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春は競技車に乗って


デミ助は170km/hで見事にスピードリミッターがかかってしまうことが年明けの鈴鹿で判明。ホームストレートとバックストレート両方の終端でこの速度に達してしまうため,今後鈴鹿を走り込むためには何としてもこのリミッター機能をキャンセルしないといけません。

このリミッターを効かなくすることのできるデバイスも市販されてますが,ネットで調べた範囲内でデミオに適応が確認できているキャンセラーはない。現在使ってるHKSのサーキットアタックカウンターでも車種によってリミッターをキャンセルできるのですが,悲しいかなデミオは非対応。


さあ,どうするか。

こうなったらROMチューンに走るしかありません。

みなさんよく御存じだと思いますが...クルマには各種センサーの信号からエンジンの燃焼具合を判断,調整するエンジンコントロールユニット(ECU)があり,レヴリミッターやスピードリミッターもこいつの働きの一つです。入力される回転信号や速度信号が一定値を超えると燃料の噴射を止めたり点火を止めたりしてエンジンの回転に無理やりストップをかけてるわけです。

ECUの中にはプログラム本体と種々の設定値を記録したメモリー(ROM)があり,何らかの手段でこの設定値を書き換えることでエンジンの動作特性やリミッター設定値を変えることができます。レブリミッターの作動する回転数を変えたり,速度リミッターをキャンセルすることもできますし,純正ではたっぷりとってある空燃比などの安全マージンを多少削ってエンジンからモアパワーを絞り出すことも可能になります。要するにこれがROMチューン。


ROMチューンっていうと,ジムカーナのN車両やPN車両規定では決して手を付けることのできなかった禁断の領域です。実はおとーさん,これまでいろんな峠車や競技車を乗り継いできましたがROMをいじるのは初めて。何だかこれまで決して触れることのできなかったカノジョのボディに初めてそーっと触れてみる時のような(笑),妙な不安感と背徳感と期待感で胸が張り裂けそうです。

しかもROMをいじるとなると,いつもクルマを任せているファインアートではなく,ROMチューンを得意とする別のショップにデミ助を持って行かないといけません。これもすごく不安でした。高いお金を取っておきながら中身はほとんどノーマルと変わってないとか,逆に無茶苦茶なマップになっててすぐにエンジンがブローしたとか,タチの悪いショップの噂も聞きます。なんせ何がどう変わったか目で見ても分からないものですから。


ただ,昨年末に岡国のMFCTに出た際,織さんのサポートに来られていた神戸のハーフウェイというショップのスタッフの方といろいろお話をする機会があり,このショップがデミオのエンジンやROMに滅法強いことを知りました。このスタッフの方からは実際に数多くのエンジンをばらしたり組んだりしてる人独特のオーラが出てました。ショップに電話をかけた時のおねーさんの対応も親切。うん,このショップなら信頼できそうです。

いずれエキマニ交換など吸排気系のチューンがもっと進んだら,どこかのショップにデミ助を持ち込んで現車合わせでROMチューンを,と考えていたのですが,とりあえずリミッターのキャンセルは早急に必要。まだクルマの仕様は中途半端ですが,とりあえずこのハーフウェイさんの一般的なスポーツROMのデータでROMチューンをしてもらうことになりました。


・・・・・・

先述の通りショップに電話して予約をとり,ある平日のお休み,高速を飛ばして神戸へ向かいました。

ショップの場所は,地図を調べてみると神戸と言ってもだいぶ山奥の方。阪神高速ではなくって山陽道を走って行くことになります。ちょうど三田のアウトレットのちょっと先か...


休みの日にクルマ関連のことで一人で出かけてしまうと途端に嫁さんの機嫌が悪くなりますので,このロケーションは非常に好都合。嫁さんも乗せて行ってアウトレットに放り込んで,買い物に夢中になってる隙にROMチューンに行って来よう( ̄ー ̄)。

「今度の平日休み,三田のアウトレット行く?」と嫁さんに声をかけると二つ返事で「行く!」。デミ助に乗って行ってその間にショップに行く事情を話しても,「アウトレット」の単語に反応して両目が¥マークになってる嫁さんの耳には入ってません。 (¥∀,¥) ←こんなカンジ。ちょっとヨダレ垂れてます(笑)。


