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真夏の夜の物語


※シェークスピアとはカンケーありません(笑)。
っつーか,怖い系のお話なので,そーゆーのが苦手な人はパスして下せえ。



さて。

ここを読んで下さってる方ははみんなもう御存知のことなのでバラしちゃいますが,おとーさんの職場は,そう,「病院」です。今勤めてるのは結構大きな総合病院です。

毎日この病院で朝から晩までお仕事してるわけですが,時々「当直」というのがあって病院に泊り込むことがあります。当直っていうと,「病院なんかに泊り込んで怖くないの?」って訊かれることがありますが...

怖くなんかはありません ヽ(´ー`)ノ

おとーさんは,死後の世界も霊魂の存在も,神も仏も,天国も地獄も,全く信じてない筋金入りの無信心モノ。あの大槻教授にも負けないぞ,っていうぐらい(笑)

だからして,深夜の真っ暗な病院のローカをコツコツ足音響かせながら歩いてても,霊安室の前なんか通りかかっても,基本的に平気です。ま,わざわざそういうところ通りたくはないけどな f(^-^;)


でも。


でもね。
そんなおとーさんでも,いろんな病院に勤めてて,何回かは,「え?何なの,今の?」っていうような不思議な目にはあったことあるんですよ。どう考えても常識的には説明がつかない現象っていうか...

今回はおとーさんが自分自身で体験したそういう不思議な経験をお話しませう。「先輩の友達の知り合いの話で...」とか「おばあちゃんのイトコが子供の時に...」じゃなく,正真正銘,おとーさん自身の体験談です...



・・・・・・


まず最初は,おとーさんが以前バイトで当直に行っていた病院での話です。

たしか季節は梅雨時のうっとおしい頃だったと思います。

夕方,自分の勤め先の病院からクルマでその病院に移動。食事をとって早めにシャワーを浴びてからは当直室で当時執筆中だった研究論文の手直しをしとりました。

低速ノートPCの上で大規模な統計マクロを走らせるもんですから,なかなか作業ははかどらず,統計を取り直して,文章を書き直して,いちいちソフトを立ち上げ直しながらキーをバチバチぶっ叩いておりました。

当直の時ってたいてい夜半までは,患者さんからの相談の電話や病棟から指示を求める電話がひっきりなしにかかってきて,その対応で忙殺されるもんなんですが,この日は不思議と電話がかかってこず,当直室にこもりっきりで自分の論文修正に没頭してたわけ。

眠い目をこすりつつ,ぬるい缶コーヒーをすすりつつ,統計の取り直しが一段落したところで時計は午前1時。

当直の夜が開けた次の日も自分の勤務先の病院に戻って朝から普通に仕事をするわけなので,あんまりムダに夜更かしもできません。寝られるときに寝ておかないと,深夜に病棟で何か大きなトラブルでもあった日にゃ,完全徹夜で翌日1日働くハメになるもんね。

ということで,ボチボチ寝ようかなと思って仕度してる時に...鳴り響く当直室の電話。
をいをい,今からちょうど寝るところだったのにぃ〜,と思いつつも電話に出ると「病棟のローカでコケた患者さんが頭にケガしてます」とのコト。とりあえず患者さん診ないとケガの程度は分かりません。

トホホ...と思いつつ白衣をはおって病棟に。
ま,仕方ねえよ。お仕事だから。


・・・・・・


...幸い患者さんのケガは大したことはなく,消毒と外科用のテープ固定でもって済みました。止血剤も抗生剤も要らないでしょう。処置だけ済ませて病棟を後にします。

さ,寝よ寝よ ヽ(´ー`)ノ

青い非常灯だけ点いた暗い階段をペタペタ下りて,長いローカをスタスタ歩いて,一人で当直室に戻ります。あ〜,マジ眠たいわ...速攻で寝れそう。

と,その時。


...オシッコしたくなりました(笑)
缶コーヒー飲み過ぎたかな...


