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2&4


梅雨のはしりでしとしと雨が降るウィークデイの朝。
出勤ラッシュ時間帯の幹線道路はいつもに増してひどい渋滞。


...ん? ちょっといくら何でも今日の渋滞はひどすぎるぞ。さっきから全然動いてないし。
やばいやんか。遅刻してしまうやんか。

とか思ってたら,後から渋滞の車列をかき分けてパトカーが来たり救急車が来たり。そして案の定,渋滞の先頭には車線をまたぐように倒れて打ち捨てられた大型スクーター,路面にはスクーターがコケて滑走した白い傷跡,傍らでは戸惑った表情の4輪のドライバーが傘もささずにお巡りさんの質問に答えている...

...なんて光景を最近よく目にします。


たまたま行きがかった2輪と4輪の不幸な関係,不幸な結末。

事故は誰も幸せにしません。

コケて救急車で運ばれた2輪のライダーも,冷たい雨の中,さらに冷たい「視線」に曝されながら現場検証させられてる4輪のドライバーも,きっとたくさんのモノを失ったに違いありません。


もちろん,個々の事故の原因はいろいろでしょう。
どっちかが不注意だったのかもしれないし,どっちも不注意だったのかもしれない。
どっちかが無茶してたのかもしれないし,どっちも無茶してたのかもしれない。


でもね。

最近,こういう結末になっても仕方ないな,って思ってしまうような「2輪」の側の運転マナーの悪さをよく感じます。

昔から路肩をとんでもないスピードで突っ走って行くヤツはいましたが,普通に流れてる4輪の間をジムカーナよろしく抜けて行くヤツとか,歩道に上がって自転車や歩行者をぬって走っていくヤツとか,対向車線を堂々と走っていくヤツとか,突然クルマの前に飛び出してきて右左折するヤツとか...そういうトンデモなヤツ,最近多すぎ。目に余ります。


いや,4輪にもよく「宇宙人」が乗ってますから,決してみんなが運転マナーが良いとは言えませんけどね。でもいくら無茶しようったって,4輪のできることなんて限られてる。

2輪っていうのは基本的に,エンジン本体に直接車輪とシートとハンドルひっつけただけの乗り物ですから,4輪とは比べ物にならないぐらいの機動性と運動性能を持ってる。だから,やろうと思えばとんでもない無茶なことが平気でできてしまう。


私にも20ウン年前,2輪がメインの時代がありましたし,まあ正直,4輪が渋滞してる横の路肩を突っ走ったりぐらいはしてましたが(汗),昔の2輪乗りはもっと2輪乗りなりの「プライド」というか「矜持」みたいなものがあって,一定以上の無茶はしないように自制してたと思うんですよ。

重くてデカくてかったるい4輪なんかとは違って,俺たち2輪はいくらでも狭いところを突っ走れる。走ろうと思えば歩道を走ることだってできるし,対向車線にはみ出してマトリックスみたいに対向車を避けながら走ることだって可能。なんてったって運動能力が全く違う。

でも,そういうことはしない。
できるけど,しない。

ドンくさい4輪と一緒に道を走ってる以上,こっちが合わせてやらないと仕方ない。
こっちの存在に全然気づかずにボーっと走ってやがるから,こっちが自衛しないと仕方ない。
事故ったらこっちは身体がむき出し。ケガして痛い目に遭うのはこっちだし。
高い運動性能は,身体がむき出しという大きなリスクの代りに得たものだからね。

だから,4輪が止まればこっちも止まってやろう。
4輪が動き出してからこっちも動き出してやろう。
4輪がゆっくり流れてれば,こっちもある程度ゆっくり流してやろう。
で,うざい4輪どもがいなくなってから,後でたっぷりかっ飛んでやろう ( ̄ー ̄)。

いや,昔の2輪乗りにもおバカはいっぱいいましたが(笑),こういう大人の2輪乗りが昔はもっと多かった,というかそれが主流だったように思います。自分が2輪に乗ってても,4輪に乗ってても,交通の流れの中で一緒に走ってて安心感があるというか。こいつは無茶しないな,っていう安心感が。


