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卒 業 〜地区戦第6戦〜


これから活動休止に入るおとーさんにとって一応の最終戦となる近畿地区戦第6戦。

7月末,梅雨が明けて真夏の灼熱地獄の名阪Eコースを走って来ました。


といいつつ,レポートもリザルトの更新すらしないまま,気がついたらもう3週間も経ってますね(汗)。これまでどんなにバテててもたいてい1-2週間で参戦レポートを書いてたんですが...

いや,確かに8月末の退職に向け大量のサマリー作成や管理職業務の引継ぎの段取り,10月からの開業の準備など,これまで以上に忙しくはしてますが,別に体調が悪くって動けなったとかではないんですけどね。


長期放置の原因は...やはり「燃え尽き感」。
本当にもう,真っ白に,粉まで燃え尽きた感じ。実際,アホのように暑かったし(笑)。

ただ,「燃え尽き」とは言っても,燃え尽き症候群のようなネガティブで暗い燃え尽き感ではなくって「あー楽しかった」という燃え尽き。外から火をかけられて,焼かれてくすぶって燃え尽きたのではなくって,自分自らぼーぼー火を吹いて内部から完全燃焼し尽した感。もー何も燃えるもの残ってませんよー,みたいな。


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思えば今から6年前の夏。

たまたまガレージが2台分ある家に引っ越したことをキッカケに,若かりし頃の夢を再び追いかけようと競技仕様DC2インテグラを中古で購入。モータースポーツに復帰しました。そして同じように苦労しながら走る中年ドライバー達との交流の場としてこのサイトを始めました(→最初のdiary)。


※2004年当時のトップ画像です


しかし中間管理職のくたびれたオッサンには,がんがん走り込んでどんどん速くなって,なんてことはできません。お小遣いをはたいてSタイヤを買い,職場の飲み会をサボって浮いたお金でオイルを交換し,嫁様に内緒で有給とって練習会に行き,公式戦への出場は嫁様の顔色を見ながら2ヶ月に1回だけ...そんな感じの地道なモータースポーツ活動。それでも2年走り3年走り,ようやっと公式戦で表彰台のてっぺんに乗れるようになりました。


※初優勝は姫路セントラルでしたなあ


と思った途端,練習走行中にクラッシュ,愛車はスクラップ・・・

もう自分もスクラップになりそうな気分でしたが(→当時の落ち込んだdiary),嫁様を拝み倒して新型デミオを買ってもらい(→誓約書),苦節1年半ほどのブランクで2009年のシリーズにカムバックを遂げました。


※まだ新車の頃のデミ助


最初は苦戦しましたがシリーズ後半には復調し,シリーズ最後の2戦を連勝して,秋には念願のビッグイベントJAFカップに出させていただきました。そしてそのままの勢いで今シーズンも突っ走り,全日本での優勝を含め4戦参加中2勝を挙げて今日に至ります。


※全日本@名阪での劇走。こういう年甲斐のない激しい走りがおとーさんの身上(笑)


思えば天国あり地獄あり,波乱万丈の6年間でしたが,20歳代の時に果たせなかった夢は十分に果たすことができました。あの頃は表彰台にも乗れないまま,不完全燃焼のまま,引退せざるを得なかったからね。

そしてとうとうこの6年間の集大成というか,この競技生活からいったん卒業する,区切りの1戦を迎えました。1年生は6年生になり...そして,卒業するのです。



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毎年この時期の競技会は梅雨の末期と重なって雨か曇りになることが多いのですが,今年は早めに明けた梅雨のおかげで「炎天」というか「灼熱地獄」のような真夏のイベントになりました。ガンガンに照りつける太陽光で路面のアスファルトが融け,中から油分が滲み出す有様。パドックに立ってるだけでクラクラして,頭も身体もとろけそうな状態です。


※こーんな感じのカンカン照り。入道雲モクモク


そしてコースは1分40秒を超えるロングコース。名阪Eコースを縦横無尽に使った,「いかにも地区戦」という感じで走り応えたっぷりのコース設定です。45歳のご老体には非常に厳しい,まさに卒業のための「試練」というような1戦になりました。


