新緑を走る
ある平日お休みの日の朝,時おりパラパラ降ってくる雨粒をワイパーで払いのけ払いのけ,デミ助で走り出します。高速に乗って,向かうは神戸。2月にもおじゃましたハーフウェイさんです。
デミ助はあれ以来,エキマニやフロントパイプなど排気系に手が入り,ずいぶんとガラの悪い男の子になりました(笑)。ハーフウェイさんで前回お世話になったECUは一般的なスポーツROMで,吸排気系ライトチューン車向けのモノ。ここまでヤンキーな仕様は面倒見切れねえよですので,いわゆる現車合わせのECUセッティングをお願いすることにしたわけです。
現車合わせはまる1日かかる作業。朝10時にクルマを持ち込んで,仕上がりは夕方になります。代車のシステムはないとのことだったので,どこでどのように1日過ごすかが問題。
嫁さんについてきてもらおうかなと思って声をかけるも「イヤじゃ」の一言。ショップの中は居心地良く過ごせるようにされてますが,さすがにまる1日ウロウロさせてもらうのもご迷惑でしょうし,お店の周囲は山を切り開いた工業団地で何もないところ。しばらく歩けば電車の駅があるみたいなので,電車で神戸に出て時間をつぶそうかな...
10時きっかりにお店に到着。もうお馴染みになったスタッフさんにデミ助を託します。さぁ,ぼちぼち駅まで歩こうかなと思ったら,なんと近くにバス停があり,そこから三宮まですぐとのこと。お言葉に甘えてバス停までお店のクルマで送ってもらい,30分後にはもう三宮ですよ。こりゃ便利。一人でクルマに乗って来た人にはこうやって時間をつぶしてもらうことになってるみたいですね。
さて三宮に降り立ったおとーさんですが,神戸の街は全く不案内。元々は神戸の生まれなんですけどねえ...しばしぶらぶらしてるうちに用事を思い出し,結局梅田まで引き返してこっちで時間をつぶすことにしました。
ヨドバシで用事を済ませ,新しくなった大阪駅近辺をウロウロ。
その時気が付いたのですが,梅田の街でショッピングを楽しむ女性陣の華やかさ,煌びやかさと,梅雨空の下,昼メシを求めてオフィスからさまよい出て来たオッサン達の重く暗い表情がとっても好対照なのね。
いやね,この時期,っていうかゴールデンウィーク明けごろから梅雨ぐらいまでの時期って,患者さん多いんですよ。あ,おとーさんの本業(精神科医)の話ね。五月病って言うけど,ホントの話。
五月病っていうのは日本独特の現象で,4月に新年度,新学期なんかが始まって,慣れない環境の中でドタバタしながら,アップアップしながらやってきて,やっとこさGWにたどり着いたものの,その後は一気に夏まで何もない,広くて深いお仕事やお勉強の海に投げ出されて,その絶望感から元々泳げる人でも溺れてしまう,そんな状態。
もちろん勤め先によっては決算期だったり株主総会があったりして元々結構多忙な時期ですし,人によってはGWに水を注されてペースが狂ってしまったなんて場合もあるでしょうし,単に季節の変わり目で心身ともに調子を崩しやすいとか,梅雨で天気が悪いのが堪えたりとか,季節に関係ない個人的な状況とか,他にもいろいろな要素もありそうですどね。ま,でもやっぱりGWが絶妙のタイミングにあるからこそ起こってくる現象。
とにかく,毎年この時期は新患さんも多いし,通院患者さんも調子を崩したり症状が再燃したりする人が多い。おとーさんも大忙し。知り合いの同業者の先生も似たような状況らしいので,たぶん日本全国でこの時期にたくさんの人が調子を崩してるんじゃないかな。
いつも思うんですけどね,これって6月に祝日を1つ作って,しかもそれを月曜日にして連休にすれば,多少は緩和できるかなと思うんですよ。いや,もちろんそれで全面解決だなんて思ってませんよ。ただ,夏までの間にもう一つ,すがりつく足場ができれば,何とか乗り切れる人も多いんじゃないかと。どうせ夏休みなんだから海の日なんて要らんかったのにね。
毎年の自殺者数は,多少減ったといえやはり3万人弱。特に若い人の死因の1位はダントツで自殺。先進国の中でも群を抜いた数字。その全てがうつ病がらみとは限らないけど,大なり小なり自死で亡くなる人にはうつ病の症状が見られるという。
重症のうつ病の患者さん,病院へ来てもらえれば何とかなるケースが多いけど,病院へ来てもらっても,いろいろな悪条件が重なってると,結局どうにもしてあげられないケースもある。どんな病気でもそうだけど,やはりうつ病になる前に,あるいは悪化しちゃう前に,手を打つことが重要。
うつ病による国の経済損失は,いろいろな数字があるけどいずれも天文学的な数字。
6月に連休を1つ作ることにも経済損失はあるだろうけど,多少の経済効果も見込めるし,五月病うつの軽減にも若干の効果はあるんじゃないかと思うんですけどね。
祝日の名前はどうするか?
やっぱりね,父の日にからめて,おとーさんが家でゆっくりできる日ということで「家庭の日」,どうでしょう?
「父の日」そのままだと面白くないし,なんで母の日は祝日にせんねん!とクレーム来そうだし。11月の「勤労感謝の日」は有名無実化してるし,こっちが本当の勤労感謝の日ってことで。
ただ「家庭の日」だと「家庭サービスの日」になってしまって,結局家でゆっくりさせてもらえないという罠。また,祝日が休みにならないサービス業の人にとってはさらに過労を生んでしまう可能性が...
