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夏の終わりに 〜2005年ミドル第7戦〜


12年前の夏......雨の多い冷たい夏でした。


その夏,おとーさんは孤独な戦いに挑んでおりました。


'93年ジムカーナ近畿地区ジュニア戦(今のミドル戦)AIIIクラス。


SW20(トヨタMR2)がずらっと約40台並んだ中に初期のランエボやFD,GT−Rが混じるという当時のトップカテゴリー。一癖も二癖もあるハイパワー車を自在に振り回す,腕に覚えのある猛者たちの中に混じって,若き日のおとーさんが一人でポツンと走ってました。


みんなクルマはキチンとチューンされ,本番用のタイヤもしっかり山を減らしてあります

※ この年度はレギュレーションによって「雨用のSタイヤ」しか使用できなかったため,みんな山をギリギリまで減らしてスリックに近づけた状態でドライ用に使ってました。もちろん雨用は別にバリ山タイヤを使用するわけですが,おとーさんのようなビンボー人は5部山のタイヤを水陸両用に使ってました(汗)。

93年春...

当時はまだ独身だったおとーさん,毎日カップラーメンやカロリーメイトを食べながら節約し,稼ぎの全てをクルマにつぎ込んで,SW本体のローンや月に2-3セット使ってしまう練習用のタイヤ代を払い,残ったお金で少しずつクルマの改造を進めながらシリーズに参戦しておりましたが...


いかんせん一人で走るのは辛い。辛すぎ。


走りや改造に関する様々な情報も,遠くのショップまで走って自分で仕入れてくるか,雑誌・書籍類から探し出すしかないわけで(当時まだネットはほとんど役に立たんかったからね),自然と情報量に差が出てきます。


自分の走りを誰かに客観的に見てもらうこともできないし,ビデオすら撮ってもらえないし...
そして行きも帰りも一人。結果が良くても悪くても一人...
かといってどんどん周りの人に話しかけて友達になれるような,そういうキャラじゃないし...


結局,一人で悩んで悩んで,山にこもってやたらと練習用タイヤばっかりすり減らして,毎日毎日クルマのことばっかり考えて...まあ,必死で走ってたわけですが...


公式戦では全く鳴かず飛ばずのまま季節は春から初夏・梅雨になり...

そして夏。


このひと夏の間,おとーさん,出られるだけのイベントに出て必死に走りましたが...


結果は。

出場台数の少ないクローズドの大会では何とか入賞できたものの,公式戦本番ではせいぜい40台中20位前後をウロウロするのがやっと...公式戦のシリーズポイントを切望しながらどうしても@1秒の壁を破れない...そんなひと夏でした。


そして秋には,現・嫁と結婚が決まり(別に「できちゃった」じゃないぞ)...競技は引退。


「公式戦でポイントとる!」


このおとーさんの夏休みの宿題は,永遠に果たされないまま封印...かと思われましたが。





...帰ってきましたよ,おとーさん。ジムカの世界に ( ̄ー ̄)
12年もかかりましたけどね f(^-^;)


もちろんクルマや走りが好きだからもう一度この世界に戻って来たわけだけど...12年間ずっとずっとあの夏の宿題が心の中でひっかかってた,というのも大きいです。どーしても,どーしても,ジムカ公式戦でポイントとりたい,入賞したい。だから12年間,スポーツワゴンで峠を走ってても,左ハンドル右側通行の異国の雪道でサイド引いてる時も,いつも気分は名阪Cコース・ABコースでしたから。いや,要するにあきらめが悪いというか,執念深いというか,しつこいだけですけどね f(^-^;)


長年の念願かなって名阪に戻って来たおとーさんにとってさらにうれしいことに,12年前と違いクルマは最初から競技車として完成されてます。車両改造によけいな神経やお金を消耗せずに済みます。さらに出場クラスが細分化され,ひとクラスあたりの出場車はせいぜい20台ちょっと。単純に考えてライバルの数も12年前の半分。そして何より心強いのが,師匠やクラブの仲間と一緒に走れるということ。もう一人ぼっちじゃないぞっ!