※画像をクリックすると大きい画像を表示します(画像はJMRCのページからいただきました)


今回は朝一番に「試走」があります。本番コースをごく簡略化した30〜40秒ほどの走行ですが,おとーさんはいつものごとく前戦から1回もスポーツ走行をしていないぶっつけ本番,この試走でどのくらい走りの勘を思い出せるかが超重要。途中でサイドを引くような部分はないのですが,わざと小回りの部分でサイドを引いてみたりします。

この時点で既に路面の温度はかなり上がってましたが,案の定,リアがかなりひっかかってサイドは効きにくい感じ。フロントのグリップは高く,コース後半のタイヤのタレ具合は未知数なものの,少なくとも前半はかなり攻められそうです。リアが少々すっ飛んでもフロントで残れるだろうと読んで,リアのエア圧を3.5kというパンパンに張った状態にして本番に挑むことにします。


慣熟歩行の間も容赦なく太陽が照りつけます。まー暑い暑い。
水分をしっかり摂って,時々日陰に入ってクールダウンしないと本当に倒れそう。時々イヤな動悸がしたり頭がクラクラしたりします。熱中症で死者が出るというのも分かりますな。

クルマの方も,日が当ってるだけでタイヤがチリチリに熱くなるし,車内がアッチッチになってしまうとすぐに走りだせなくなって困るので,みんな日よけに余念がありません。デミ助にはちゃんとエアコンがついてますが,競技車両の中にはエアコンついてないクルマもあるからね。こうなると草モータースポーツでも命がけです(笑)。


※こーんな感じね。天井のロガーにまで日よけつけてます(笑)


本番1本目の走行が始まり,他のクラスの走行を見てる間にも路面温度はぐんぐん上がります。ぼちぼちクルマに乗り込もうかなという時点で,路面温度は既に49.8度。素手で触ると「熱うっ!」という感じです。フロントタイヤがどのくらいもつか不安ですが,タイヤがタレたらタレたで自分の走り方で修正するしかない。とりあえずガンガンにクーラーを回して車内が少し涼しくなったところでデミ助をスタートラインに並ばせます。


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今回,勝つための作戦は...ありません。見事に無策。

というのもおとーさんの最大の戦友にしてライバルのライムM君はもともとこのコースが得意な上に,つい先日の練習会で今日と同じような天候下でここを走ってるっぽい。ここを走ることが1年ぶりな上に元々苦手,しかもスポーツ走行自体が1ヶ月ぶりのぶっつけ本番なおとーさんが勝てる相手ではない。おとーさんがノーミスで完璧に走りきった上に彼が何か大きなミスをやらかせばギリギリ勝てるかも,そんな状況。

彼とおとーさんの実力そのものはほぼ拮抗してるとおとーさんは思ってます。いや勝手にそう思ってるだけですから(笑)。そりゃみんな彼の方が圧倒的に速いと思ってますよね。でも彼にも苦手なところはあるし,おとーさんにも得意なところはある。その結果,去年から勝ったり負けたりしてお互いに切磋琢磨してきた,と,おとーさんは思ってます。だからこそ,今回はほとんど勝ち目がないなということがよく分かるんです。今回は彼のホームです。


でも今回,8月の全日本参戦を蹴ってもう一度地区戦で「勝ち」に来たおとーさん。そんな弱気なことを言ってる場合じゃない。どんなに不利な状況だって,とにかく全力で走らなければ女神様は絶対に微笑んでくれない。

この天候だと2本目の出走時にどんなおそろしい路面温度になってるか分からない。その時に,高温には弱いと言われているR1Rがどのくらいもつかは未知数。2本目のタイムアップは難しいと考えて1本目に全力アタックをかけるしかない。無策...でもとにかく全力で走ろう。