ちょうど,当直室に戻る途中,外来部門の奥に小さいトイレがあります。
あ,あそこのトイレ寄って行こうっと。

ローカを途中で折れて,外来の待合室に入っていきます。


...深夜1時半の外来待合室。

非常灯にぼんやり照らされた暗い空間は,もちろん人っ子一人おらず,日中とは全く別の,重苦しいぐらいの静けさに支配されています。

先ほども書いた通り,普段はオバケも幽霊も全く関知しないおとーさんですが,さすがにこの深夜の待合室の静けさにはちょっとブルったのか,一瞬,奥のトイレに行くのをためらいます。しかしここに来て尿意の方も徐々に高まってきているため,今から引き返して別のトイレに行くのも面倒くさい。


...ええい,行っちゃえ!

思い切って,冷たく静まり返った待合室をペタペタ横切り,奥のトイレの扉を開けます。

すぐに入ったところの電灯のスイッチを入れますが...あれ? 電気が点きません。

?????

ちょうど蛍光灯が切れてるのか,外来部門の電源ブレーカーが夜間には落とされているのか,いくらスイッチをパチパチやっても電気は点きません。

をいをいマジかよぉ...(;´д⊂)

中は真っ暗...ではなく,奥の小さい窓から外の街灯の明かりが少し差し込んでいて,暗がりの中でもぼんやりとモノの見分けはつきます。一方で,おとーさんの下腹部において,徐々に溜まっていくオシッコが膀胱の容積をかなり膨張させてます。

しゃーない。オシッコ,しよ。

意を決し,スリッパを脱いでトイレの中の下駄に履き替え,カランカラン大きな音を響かせながら一番手前の小便器の前に立ちます。

人が前に立つと赤外線か何かで反応して,自動的に水が流れる小便器ってありますよね。女性の人は知らんかな? ちょうど人が前に立つとおヘソの前あたりに小さい箱状の感知装置があって,小さい赤いランプが点灯するので,反応してることが分かるんですね。

おとーさんが便器の前に立ってじょじょーっと用を足し始める時に,ちょうど便器の方も反応して赤いランプが点き,便器に水がジャーっと流れます。


じゃじゃ〜,じょろじょろ〜

...あー,すっきりしたぁ (*'-')


溜まりに溜まった液体をすっかり体外に排出して身も心も軽くなったおとーさん,先ほどまでのオドオドビクビクした様子もすっかりなくなって,口笛でも吹き出しそうな気分にでいそいそとブツを収納し,チャックを上げ,小便器に背を向けて歩き出しますが...







その時です。


突然,トイレの奥の方の,別の小便器からジャーっと水音が...


え? 何?


思わず立ち止まって振り返ると,一番奥の小便器の感知器のランプが赤々と点灯しています。
そして便器には確かに水が流れてます。
誰もいないのに...一体,何に反応して水が流れたのでしょう...


思わず振り返ったそのままの姿勢で身体が固まってしまい,動けませんでした。
視線は一番奥の小便器に吸い寄せられたまま,そらすこともできません。


そして,その時さらに...


カラン...


おとーさんの下駄とは別に,トイレの下駄の音が,微かに,でも確かに,その一番奥の便器のあたりで鳴ったんです...



ヒエ----------((((゜Д゜;))))----------!!



...気がついたら,当直室まで走って逃げ帰ってました f(^-^;)

ちゃんと下駄からスリッパに履き換えてましたから,案外冷静だったのかもしれませんが(笑)

それでもさすがにその晩は眠る気にもなれず,別のトイレに行くこともできず,はちきれそうな膀胱を抱えたまま朝まで当直室の布団の中で固まってました。
もちろんそれ以降,絶対に夜間,その病院の外来には近づきませんでしたよ。


その病院に行かなくなってから何年も経って,実はその病院の外来の男子トイレで以前,自殺した患者さんがいるというのを聞きました...







...っていうのはウソだけど(笑)


でも,今でもあの時,便器の赤外線センサーが何に反応したのか,そしてあの「カラン」っていう下駄の音は何だったのか,謎です。センサーの電源は入っていたのに,天井の電灯のスイッチがどうしても入らなかったのも,謎。

神も仏も,前世も来世も,一切関知しないおとーさんですが,この世には人の理解を超えたことが起こることもあり得る,とは思うようになりました。


<続く>


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