これもレースだから 〜セントラル・ラジチャレ第3戦〜
せっかく予選で上位を獲ったのにスタート直後のクラッシュに巻き込まれて早々にリタイヤ...ジムカーナと違ってみんな一緒によーいドンで走るレースでは,そんな不運なこともありますよね。
トップを独走してたのに思いもよらぬマシントラブルでリタイヤ...ジムカーナと違って走る距離と時間が長いレースでは,そんなこともあり得ますよね。
こういう,ドライバーのせいではない,何か不可抗力のトラブルがあって完走することができず,残念,あーあ,っていう時に使われる
「まあ,これもレースだから」
という言葉。
おとーさんも草レース始めた以上,いつかこの言葉を使うことがあるだろうなとは思ってましたが,参戦3戦目にして早くもこの言葉の洗礼に遭うとは思ってませんでした(汗)。
さてさて。
9月8日の日曜日。セントラル・ラジアルチャレンジシリーズ第3戦。
前回のdiaryにも書いた通り,前日の時点でお天気予報は何とも微妙な予報で,今回もウェットがらみのレースになりそうな予感ビンビンでした。
天気図や雨雲レーダーを見る限り午前中で前線は抜け,午後からは晴れ間が広がりそうな感じ。それでも決勝レースは夕方ですから,路面がドライになってるかどうかの予測は,前日の時点ではさすがに難しい。仕方なく今回は前日からタイヤを決め打ちにすることは避け,リアにタイヤを4本積んでの出発になりました。
途中の高速で姫路セントラルのミドル戦に向かうジムカーナ組を追い抜いたりしながら西へ向かいます。セントラルも姫路も,途中までは一緒のルートですからね。
雨は小降りですが路面は完全ウェット。
セントラルサーキット前の駐車場には6時に着きましたが,今回も既に結構な台数が並んでます。こりゃ今日もパドックをゲットするのは無理かな...前日からパドックをキープしてる連中も多いしな...
7時ちょっと前にゲートオープン。
入場料を払ってパドック方面に急ぎますが,空いてると思ってシャッターを開けると中に既にタイヤやイスが置いてある,なんてのを2回ほど繰り返してるうちにもう空きパドックはなくなっちゃった。あ〜あ,今回も青空パドックかよ。結構雨降ってるんですけど。
泣きそうになりながらいつもの指定席にクルマを停め,荷物を降ろしかけていたら,前回激しいバトルをさせていただいたあのコペン君がわざわざこっちまで来てくれて「僕の隣のパドック空いてますよ,早く早く」と声をかけてくれました。
ありがとう!!! 助かった!!!
奇跡的に空いていた彼の隣のパドックにデミ助を入れさせてもらい,荷物を降ろしていきます。ああ,乾いた地面って素晴らしい(笑)。
※今回も熾烈なトップ争いをすることになる2台...でも結局2台とも...
受付を済ませてエントラントリストを見ると,今回ストリートコンパクトクラスにエントリーしているのは計5台。
おとーさんに,コペン君に,フィット1台,CR-Zが1台。そしてもう1台はヴィッツですが,ドライバーさんのお名前を見ると何だか知ってるお名前...何とジムカーナ公式戦で何度かご一緒させてもらった青ヴィッツさんでした。おお〜,懐かしい。こりゃ楽しみだ!
と思っていたらちょうどその青ヴィッツさんが登場。おとーさんの後に停めてもらい,荷物はパドック内に。同じクラスの3台が集まりパドックも賑やかになります。
青ヴィッツさんとはこれまであまりお話をさせていただく機会がなかったのですが,何と元々はジムカよりもサーキットの方が本業で,最近はジムカーナの方は切り上げてサーキットに戻ってきているとのこと。全然知らんかった。というか,これはすっごい強敵登場じゃん(笑)!
コペン君も青ヴィッツさんも早々に車検を済まされてますが,おとーさん一人,空を見上げながら悩みます。
ホントに雨は止むのか?
夕方の決勝はドライになるのか?
そう,今回もタイヤの選択が非常に悩ましい空模様。
持ってきたタイヤは5部山のクムホV700,それに5部山のR1R。
この時点のフルウェット路面なら間違いなくR1R。でもドライになったらV700の方が秒単位で速い。でもウェットでV700は,走れないことはないけどかなり冒険。元々の溝が浅い上にウェットだと熱が入りにくい。しかもウェットでこのタイヤでこのコースを走った経験はない...どうする?