こんな路面温度で,しかも前述の如く高温には弱いといわれるR1Rですが,グリップが落ちているという感じはなく,結構しっかりトラクションをかけてスタート。

最初の細かい区間はギアの選択で迷う個所がいくつかありますが,1速でレブって空走する時間が長くならないように気をつけて早め早めに2速へ上げます。リアのエアを3.5kまで上げたおかげで中間部の左ターンはまずまず無難に旋回。

後半のハイスピード区間は,同じ名阪スポーツランドでも走り慣れているCコースとはリズムが全く異なり,Cコースほど踏みっ切りでは抜けられません。このあたり練習会などでこのコースをちょくちょく走っている人とは差がつくところでしょうが,練習会に行く時間のない忙しいオッサンには仕方のないこと。自分の地力だけで勝負です。

しかし酷暑のコックピットの中を全開でここまで走ってきてさすがに酸欠状態になったのか,頭がボーっとなってしまってて,最後のパイロンセクションの入りを右か左か迷ってしまって大きなロス。ロガーで確認すると1秒弱吐き出してます。しかも脱出の右ターンで旋回が足らず右リアがパイロンの耳を踏みジ・エンド。「パコン」と音が聞こえました(笑)。

コースを見失うなんて初めて姫路セントラルを走った1本目以来かな(笑)。今回のコースの長さとこの暑さ,そして基礎体力のなさが露呈したということなんでしょうね。


1本目の生タイムは何とか2位相当のタイムながら1位のライムM君とは約1.4秒の大差がついており,この時点で既に勝負あったな,という感じ。パイロンの入りを迷った分のロスがなくても彼のタイムには届かなかったでしょう。


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今回近畿地区戦のN1.5クラスは,ライムM君,おとーさん,とのちゃんの常連3台に,前回に引き続いて出場の白デミさん,ミドルで活躍中のサイボーグ魂さん,そしてATでデフも入ってないフィットで果敢に出場して下さったM嶋さんを加えて総勢6台。無事に地区戦が成立しました。JMRCチャンピオンシリーズだけでなくJAF地区戦としてのシリーズポイントも入ります。

海外におられるはずの方(笑)やミドル戦S1500の方も暑い中観戦に来て下さり,貼り出されたタイム表を見ながらみんなであーだこーだしゃべってると,タイムはともかくやっぱり楽しい。みんなクルマが,走ることが大好きなんだな。結局他のクラスの観戦そっちのけでS1500仲間でずっとしゃべってました(笑)。


お昼の慣熟歩行も,とにかくヘンに動き回って体力を消耗しないように,せめて2本目を走り切れるだけの体力は温存するように控えめの距離で切り上げます。水分をしっかり摂って,なるべく日陰で過ごします。


そして迎えた午後の2本目。

路面温度は何と60.2℃。もう素手では路面を触れません。エア圧調整しようと思って何気なく膝をついたら膝を火傷しそうでした。

勝ち目はないかもしれないが,とにかく悔いの残らないよう精一杯,自分とデミ助の力を出しきれるよう自分に喝を入れて走り出します。

走行順から考えて,もし自分がタイムを「1.5秒」縮めてベストを更新できれば,そのタイムを聞いて走り出す若いライバルに大きなプレッシャーをかけることができます。彼がどこかでミスをして2本目タイムアップできなければこっちの勝ちです。もう勝機はここにしかありません。

1.5秒。

1.5秒なんて,普段の日常生活の中では全く取るに足らない一瞬の時間。
でも今日のこの1.5秒には,6年分の重みがかかってる。
6年分の想いをかけて,是が非でもこの1.5秒を削り取らないといけない。

絶望的な逆境の中,最後の,全力のタイムアタックが始まります。

攻めます,攻めます。
細かいコーナーもギリギリまでブレーキを詰めます。高速コーナーは踏みっきりで行きます。

この路面温度でもタイヤは不思議とタレません。がっちり路面をとらえてます。誰でしょう,R1Rは高温に弱いなんて言ってた人は。全然大丈夫じゃん。

1本目の左サイドは何とか無難に旋回。

続く高速セクションでは,右に左にステアを振って何とか車速を落とさず,かつ車体を前に進めるように,狙ったラインをトレースします。このあたり6年の経験は決して無駄にはなってない。辛い経験もあったけど,全てが自分の血肉になっている。