しかし案の定,当日デミ助に乗る段になって嫁さん「ええ〜このバカ車に乗るの〜?」。

このクルマで行かなきゃ意味ないじゃん。しかもバカ車とはなんだ,バカ車とは。

普段嫁さんはスカした院長夫人らしく(笑)BMWをお上品に転がしてます。AT免許だからデミ助を運転することは決してありません。というか助手席にも決して乗りません。夫婦で出かける時も,家族で出かける時もBMWに乗ります。そういえば不惑インテ号の時も助手席には乗らんかったなあ。


ウチの嫁さんとは学生の頃からのつきあい。ですからこれまでおとーさんが乗り継いできたバリバリの峠車や競技車両の助手席を嫁さんも乗り継いで来てるんですよ。

若い頃は峠でタイヤ鳴らそうが少々ドリフトしようが隣で涼しい顔してる肝の据わった娘でしたが,さすがにこいつもオバちゃんになって根性がなくなってきたのか,いつ頃からかおとーさんのクルマの助手席には乗りたがらなくなりました。

まあ確かにクルマが小さいとかボロいとか以前にステッカーだらけだし,ボンネット黒いし,排気音でかいし,まあ乗りたがらない気持ちも分からないではないが(笑)。

それでも,今日はこのクルマで行かないと意味がない。ぶーたれる嫁さんをサーキット仕様デミ助の助手席に押し込んで,さあ,しゅっぱ〜つ。


デミ助@サーキット仕様
※こんなクルマだからねえ...(笑)


デミ助のフロントには14kとかなり固いバネが入ってますので,高速にのると路面の継ぎ目の段差でゴンッ!と結構跳ねます。タイヤは3部山のR1RでロードノイズもSタイヤ並みの大きさ。マウントもガチガチ,吸排気系も変わってますからシフトダウンするとウォン!とクルマ全体が振動します。

久々に乗る競技車の助手席がお気に召さない嫁さん,最初はデミ助が跳ねるたびに「何よこのボロ車!」と文句たれてましたが,だんだん可笑しくなってきて,とうとう笑い出してしまいます。「もう,止めてよ,こんなバカ車でアウトレット行くのとか(笑)」。

そういえば昔2人で散々峠を走り回っていた頃もこんな雰囲気だったなあ。フロントが跳ねたり,リアがズルったり,ブレーキがキーキー鳴ってても2人で笑い飛ばしながらひたすら走り続けてた。初めてコクったのも,プロポーズもクルマの中。新婚旅行も競技車で国内旅行,留学先でもずいぶん遠方までクルマで家族旅行してました。思えば人生の大事な局面をいつも2人でクルマに乗って走り抜けてきた。

そんなおとーさんの感慨が伝わるのか,嫁さんもニコニコ笑顔。何となく,普段以上に会話も弾みます。


そんな感じで高速をハイペースで飛ばし,あっという間に三田のアウトレットに到着。駐車場で嫁さんを降ろし,笑顔で手を振って,再び山陽道に向かいます。

山陽道を明石海峡大橋方面へしばらく走り,神戸西インターを下りるとショップはもうすぐ目の前。アウトレットから小一時間もかからなかったかな。可愛いおねーさんと,岡国でいろいろお話させていただいた件のスタッフの方が出迎えて下さいます。


「しばらくお待ち下さい」ということでショップの中をウロウロしながら時間をつぶします。MR-SにDC5インテのエンジンを換装したデモカーは本当に速そう。マウントとかどうやって載せてるんだろう。2Fに上がると,レブスピードとかオプションとかクルマ雑誌のバックナンバーがいっぱい並んでます。おお〜図書館みたいだ!

しかしウハウハいいながら雑誌を物色してぱらぱらめくってるうちにもう作業は終了。おお,早い。30分も経ってないぐらい?


レブリミットの数字とか,高回転まで回した時の注意事項とか,大事なことをいくつか確認。今後はハイオク仕様になりますが,しばらく前の給油からちゃんとハイオクを入れてますのでダイジョブ。他にもこのエンジンについていろいろ興味深い話を聞かせていただきました。今後のチューンに向けて大いに参考になりました。

ハーフウェイさんは,むき出しタイプのエアクリを装着して不要になったエアクリユニットを取っ払ってECUを収納,固定するECUボックスを発売されてるんですが,デミ助は純正のECUケース部分だけを自分で切り取り加工してステーで固定してます。これを見たスタッフさん「こんなことされたらウチのECUボックスが売れなくなって困るんですが〜(笑)」とのことでしたが,ボンネットキャッチの加工なども含め「上手に作業されてますね」と褒めていただきました。お世辞かとは思いますが(笑),素人丸出しの拙い作業をプロにお褒めいただくとすごく嬉しいやら恥ずかしいやら申し訳ないやら。


エアクリユニットを取り外したエンジンルーム
※めっちゃ素人っぽいステー固定ですが(笑)。


しばらく楽しく雑談させていただきましたが,ぼちぼちショップを後にします。
さあ,デミ助がどんな風に変化してるか,わくわく。

ショップの駐車場をそろそろ出たところで信号を左折,幹線道路を走り出します。とりあえずフツーにスロットルを踏み込んでみます。


お? お? おおお...おおおおお!