小降りながらまだ雨は降ってます。ウェザーニュースでは雨が止むのはお昼ごろの予報。一方でYahoo!お天気では夕方まで雨の予報になってる。どっちを信用すべきか...
雨雲レーダーや天気図なんかも見ながら車検の締切ギリギリまで悩みに悩み,結局,お昼には雨は止むと判断。タイヤはV700で行くことにしました。
しかしこの時点で路面はヘビーウェット。コース上のいたる所に水たまりができてます。今すぐに雨が止んでもお昼前のフリー走行では路面が乾いてるということはなさそう。V700でのウェット体験...滑るだろうなあ。とにかくクルマを壊さんようにせんと。
・・・・・・
ブリーフィングが済んで早速Aグループのフリー走行が始まります。
この頃には何とか雨は止んでますが,まだまだ路面はウェット。特にFR車はこの路面に苦戦してるようで,スピンするクルマもちらほら。
次のBグループの走行中にも徐々に路面は乾いてますが,みなあまりタイムが上がってません。完全にウェット時のタイムです。見た目以上にグリップが悪いのは,気温が低いせいもあるのかな。この時点で気温は27〜28℃と「涼しい」と感じるぐらい。
時計はお昼に近づき,さあやっとおとーさん達Cグループのフリー走行の時間です。
もちろん履いてるタイヤはV700です。
さあ,このハーフウェットのややこしい路面で,どのくらいグリップしてくれるのか。
ショックの減衰を大きく落として完全ウェットセッティングで行こうかと思いましたが,思い直して,ドライ時と全く同じセッティングで走って見ることにしました。フリー走行のタイムなんてレース結果には関係ありませんから,こういう時こそいろいろ実験してみないといけません。タイヤの素性を知りたかったら,足回りのセッティングをころころ変えるより,一つのセッティングで押し通してみることです,よね?
もちろんその分,列の後の方に並んで,ゆっくりコースインします。自爆もいけませんが他のクルマに迷惑かけるのが一番まずい。
これまでウェービングなんてやったことありませんでしたが,アウトラップでできるだけタイヤを温めようと思い,バックストレートで左右にデミ助を大きく振ります。タイヤはブレーキングでゆっくり温めろと諸先輩方から言われてますが,ウェービングだって一度は自分でやってみないと効果のほどは分からない。
1-2コーナーや4-5コーナーは見た目以上にグリップが低く,簡単にブレーキがロックします(ABSは常時カット)。峠区間もかなり車体が流れます。6コーナーではアンダーになり,7コーナーではリアが出ます。それ以上に一番危ないと思ったのは立体交差下のブラインドコーナー。ここだけ路面がヘビーウェットのままで,Gがかかった状態だとスパッとアウトに車体が流れます。
それでもホームストレートに帰ってきました。さあ,褌をしっかり締めて計測ラップに入ります。
しかしまあ計測が始まった途端,目の前でシビックが回る,ロドスタが回る,ハチロクが回る,みんなスピンしまくりです。まともに走れたモンじゃありません。目の前でスピンするクルマを避けながらの走行です。
そして,2ラップ目に入った1コーナーで悲しい光景が目に入ってきました。
ああ〜何と!青ヴィッツさんがコーナーのイン側に突っ込んだ状態で停まってる。他車と絡んだらしく,コーナーのアウト側には別のクルマも停まってる。青ヴィッツさんご自身はクルマから脱出されておりケガなどはなさそう。
その後,赤旗が出て走行は一旦中断。青ヴィッツさんは自走でピットに戻って来られましたが,左のリアを他車と接触して傷めておられ,この時点で戦線離脱。
ああ,残念。せっかくの再会だったのに...でもきっとまたそのうちご一緒できますよね。
9月後半に別のイベントが控えているため一刻も早くショップにクルマを持って行きたいという青ヴィッツさんを「これもレースなんですよね」と手を振って送り出します。
フリー走行はその後,短時間ながら再開されましたがもうあまり走る気もなくなってしまいました。
他の方が走っているのをぼーっと見てましたが,もう1回赤旗が出てそこで走行終了。同じクラスのフィットさんもどこかで刺さってしまったみたいでリタイヤされたらしい。クラス5台中,既に2台が脱落し,サバイバルレースの様相を呈してきました。
結局おとーさん,フリー走行はたった3周走っただけですが,後でラップタイムを見ると,Cグループ全20台中9位のタイムが出てました。コペン君やCR-Zさんを2〜3秒チギってのクラス1位です。そうか,自慢だな,自慢したいんだな。そうだよ! 自慢したいんだよ,いいじゃんか(笑)。長いことジムカーナやってたからタイヤ滑るのは平気なんだよ!