このへんは,祝日のコンセプトについて政府からしっかり説明してもらって,「できるだけ家での休養に努めること」とか「事業主は従業員に必ず代休を取らせること」とかお達しを出してもらう。これでどうだ。
最近は企業でもメンタルヘルス健診をするようになってきてますが,やるならこの5〜6月が最も効果的でしょう。そのほかのいろいろなうつ病関連の施策もこの時期に集中してもらう方が,広く周知徹底できていいかも。それだったら祝日の名前も「うつの日」の方が分かりやすくていいか...いや,それだとよけいに気が滅入りそうだな(笑)...じゃ「元気の日」...バカみたいだな(笑)...「心の日」...これの方がまだシックリくるかな...
・・・・・・
などとクダラナイことを考えながら雨の梅田を彷徨ってるうちに,気が付いたらもう神戸に戻る時間。
っつーかお約束の時間である16時に間に合うかどうかギリギリの時間じゃないか。何やってんだ,早く帰らないと...しかし結局バスの時間には間に合わず(アホやな),新開地まで行って神戸電鉄に乗ることに。
この神戸電鉄ってね,乗るの40年ぶりぐらい。
ケーブルカーみたいにどんどん山の中に入って行く電車。
微かにだけど,この懐かしい風景,記憶に残ってる。
前述の通り,おとーさんは神戸生まれ。
自分自身は生まれてすぐ,1歳にならんうちに大阪に引っ越してしまいましたが,祖父さん祖母さん,そして前にもdairyに登場したクルマ好きの叔父さんが鈴蘭台に住んでいて,ちょくちょくこの神戸電鉄に乗って遊びに来たんですよ。ただ祖父母も叔父もその後,東灘に引っ越したため,最後にこの電車に乗ったのは小学校に入った頃のはず。40年以上前だな。
駅は地下になってます。当時には絶対存在しなかった自動改札を通って粟生行の電車に乗ります。学校帰りの学生がパラパラ立ってますが車内は空いてます。シートに腰かけてホッと一息。
電車は間もなく走りだし,青々と茂る木立の中をケーブルカーのように斜めになって登って行きます。雨にしっぽり濡れた木立は活き活きしてて,モリモリ茂る樹冠には踊りだしそうな躍動感すら感じる。40年前の子供頃の自分も,この同じレールの上で同じ窓の外の景色を見ながらワクワクしてたんだろうなあ。
こんな年になって,こんな事情でひょっこりまたこの電車に乗るとは夢にも思わなかった。あれから約半世紀,いろいろあったけど,まあ人生って生きてみるもんだ。仕事仕事で荒んだヤブ精神科医の心にも恵みの雨が沁み込んで行くような。
電車は新緑のトンネルの中をゴトゴト走り,不意に景色が開けたところが山の中の工業団地。
閑散とした駅の改札を出た頃にはいよいよ雨が本降りになっており,とてもショップまで歩けそうにありません。ところがありがたいことにわざわざスタッフの方が駅までお迎えに来て下さいました。
ショップに着いた時にはまだ社長さん自らがデミ助をブイブイ言わせながらセッティングを続けて下さってましたが,しばらくしてダイナパックのデータを持って説明に来て下さいました。
トルクカーブを見せてもらうと,4500〜5500rpm近辺でいったんトルクの谷がありますが,これは気筒同士の吸気干渉によるもので,インマニから吸気するNAエンジンの宿命とのこと。確かに2速や3速でぐいーっと加速して行く際や,高速コーナリング中にこの領域で,「息つき」とまではいかないものの,わずかに不自然さを感じることがありました。可変吸気のせいかと思ってましたがこういうことだったんですね。なるほど,なるほど。
ただ今回その前後の燃調のバラツキをきちんとならしてもらった結果,回転数全域でトルクがぶ厚くなり,谷はかなり小さくなってます。これならもう中間領域で違和感を感じることもないでしょう。
ダイナパックですのでパワーの数字はかなり辛い目の評価が出てますが,ノーマルエンジン+吸排気系のチューン内容にちゃんと見合った数字とのこと。スポーツROMに書き換えてもらった時にノーマルECUからはっきり変化したのが分かりましたから,そこからさらに4-5psのアップは大きいです。きっとサーキットのラップタイムにも表れてくるはず。
口元のあたりが半笑いになっただらしない表情でショップのみなさんにお礼を言って,再び高速に乗ります。
すぐにでも現車合わせECUの実力を試してみたいところですが,さすがにこの豪雨の中でフルスロットル! というわけにもいきません。というかインターからの立ち上がりで普通にスロットル踏んだだけでフロントがグリップを失い,ガードレールへまっしぐらに向かって行きそうになってヒヤっとしましたから(笑)。やっぱり山の減ったV700でこの路面は危険(当たり前)。
さあ今週末は待ちに待った久々の実戦。マツダファン・サーキットトライアル@岡山国際。ECUの実力はここで発揮してもらうことにしましょう。できればドライで走りたいけど,あんまりカンカン照りもしんどい。曇り空だけど雨は降らない中途半端なお天気がいいですね(笑)。
問題はお天気よりも,この忙しい中,タイヤを替えにファインアートまで行く時間があるかどうか。やっぱり6月には連休が一つ欲しいなあ(笑)。