うははははは,12年前と比べて明らかに状況は有利です ( ̄ー ̄) v


10位以内に入ってシリーズポイントを取る...
すいません。ホントすいません。
おとーさん,今年度の開幕当時,生意気ながら,それぐらいは2-3戦で達成できるのでは,何て実は思ってました。


と・こ・ろ・が


シリーズに帰ってきたおとーさんを出迎えてくれたのは厳しい現実でした。
シーズン開幕当初に出場を予定していたミドル戦各戦の結果は...


第1戦 → 1本目いきなりのスピンでびびってしまい自滅(18台中11位


第2戦 → 1本目再出走でタイヤがタレちゃって没,2本目フリーターン回れず没(22台中11位


第4戦 → 練習会出場のため自主的に棄権


第6戦 → 大会直前に追突事故に遭いやむを得ず棄権


...全然ダメじゃん (;´д⊂)


第1戦,第2戦,このへんまではまだ笑ってられました。


しかし,わざわざ参加予定だった第4戦を見送って練習会で汗をかき,日夜腕立て伏せで肉体改造に取り込み,昼飯代や飲み会参加を削ってためたお小遣いでタイヤを新調し,満を持してエントリーした第6戦の大会間際に追突事故で棄権...これは堪えました。泣けました。


一時期ホントに落ち込みましたが,まあ,事故は自分のせいではないので,悔やもうにも悔やむネタがない。どうしようもない。


そしてとうとう,おとーさんの夏の宿題は,12年目の8月最後の日曜日に持ち越されたわけ。





......前置き長くてゴメンね。


この日は朝からドタバタでした。
つーか,2日前からすでにドタバタの連続でした。


というのも,ショップの社長のおかげで何とか大会までにクルマの修理は間に合ったものの,修理が上がったその日はすでに大会2日前でした。普通はそんな日程ならエントリーを見合わせるもんですが,おとーさんの頭の中に「常識」という文字はありません。社長に無理を言って間に合わせてもらいました。


その上,仕事が忙しい日だというのに職場の同僚にも無理を言い,仕事を半日休んで不惑インテ号を引き取りに行きます。そしてついでにショップのチェンジャーをお借りして,あらかじめ注文していた新品タイヤを自分で本番用ホイールに組み込み。しかしここでトラブル発生。リアの2本は翌日にもう一度ショップまで取りに行くことに。


結局,2日間ずっとドタバタと走り回ることになり,車高をもう一度設定し直すとか,ドラシャをスペアに替えるとか,予定していた準備は全くできないまま大会当日に突入。


そして当日朝4時半の出発時。名阪に行くまでに少しだけ皮むきをするつもりで前日・前々日に自分が組み込みした新品タイヤを履こうとしましたが......何かヘン。フロントの回転方向がどーしても合わない。強いて言えば右フロント用のホイールが2つあるような...


もう一度タイヤをよーく見てみると...


うがあああああああああ!

なんと!

左フロントタイヤの表裏を間違えてタイヤ組み込んでました ヽ(;д;)ノ



せめて両方間違ってれば「裏組み」としてそんなに支障なく実戦に使えるのですが,片一方だけだと,もう一方のタイヤを逆回転方向で履かねばならず,操縦性にもタイムにもタイヤのライフにも悪影響がでます。つまりこの本番用フロントタイヤのセットはこのままでは使えねえ,っていうこと。強行スケジュールの影響がこんなところにまで出てしまいました 。・゚・(つД`)・゚・。


しかしこんな早朝じゃどこのクルマ屋さんも開いてませんし,GSでもこの時間にタイヤ交換なんてやってないでしょう。チェンジャーさえ貸してもらえれば自分で組み替えできるんですが,見ず知らずのお客にいきなりお店の設備貸してはくれないだろうしなあ。


仕方なく,とりあえず普段履いてる通勤用タイヤのままで名阪に向かいながら,24時間のGSを見かけるごとに立ち寄ってタイヤ交換できないか訊いて見ますが,どこも「8時からです」「9時からやってます」っていう返事。チェンジャー貸していただけませんか?と尋ねると,チェンジャーって何ですか?というお返事 ( ̄ー ̄;)。