ともあれV700はハーフウェットぐらいなら十分使い物になるということが証明されました。
・・・・・・
お昼を過ぎ,路面はほぼドライに。しかしまだ時おりパラパラっと空から雨粒が落ちてきます。本当に夕方の時点でドライで走れるかどうか,まだ予断を許しません。
ライバルのコペン君は,今回はかなりバリ山の国産ラジアルを履いてる。タイヤのメーカーは違うけど,お互いちょうど前戦と逆の選択をしたことになる。今回は勝利の女神がほほ笑むのはどっちかな?
いよいよ予選セッションが始まり,あれよあれよという間にCグループの出番が回ってきます。
路面はドライになってるはずですが,他のクラスのタイムを見てるとまだコースのどこかがウェットなのか,完全ドライ時のタイムの1〜2秒落ちで走ってる。ということはまた他車のスピンに出くわしてしまう可能性があるため,早め早めに列に並びます。
アウトラップ...やはり路面はほぼ乾いてます。大げさなウェービングはせず,気持ちタイヤをつぶす感じでコーナーを回って行きます。
峠区間もドライ。気持ち良く駆け抜けます。
しかし立体交差下のブラインドコーナー...ここだけはまだウェットです。Gがかかってると結構な勢いで車体がアウトにすっ飛びます。手前で車体の向きを変えておいて,コーナーのアウトいっぱいに直線的に抜けるラインをとらざえるを得ません。なるほど他のクラスのクルマもここで踏み切れずに少しだけタイムを落としてたんでしょうね。
さあアタックに入ります。
しかし,
1分41秒6
1分41秒3
1分41秒5
・
・
・
と,今一つタイムが伸びません。やはり立体交差下の処理が上手くいかず,最終コーナーまでの区間でロスしてるカンジ。クルマが唐突にスパッと流れるのでどうしても手前で強めにブレーキを踏んでしまいます。
手前の手前から体勢を作り,必死でブレーキを浅い目にしてやっと1分40秒8が出ましたが40秒台が続きません。予選セッションの残り時間は10分ほど。タイヤがタレてきたのでいったんピットに引き上げます。
ちょうどコペン君も同じタイミングでピットに入ってきます。お互いに黙ったままそれぞれの頭上にあるピットモニターを見上げ自分達のタイムを確認します。現時点ではわずかにおとーさんが勝ってます。同じクラスのもう1台,CR-Zさんは2秒ほど遅れてます。今回もまたおとーさんとコペン君のガチンコ一騎打ちです。
2人の間に火花が散ります。
仲良く並んだピットにいても今はライバル。最大のライバル。
「やっぱり来たか」
「やっぱりオマエか」
お互いそんな言葉を胸に抱きつつ,それぞれ相手には見向きもせず黙々とエア圧を調整し,再びコース上に飛び出して行きます。
今になってまたパラパラ小雨が降ってきます。オートワイパーが時々勝手に作動します。しかしもうそんなことは気にしてられない。残り時間からいって最後の1周。ここで何とか40秒台前半を出してライバルを突き放すぞ!
必死のアタックは実り,本日ベストの1分40秒363が出ました。コペン君に0.4秒の差をつけて一つ前の12番グリッドをゲット。
コペン君は悔しそうですが,おとーさんにも喜ぶ余裕はありません。
おとーさんが勝つためにはスタート後の1コーナーでレース巧者の彼の前にいることが必要。そのためには何が何でも彼より前のグリッドにいないといけません。何つってもパワーは同じぐらいでも彼のクルマの方がずっと軽いんだし。本当は間に1〜2台はさみたかったところですが,すぐ後のグリッドに貼りついてくるあたり,さすがとしか言いようがありません。
・・・・・・
予選終了間際にパラパラ降ってきた雨はすぐに上がり,決勝レースはドライのまま始まりました。
ご存知の方も多いと思いますが,セントラルサーキットのスタートシグナルは昨年から落雷のせいで壊れたままになっており,第1戦と第2戦はフラッグによるスタートでした。この旗振りスタートは案外タイミングをとりやすく,前戦ではうまくジャンプスタートを切ることができました。
ところが今回は新しいスタートシグナルができており,レース初心者のおとーさんにとって,今回が初・シグナルスタートとなりました。
Aグループ,Bグループのスタートをよく見てシグナルの変わり方とタイミングを確認します。
ここのシグナルはカウントダウン方式ではなく,
5秒前看板(オフィシャルが提示)→約3秒前にオールレッド→そのままオールグリーンでスタート!