しかしやはり1分40秒のロングコースは,ご老体にはきつい。

コース終盤になってくると,タイヤはタレてなくても自分の頭の方がタレてきます。ボーっとなってきて気持ちが萎えかけてきます。「もういいじゃん,アンタよくがんばったよ」「もうボチボチ無茶はこのへんにしてお家に帰ろうよ」そんな囁きが心のどこからか沸いてきます。

そんな心が反映するのか,最後のパイロンセクション,1本目の左はクリアしたにもかかわらず立ち上がりで失速。2本目の右に切り返すパイロンが遠く遠く見えます。

ああ〜,やってもうた〜,でももう,いいよね。
もうあとはちょっとだし,適当に走って終わりにしようか。


しかしこれは卒業試験。6年間の集大成。途中で投げ出すわけにはいかない。

自分にあのいつもの文句

「がんばれ,がんばれ,オッサンがんばれ」

言い聞かせながら,もう一度スロットルを猛然と踏み込んで,最後まで攻め切ります。

そして,ゴール!!


※おとーさん渾身のラストラン



走り終わったタイムはこの時点で2番手。ごくわずかながら1本目よりタイムアップしましたが,とても1.5秒も縮めることはできず,残念ながらベスト更新はなりませんでした。

車検場に導かれながら,ヘルメットの奥で涙がにじんできました。

悔し涙ではありませんよ。

とにかく自分の力を出し切ったという満足と達成感の涙です,きっと。
もう今日は絶対,何回走ってもこれ以上の走りはできない,という走りでしたから。
燃え尽きました。もうホントに燃え尽きました。


ベスト更新してプレッシャーをかけるどころかおとーさんは2位が確定。結果的に1本目のタイムで優勝が既に決まったライムM君の2本目は全く余裕のウイニングランになってしまい,大幅タイムアップで結果的に2秒もちぎられてしまいました。完敗です。


・・・・・・


※最後にノンアルコールビールで一人乾杯やりました(笑)


2位,銀メダル。
一応,表彰台には乗りました。

負け惜しみではありませんが,悔いは全くありません。今年のシーズンはとにかく「勝ち=1位」にこだわって走ってきましたが,今回の2位は本当に精魂使い果たして得た2位。確実に自分の全力を出し切りました。本当の完全燃焼。それでも2位ならしょうがない。

しかも2年間ずっと一緒に走ってきた仲間と最後の一戦を共に戦い,最大のライバルだったライムM君のシリーズチャンプ決定を祝うことができて,負け惜しみではなく本当に楽しかった。


39歳からもう一度走り続けてきたこの6年間の総括は,

「楽しかった」

結局これに尽きます。


もちろん,ライバルに勝ち,自分に勝ち,コースに勝ち,金メダルと楯やトロフィーを持って帰る。これはもうサイコーに楽しい。これは間違いない。


でも。

勝つことだけが楽しいのではない。走ることそのものがすごい楽しい。
たとえボロクソ負けたって,みんなと一緒にわいわい走ることは楽しい。

これも真実ですよね。


今回,少々無茶でも「勝ち」を狙ってこのコースに来ました。で,やっぱり予想通り勝てませんでした。でも,すごいすごい楽しかった。仲間とわいわい騒ぎ,走る時は真剣にライバルとしてタイムを競い,そして最後にはまたわいわいいいながら片付けて「またねー」と帰っていく。

楽しいんですよ,これが。
こんな楽しいことは,もう一生止められません(笑)。


今回,自分にとってのモータースポーツの原点を確認することができました。

やっぱりクルマで走るのは楽しいっ!!!

そういうことです。


おとーさんはこの一戦を最後にいったん卒業しますが,必ず帰ってきます。
小学6年生は中学生になって,グレードアップして帰ってきます(笑)。

みなさんありがとうございました。また一緒に遊んでやって下さいね。


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