ダメです (;´д⊂)
8時まで待って,タイヤ組替えてから名阪に向かうってなことはできません。7-8時には受け付けやドライバーミーティング,車検に慣熟歩行と,競技に出る上でどうしても欠席できないスケジュールが待ってます。これに遅れると致命的...っつーかその時点で失格かも。

とりあえず名阪で受け付けと車検を済ませてから会場を出て組み替えに向かうことにしよう。最悪,1本目は通勤用タイヤで走り,お昼の間に会場を出てGSに走り,午後の2本目を本番用タイヤで走る,こういう手もあるでしょう。まあ,とりあえず名阪に入ってしまいましょう。


ところが。


名阪入りして車検の時にオフィシャルの方に事情を説明し,途中で会場を出る許可を得ようとしましたが,一度車検を受けてしまうと,会場から出た時点で失格となることが判明。つまり競技車で会場外に出ることはできない。その代わり,ドライバー本人が会場外に出ることは許されるそうなので,タイヤ持ってどなたかギャラリーの方のクルマに乗せてもらって組み替えに出ることはOKらしい。


しかしこの日はあいにくクラブ員みんながギャラリーではなく競技者として名阪入りしており,師匠もお休み。つまりいくら待ってもサポート車両(笑)は来ません。クルマに関係ない友人に電話して無理やり名阪に召還しようかとも思いましたが,なんせ日曜の朝ですからそれも申し訳なさすぎ...


万事休す。


こういう時はおとーさん,あきらめ早いです。


まあいいや。仕方ねえ。今日はこの通勤用の15インチタイヤ(195/55-15のRE55S TR)をフロントに履いて走ろう。
5部山切ってるけど一応まだ山はあるしな。もともとリア用のSタイヤだし。
リアは本番用の新品タイヤだから,まあ,ちったぁ走れるだろう。
そもそも今回は修理が間に合って走れるだけでも儲けモンだったわけだし。
まあ,今回もポイントゲットはお預けだな。
ふ,ふ,ふはははははははは... (;´д⊂)


しかし,何でこう,おとーさんの行く手には障害が多いのでしょう。
なかなか万全の状態で走らせてもらえません...
...って,今回は100%自分で招いた事態だが。


さて,コースはこんな感じ ↓


何かシケインばっかりであんまり踏めない欲求不満チックなコース(汗)


今回はLクラスから本番1本目の走行が始まります。
おとーさんのゼッケンは28番。結構すぐに順番が回ってきます。


ま,とりあえず一生懸命走ろう。
こんな通勤用タイヤでタイム出るわけないけど,まあタイヤの限界ギリギリまでは攻めよう。
...そんな感じで走り始めます。


やはりフロントタイヤの限界が低いため,随所でブレーキがロック気味。
さらに,リアの方が明らかにグリップが良いため終始アンダー傾向です。
仕方なく,攻めるというよりフロントの限界を探り探り走る,そんな走りになってしまいました。


...ところが,走り終わった時点でおとーさんのタイムは2番手。
あれ〜?


その後も後半ゼッケンの人にガンガン抜かれるかと思っていたらあんまり抜かれず,結局1本目終了時点のおとーさんの順位は5番手でした。
あれあれ〜??


不思議なことがあるもんです。
まあ,シリーズポイント上位の人達がたまたま1本目を抑えて走ったんでこんな結果になったのかな。どうせ2本目でみんなに気持ちよく抜かれて,またシリーズポイント圏外に押し出されるんでしょう。


なんて思いながらも少しだけ色気が出てきて,2本目に向けてあれこれセッティングを考えます。フロントの限界を上げ,リアを下げるつもりで,フロントの空気圧を少しだけ上げ,リアは空気圧・ショックの減衰ともに少し下げてみました。乗り方もややリアを振り出すようにし,悔いのないよう1本目より積極的に攻めることにしました。昼休みもメシなんか後回し。時間ギリギリまで慣熟歩行でコースを何周も歩き,コースの攻略を考えます。まあ,どうせ順位は下がるだろうけど,何とか1本目よりタイムを縮めよう!タイムが縮まれば,ぎりぎりポイント圏内に残れるかも。


...そして2本目。


一生懸命,走りました。
か細く山の少ないおんぼろ通勤タイヤで,必死でコースを攻めました。
ブレーキをロックさせながら,アンダーを出しながら。
攻めすぎて,途中で1回ギア抜けがありましたが,んなことは気にしない!踏め〜!