思わず声出ましたよ(笑)。


スロットルをちょっと踏んだ途端にクルマがドカッと前に飛び出るとか,フルスロットル3秒で100km/hに到達とか,ま,そんなことはないわけですが(笑),3000rpmから5000rpmぐらいのトルクが分厚くなってるのはすぐ分かりましたね。ぺらっぺらのしゃぶしゃぶ肉が分厚いサーロインステーキになったぐらい...分からんって,そういう例え(笑)。ま,要するにいつもと同じようにスロットルを踏んでてもぐいーっと車速が出る。

すぐに高速のインターをくぐり,本線合流までの誘導路をぐるーっと回るところでパーシャルスロットルからのレスポンスを見ます。


お? お? おおお...うううううん!


さすがに電スロは電スロのままですので,足の指先がバタフライに直結してるようなレスポンスはありませんが,ビッグスロットルとの相性も悪くないようで,スロットルを踏み込んでからの回転の立ち上がりは明らかにいいね!

高速を流れに乗って巡航してても,なんかこれまでよりもスロットルの踏み込み量が少なくなったような気がする。これ,気のせいじゃないよな。足首から先をいつもより起こしてるので,脛の筋肉が微妙に切ないカンジになってくる。

SAエリアから本線への合流で試しに3速からフルスロットル踏んでみました。


お? おおおおおお!...ひいいいいいい!

声の実況はもういいって(笑)。


3速だというのにどこまでも車速が伸びて行って,走行車線のクルマがみるみる目の前に迫ってくるので怖くなって思わずスロットル戻しました。えらい加速ですよ,これ。

さすがに一般道でレブや速度リミッター解除の確認はできませんが,サーキットでの強力なポテンシャルは十分にうかがえました。こりゃ次の鈴鹿が本当に楽しみ。もう,なんか顔がニヤけてしょうがない。


三田のアウトレットに戻りますと,嫁さんは紙袋をいっぱい抱えてニコニコ顔。
こっちもニコニコ顔。

あんまりニヤけてたからか,嫁さんが

「で,そのROMチューンっていうのはいくらぐらいかかったの?」

う! いきなりそう来るか。困ったな,正直に言うわけにもいかないし(結構な額だし),

「い,いや,リミッター切ってもらっただけだから1万円ぐらいかな?(大ウソ)」


嫁さん,何か腑に落ちない顔してる。やばい,こっちからも逆襲しないと。

「じゃあお前のそのバッグいくらで買ったの?」

「う,うん,セールだったから2万円ぐらい(たぶん大ウソ)」


夫婦円満の秘訣は,お互いあまり深く追求しないこと(笑)。

互いに,ウソだろ,怪しいな,とは思ってますが,ニヤニヤしつつ,それ以上は訊きません。


一緒に昼飯を食べてコーヒー飲んで夫婦仲良くニコニコしながら帰途につきました。

帰りの高速では思わずスロットルを踏み込みたくなりますが,まあ抑えて抑えて。横には嫁さんが乗ってるし,中間トルクが大幅に上がってることはバレないようにしないとな。自然と顔がニヤけてくるのを必死で堪えます。しかし嫁さんもまたお気に入りのバッグを膝の上に抱えて顔が自然とニヤけてきてる様子。


その時また路面の段差でデミ助がゴンッと跳ねます。

思わず2人顔を見合わせ吹き出してしまいます。

「もうええ加減にしいや〜(笑)」「何があ〜?(笑)」


ステッカーだらけの小さい競技車は,路面の荒れた高速道路をガタガタ飛び跳ねながら,かつての走り屋カップルのちょっとしわの寄った笑顔を乗せて疾走します。

路肩の植え込みはまだまだ枯れた色をしていますが,枝先に踊る午後の陽光はもうかすかに春の匂いがします。

春はもうすぐ。

10年後の春も,20年後の春も,爺さん婆さんになっても,こうやって乗り心地の悪いクルマに2人乗って笑いながらガタガタ走ってたいですね。



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