となるのですが,レッドからグリーンに変わるタイミングがイマイチつかめないままでCグループの出走時間になってしまいました。若干不安はありますが,まあしゃあない。何とかなるでしょう。
さあ,朝からいろいろありましたが,今回も天候予測,タイヤの選択,予選でライバルより前のグリッド確保など,ここまではほぼ狙った通りの展開で決勝にたどり着きました。
あとはしっかりスタートを決めて,ライバルより前に1コーナーに飛び込むこと。予選のラップはおとーさんの方が速いため,普通に走れば逃げ切れるはず。
...まあ,もちろんそううまく行かないのがレース,なんですけどね...
エア圧やショックの段数などを最後にもう一度確認,ピット出口に並ぶ出走待ちの列にデミ助を着けます。
スッキリしない曇り空のまま陽は傾いて,周囲は肌寒いぐらい。路面温度は32℃と予選の時より下がってます。グリップも若干落ちてるかもしれません。アウトラップとフォーメーションラップでは多少ウェービングをしてタイヤに熱を入れておきます。
さあ,フォーメーションラップからゆっくり帰ってきて,イン側の12番グリッドにデミ助を停めます。周囲のクルマの停まってる位置と向きをチラっと確認。気持ちを静めてスタートライン方向を見据えます。
初めてのシグナルスタート。心臓が高鳴ります。
5秒前看板が出ます。
さあ,スロットルをあおってエンジン回転を上げます。
そしてレッドシグナルが灯ります。
よし,ここから3...2...1...スタート!!
あ,あれ?
まだシグナル赤のままだ(汗)...あ,今ブルーになった(汗)!
そうです。
ものの見事にフライングしてしまいました。
「ぁゃιぃタイミング」なんかじゃありません。明らかな大フライング(滝汗)。
みなさん申し訳ありません...m(_~_)m
後でペナルティがつくかもしれませんが,でも今はそんなこと言ってる場合じゃない。飛び出しちゃったなら飛び出しちゃったで,とりあえず前へ進まないとしょうがない。気を取り直してフルスロットル。ホームストレートの一番内側を加速して行きます。
しかしフライングに気が付いて一瞬クラッチを切りスロットルを緩めた影響で,明らかに加速が悪い。フライングして抜いちゃったシビック軍団には当然みるみる抜き返され,できればスタートでかわしたかった一つ前のグリッドの黒ロドスタさんにも1コーナーで並ばれてしまった。
そしてライバルのコペン君は...ちゃんとおとーさんの真後にいる(汗)。
とりあえず彼の前に出られたのだけが不幸中の幸い。でもこんな僅差では逃げ切れるかどうか...
不安は徐々に現実になって行きます。
2コーナーを出たところで黒ロドスタさんにアウトから先行されます。バックストレート,こちらも必死で加速しますがコペン君が背中にぴったり貼り付いていて,後からものすごいプレッシャーを感じます。インに入られないよう,彼をけん制しながら4コーナーに突入。
5コーナー出口で左前を走る黒ロドスタさんが姿勢を乱し追い着きます。前回もこの同じ場所で彼に追い着いたことがコペン君とおとーさんのバトルに大きく影響しました。今回はどうか...いや,6コーナーから7コーナーでは彼を抜くに至らず。頭をやや抑えられた形でヘアピンを回り,おとーさんとコペン君の差はほとんどなくなります。
焦れたおとーさん,左の下りコーナーで黒ロドスタさんのアウトに出て立体交差下でインを取ろうとします。
しかし,もちろん彼も簡単には引きません。しかも立体交差下はまだウェット気味でここだけグリップが低い。無理にこのまま突っ込んで姿勢を乱そうものなら2台絡んで大事故になります。ほーっとため息をついてブレーキを強めに踏みます。
黒ロドスタさんが1台分インを開けてくれたおかげで無事にコーナーを抜け最終コーナー前に立ち上がりますが,ここはもう勝負できません。おとなしく彼の後に続いて最終コーナーに入りますが...
あ!やられた!