でも......走り終わって窓を開けると「残念ながらタイムダウンだ〜」というアナウンス。


やっぱダメか (;´д⊂)


おとーさんの夏は終わりました。
今年も,あの宿題を終えることはできませんでした。
しかもタイヤ組み間違えるなんていう自分自身のサイテーの初歩的ミスのおかげで。


まさにがっくりです _│ ̄│○

その後,予想通り,1本目で下位に沈んでいたシリーズ上位の猛者達が続々とタイムを上げ,おとーさんの1本目のタイムを下位に下位に押し下げていきます。4人目に抜かれ...5人目に抜かれ...もうタイムを聞くの止めました。悲し過ぎます。競技が進み次クラスの走行に移っても,リザルトなんかもう見に行く気力も起きません。


...今度こそは,と思ったのになあ。
...時間がない中,必死で間に合わせてここにたどり着いたのになあ。
...自分なりに必死に走ったんだけどなあ。
...前回のミドル戦に出たかったなあ。あんな事故がなければなあ。
...やっぱり今回は準備不足だったんだよなあ。エントリーそのものが無茶だったか。


くよくよ考えながら他のクラスの走りをぼんやりながめておりますと...


36すぺっくさんがリザルトを見て来てくれて「不惑さん10位に入ってるよ」。


ま,ま,まじ!?



思わず自分の目で確かめるべく走り出します。


そしてコントロータワー下に張り出してあるリザルトをよーく見ますと...





ギリギリ10位にひっかかってました 。・゚・(つД`)・゚・。



やりました...やっと公式戦シリーズポイントを1ポイントだけ獲得できました。
たった1ポイントだけど,近畿地区ミドル戦N2クラスの年間シリーズポイントに違いありません。

...夏休み最後の日曜日,おとーさんはやっと12年越しの宿題を果たすことができました。


クラブのガレージに戻り一人で座ってますと...


何だか目頭がもわ〜っとなってきて,勝手に涙が出てきてしまいました。


お,おいおい!泣くなよこら。
優勝したってわけじゃないんだぞ。たかが10位だぞ。
表彰台の常連さん達から見たら大バカだぞ。
10位で泣くヤツがあるか,泣くなよバカ〜。


ダメです。分かっちゃいるんですが涙が止まりません。
12年前のシーズンのこととか,これまで12年間のこととか,この3月からのこととか。そして特に苦しかったこの1ヶ月,今日の朝からのドタバタ。いろんなことが頭に浮かんできて。

12年間,どーしても欲しかった,どーしても欲しかったこの1ポイント。
これが欲しいがために,ここに,名阪に帰ってきた,その1ポイント。
うれしい...うれしいよ...
ダメです。おとーさん,気がついたら大泣きしてます f(^-^;)
とっても恥ずかしいオッサンです。


...今後,もし仮におとーさんがもっとポイントをとれるようになったとしても。


この,夏休み最後の日曜日に通勤用タイヤでもぎ取った1ポイントのことは絶対に忘れん。
たぶん,人生の中でも忘れることのない1ポイントでしょう。

トロフィーも盾も賞金もないけど...おとーさんにとってこの1ポイントは最高の勲章です。




PS:いつも一緒に走ってくれるクラブのみんな!今回もありがとう!
暑い中,遠いところまで差し入れまで持って応援に来てくれたももさん,本当にありがとう!
そして夏休み最後の日曜日を自分のために使わせてくれたMy嫁さんと子供達,本当にありがとう!


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