後の走行が始まり,またしてもすぐに走行順が回ってきます。
これでいいのだ...これでいいのだ...
まだ半信半疑ながら,かろうじて自分のモノになりかけている「何か」を握りしめながら,走行待ちの列に不惑インテ号を並ばせます。目を閉じ,1本目の走行イメージや鈴鹿南の走行イメージを頭に思い浮かべ,イメトレをくり返します。
あと4台...あと3台...いよいよN2クラスの走行が始まります。
N2クラス1台目は,おとーさんと同じショップ製のインテグラに乗るHさん。昨年のミドル戦では表彰台にも上がられている,練習会でも時々お名前を見かける猛者です。なぜこの人がファーストゼッケンなんでしょう...
案の定,素晴らしい走りで,ファーストゼッケンながら1本目のタイムから2.5秒も上げてぶっちぎりの1番時計。1分15秒台から一気に1分12秒台ですよ...信じられねぇ...
せっかく取り戻しかけた自信が再びグラグラと揺らぎますが,いやいや待て待て,雨が小降りになって路面の水が少し引き,気温も上がってきてるし,それでタイムが上がったに違いない,こちらも1本目のS字のミスがなければ間違いなく2秒は上がるはず,とりあえず大きなミスだけはしないように走ろう...何とか冷静に自分を抑えようとします。
そしておとーさんの番。今度は角度に気を付けて(汗)スタートラインに止ります。
3...2...1...GO!
「よし,行け!」とか何とか大声を出しながらクラッチミート。
ごごごごご...1本目と同じカンジで走り出します。今度はパイロン触ってないだろうな(笑)
最初の折り返し,オニギリから外周へ,島を1つひっかけて左奥のコーナーを回り,三日月からイトウ工業コーナー島回りへ...うん,1本目と同じくいいカンジで走れてます。
そして問題のS字連続。
さっきアンダーを出したところでグッと我慢,ラインを外さないようにコーナー1つずつ抜けるごとに加速して行きます。
よーし!行けた!
もっと踏めたし,突っ込める余地はありましたが,ラインは狙った通りのところを走れました。
2つ目の島回りも無難にこなし,奥のヘアピン,最後のパイロン,いずれもうまくリアを出しながらまとめることができました。
もっと攻めれたかな...と思いつつ窓を開けてタイムを聞くと...
12秒台キタ−−−−−−! しかしトップにコンマ1秒及ばず−−−−−!
とのアナウンス。
12秒台に入ったんだ...僅差の2番手なんだ...
何か状況がよく分かりません。いや,分かってるけどピンと来ないというか。そんなことより,冷え切った状態からフル活動したために左足のふくらはぎがこむら返り起こしかけてます...痛たたたたた。
そのまま自分のパドックに帰りそうになりましたが(笑),走行後,3番手以内だと再車検のため車検場に呼ばれます。これまでの競技人生で初めて再車検場にクルマを停めます(クローズド競技では再車検ないもんね)。
クルマの中でボーっと他の人のタイムに耳を傾けていると,何だか運転席の横に人がいっぱい寄ってきてる。え?何?何?俺なんかヤヴァイことした?
窓を開けると,師匠やクラブのみんながお祝いに来てくれたのでした。
...あ,ありがとうございます (;´д⊂)
「こんなところで喜びを分かち合わないで下さい」とオフィシャルの人に怒られましたが(笑)
でもこの時点ではまだ,ヒガミ根性の強いおとーさん,雨が小降りになって路面はどんどん良くなってきてるし,どうせこの後,後半ゼッケンのベテラン勢にがんがん抜かれてギリギリまたポイントに届かないとかそういうオチになるんとちゃうんか...
なんてイジけたことを思ってましたが...
最終結果は4位。
3位とは0.09秒差。トップとも0.7秒差。
我ながら立派なモンです。
最悪の路面状況の中,ガチンコ勝負のN2クラスで公式戦初表彰ですよ。
「これでいいのだ」
やっと自信を持って言える何かをつかんだ気がします。
この1年間,そしてこのオフの間,悩みながら苦しみながらあれこれやってきたことは間違ってなかった。おとーさんとおとーさんの不惑インテ号は間違いなくミドル戦N2クラス歴戦の猛者たちと互角に渡り合える位置にある...
「うれしい」というより「ホッとした」,この方が大きいでしょう。
パドックに帰ると師匠やクラブのみんながもう一度祝福してくれました。今回おとーさんと僅差で5位に入られたシビックのSさんもパドックに来てくれました。Sさんは,去年おとーさんが公式戦に復帰して走り始めたダメダメの頃から光栄にもライバル視して下さってたんですが,今回やっと本当にライバルとして結果を競うことができました。ありがとう...次回は一緒に表彰台に上がりましょう!
↑表彰式の模様。右は同じショップのインテに乗るHさん,左がシビックのSさん。
昨年10位に入って初ポイントもらった時は泣けて泣けて仕方なかったのに,何故か今回は涙のなの字も出ないなあ...と思っていたら。
表彰式も全て終わって家に帰り,クルマを下りてガレージの中で不惑インテ号と対峙したその時,不意に鼻の奥がツーンとしてきました。お前,よくがんばってくれたなあ...あんな雨の中でこんなヘボオヤジの運転でよくちゃんと走ってくれたなあ...4位だよ...1位までたった0.7秒だよ...ありがとう...やっと自信を取り戻したよ...い,いかん!やっぱり目頭が熱くなってきた。
いや,泣かんぞ。
今度は表彰台...いや表彰台の真ん中に立つまでは泣かんぞ。
右フロントにガードレールとのキスマークがまだかすかに残る愛車に向かっておとーさんは固く誓ったのでした。
これでいいんだよね?
うん。
これでいいのだ!
PS:
見事なデビューウィン,おめでとうございます!
次回はオイラもマジで表彰台の真ん中を狙いまっせえ!>ミラポンさん
今回は残念な結果やったけど,アンタはそんなモンやない。
必ず次戦は表彰台上がるんやでえ〜>U氏
次戦,楽しみに待ってまっせぇ〜>36すぺっくさん,白兄さん
とんでもない天気の中,今回も本当にありがとうございました&ご苦労様でした!次戦もがんばりましょ!>師匠,ももさん,クラブ員のみんな
またしてもめっちゃ長文の日記を読んで下さってありがとう!>ここを読んでくれてるみなさん
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