おとーさんの一瞬のスキを突いてコペン君がインに飛び込んでます。前のクルマに気を取られてるうちにしっかりやられました。ここはもうインを明け渡さざるを得ません。
そしてストレートに立ち上がると...軽さで勝るコペン君の方が少しだけ速い。2台並んだ状態からジリジリと前に出られ,1コーナーで完全に抜かれてしまいました。それでもアウトから抜き返そうとしますが,ギャップでクルマが跳ねてしまいトラクションが抜けます。ダメ,完全に前に出られた。
いや,しかしまだ諦めるわけにはいかない。フロントタイヤが1サイズ大きいこともあってか,峠区間はこちらの方が速い。まだまだ抜き返すことは可能。それにレースは最後まで何があるか分からない。諦めずに最後まで完走することが重要だよな。
焦るな,焦るな,まだまだ行ける...自分に言い聞かせながら,今度は彼の後にピッタリ貼り付き,背中からプレッシャーをかけるべく追って行きます。
後から見ていると彼のクルマの動きがよく分かります。どうもかなりアンダーが出ているようで,やはり峠区間ではかなり苦しそう。しかもその分,フロントをこじってるので,レース終盤にはタイヤがタレるはず。
よし。まだまだ勝機はある。とにかく貼り付いて行って,後からつつきまくって彼のタイヤがタレるのを待とう。ストレートエンドでは無理だけど,峠区間でも最終コーナーでも,チャンスがあったら仕掛けて行こう。
そう心に決めた途端,左の下りコーナーから立体交差ですーっと彼との差が詰まります。この区間は特に今日のデミ助に合っているようです。
立体交差下をコペン君より直線的なラインで抜け,思い切って彼のインに飛び込みます。さっきの彼の飛び込みのお返しです。倍返しにはなってないけど。
しかしコペン君を外に押し出すわけにも行かず,ホームストレートのイン側に立ち上がるとラインがタイトになり過ぎて一瞬ギアを1速に落とさざるを得ません。立ち上がりでもたつくと,もう,ストレートでは彼の方が確実に速い。一瞬トップを奪い返しますが,結局ホームストレートでまたジリジリ抜き返されます。
ふっ,やっぱりここでは無理か ( ̄ー ̄;)。
1コーナに向けて今度は彼もぎゅーっとインを締めてきます。こちらは少しアウトに振って,アウト側から彼をけん制します。
インベタに貼り付いた彼はラインを外に出せない分,2コーナーの立ち上がりが少しヌルくなり,その分バックストレートでこちらが離される距離が減って,その後の峠区間でテール・トゥ・ノーズに持って行けます。
そうなると,あわよくば6コーナーから7コーナーのS字,彼が苦戦してる区間でクリアにインを突けるかもしれない。うまく前に出られれば,その後の区間もしばらくこちらの方が速いため,簡単に抜き返せないはず。ホームストレートで彼に抜き返されないためには,2-3車身の差をつけておかねばなりません。
レース終盤まで粘ればタイヤで決着がつく,そう予想しながらも,それまでにクリーンに抜くことができればそれに越したことはない。いろいろ戦略を考えながら,とりあえずこの周回の峠区間でどのくらい彼に貼り付けるかシュミレーションしてみます。
狙い通り,バックストレートでは先の周回ほど離されず,4-5コーナーでぐっと差を詰めて,6-7コーナーで彼の背中にぴったり貼り付くことができました。よしよし,これなら次の周で仕掛けられそうだ。
ヘアピンを回って左に下り立体交差をくぐるところでもこちらに余裕があり,こちらが前に出てしまえば,前に他車がいなければ,ここで差を拡げられそうです。現に最終コーナーではほとんどテール・トゥ・ノーズになりますが,ここで仕掛けてもさっきと同じ結果になり,ストレートで抜き返されます。よし,狙うのは次の周回の峠区間だ。行くぞ。
ホームストレートを立ち上がり,今度はややアウト側を走るコペン君の後につけながらコントロールラインを通過。4周目に入ります。フライングのペナルティで黒旗が出るかとビクビクしていましたが,この時点でも特にフラッグは出ていません。何とか最後まで走らせてもらえそうです。
さあ,1コーナーにどういう位置取りで入って行こうか...その時,後から一台ストレートの速いクルマが迫って来ていることに気付きました。
本当はコペン君との間に他車に入られたくはありません。こちらは熾烈なトップ争い中です。間に入られるともうこの周回では仕掛けられなくなりますし,峠区間でモタモタされるとコペン君に逃げられてしまいます。しかし明らかにストレートの速いクルマをブロックするわけにもいきません。
そのクルマがインに入ってきたので,仕方なく1台分アウトに寄って先へ行かせることにしました。
しかしこの判断が明暗を分けました。
おとーさんのインに入ったこのクルマは,おとーさんの真横でスピンモードに陥り,リアをこちらに向けて回り始めました。
えええ〜っ!!!