...しかし,こういう2輪乗りのプライドとか矜持とかってどこに行っちゃったんでしょう。
今でも大人な2輪の乗りの方はいるはずなんですが...少数派になっちゃったんでしょうか。

昔は「やろうと思えばいくらでも無茶できるけど,しない」。これが主流だった。

今は「やろうと思えばいくらでも無茶できるから,どんどんやっちゃおう!」。

これが主流になってないかな。
まるでお子様ですよね。

渋滞する4輪の車列の中をスラロームしながら我先にと突進して行く,平気で歩道に乗り上げ,対向車線を走っていく,そういう2輪乗りの群れを見ているとそう思わざるを得ません。

2輪車が周囲を走ってる時は非常に怖いです。こいつ次の瞬間には何しやがるのか,と常に気を張っておかないといけません。で,実際トンデモない動きをするヤツが多いんです。

いったい最近,2輪の教習所では何を教えてるんでしょうか。国もあまりに安易に免許を出し過ぎじゃないでしょうか。


・・・・・・

本来「できる」っていうことと「してもいい」っていうことは明らかに違うはずですよね。でも実際には,人間の中に「できること」は「してもいいこと」っていう思考回路が確かに存在するみたいです。

例えば,みなさん御存知の英語の表現で

You can do it.

っていうと,「それをすることができる」っていう意味だけじゃなくって「それをしてもいいよ」って意味になりますよね。だから,○○してもいいですか?っていう時でも

Can I do it?

という表現で通じます。もちろん

May I do it?

と言ってもいいんでしょうが,あまりこういう言い方はしません(少なくともおとーさんの乏しい海外生活経験の中では)。


他の言語でも同じような例がいっぱいあるみたいですし,ウチのばあちゃん(四国人)も「○○したらダメよ」という時には「○○できへんよ」って言ってましたね。方言なんでしょうか。

だから,人間の頭の中ではデフォルトで「できる(可能)」ことと「してもいい(許可)」ことは非常に近い関係にある,そう言っていいように思んですよ。

でももちろん「できる」ことを何でも「やってOK」ってことになったら社会は成り立ちません。それじゃおサルです。ラスコーリニコフです。みんなが「できる」はずのことをちょっとずつ「抑制し合う」,そこに生じる「許可」の概念の上に社会関係が成立する,と言っていいでしょう。可能性を自ら制限し合い,それを持ち寄って社会を作るわけです。


そういう意味では,最近の2輪&4輪の交通事情は既に「社会」ではなくなってきてます。

4輪に比べて圧倒的に高い運動性能を持つ2輪のライダー達が,ドンくさい4輪に「合わせてやる」気持ちを失い,走りたいところを好きなように走ってしまえば,そこに社会はありません。

また2輪に比べて格段に安全な乗り物である4輪のドライバーが,2輪の運動性能に嫉妬して,わざわざ進路を塞いだり幅寄せをしたりイジワルする,そこにももちろん社会はありません。

それぞれがてんでバラバラに自分の走りたいように走れば,当然ながらそこには衝突が,事故が起こります。走っている2輪がコケれば,必ずケガをします。相手の2輪がケガをすれば,事故の過失割合がどうであれ,必ず4輪は責任を問われます。お互いに失うものは多大です。


これを読んでいる方はたいてい4輪乗りの方だと思いますが(笑)...

2輪に乗っている方へ。

あなたが誇る運動性能や機動性は,大きなリスクと引き換えに得たものであることを忘れないで下さい。そして「できる」ことと「してもいい」ことは別であることをいつも頭に置いておいて下さい。ドンくさい4輪には「合わせてやる」気持ち,2輪乗りのプライドをどうか大事にして下さい。

そして我々4輪乗りも。

周囲の2輪車の動きには最大限注意を払い,スムースに前に行かせてあげましょう。努々張合おうなんて思わないように。混み合った一般道ではどうがんばったって4輪は2輪には勝てないんですから。そして彼らは大きなリスクを背負って走っていることを忘れないようにしましょう。コケて痛いのは彼らよりも私たちです。


それでも...目の前でトンデモない動きをされると,やっぱり腹立つんだよなぁ...(笑)

コケやがれ!バカたれ! でも私の目の前でコケるのはやめてね♪
とか思う私もまだまだお子様ですね〜(笑)


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