必死でフルブレーキング,ステアを切ってアウト側に逃げようとしましたが,そのクルマもリアからアウト側にすっ飛んできます。こっち来ちゃらめええええええ!
ど〜ん!!!
おお〜い!!!何すんねん!!!
思わずそっちを睨みつけますが,そのクルマのドライバーさん,こちらに手を合わせて「すんません」と拝んだポーズのまま後向きにコースアウトして行きました。何だかその気の毒な姿を見て怒る気もなくなりました。
ハッと気を取り直しすぐにコースに復帰して走り出しましたが,何か部品が外れたらしく時々地面に擦ってるような音が聞こえます。
油圧などは問題なく,走る分には全く問題なく走れますが,外装にどのくらいのダメージを負ってるか分かりませんし,部品をコース上にまき散らすわけにもいきません。リタイヤ決定です。
ハザードを出し,ゆっくりコースを回ってピットに戻ります。フライングのペナルティはとられなかったけど,結局こうなる運命だったのね...
※ちょっと長いですが,スタートの馬鹿フライングからリタイヤまでのドラマです
・・・・・・
おとーさんはピットでがっくり座り込んでましたが,レースはこの後も荒れたようです。
おとーさんが消えてラクになったはずのコペン君ですが,やはりレース前半の熾烈なバトルでダメージが蓄積してたのか,レース終盤の峠区間で突然左前輪のハブがぶっ壊れてリタイヤ。レースは最後に赤旗終了となりました。
やはり,走り続けていればおとーさんが勝てたレースだったんですね...でもコペン君にとっては,もうちょっとで優勝だったのにめちゃくちゃ悔しかったでしょう。
結局ストリートコンパクトクラスは5台中4台がリタイヤ。残ったCR-Zさんがサバイバルレースを制しました。何という凄まじいレースでしょう。
おとーさんは早々にリタイヤしたため,フライングに関しては誰からも抗議はなく「今後は気を付けて下さいね」で済みました。もちろん,今度からちゃんとシグナルが青に変わったのを確認してスタートしますから。
しかし4周でリタイヤしたため完走扱いにならず,シリーズポイントはたぶんゼロ。完走してないからスカラーシップのポイントもゼロ。まことに痛い痛いノーポイントになりました。
「まあ,これもレースだから」
脳裏にはこの言葉しか出てきません。
ただ救われたのは,手を合わせながらコースアウトして行った若いドライバーさんが,改めてピットにちゃんと謝りに来てくれたこと。
おとーさんだって恥ずかしいフライングしてるレース初心者。彼に偉そうに文句垂れる立場にはありません。明日は我が身です。自分こそリスクを冒して他のクルマに迷惑かけないように肝に銘じなければなりません。
幸い彼も何とか自走で帰れるとのこと。旧いクルマを大事に乗ってるような若者こそ大事にしないといけません。セントラルは今回が初めてという彼に「またおいで」と笑顔で手を振りました...トホホホホ。修理代もノーポイントも痛いんだけどね。ええ恰好しいのオッサンは辛いね。
今回のレース,勝利の女神さまには見事に見捨てられましたが,普段見向きもしてくれないジャンケンの女神さまが,あまりに凹んでいるオッサンを見兼ねたんでしょうか...
表彰式の後のジャンケン大会。ウチのクラブ員はいつも笑ってしまうぐらいジャンケンに弱く,もちろんクラブ代表のおとーさんはその中でもとりわけ弱いわけですが...
何と,マツタケ! 勝ち取ってしまいました。
今回は表彰台に立てず何の賞品もなかったので,家族にどんなお土産を買って帰るか悩んでましたが,これで見事に逆転サヨナラ大ホームラン! 胸を張って家に帰れます。嫁さんや子供たちに「手ぶらかよ,けっ」と笑われないで済みます(汗)。
さあ家に帰って,壊れたバンパーを目立たないように隠ぺい工作しよ(嫁様にバレると当然怒られるし)。んで,マツタケをホイル焼きにしよ。とっておきの酒を燗で飲も。何かニコニコしてきたぞ。
さあ,また走ろう。
次こそ...フライングはしないぞ!(笑)